野愛
野愛
2021/11/09
姿勢も境遇も真似できない
初心者に節約術とか財テクとかを教えてくれる漫画っぽい表紙なのがなんとも憎いです。何も知らずにうっかり読んだらお金よりカルト村のことが知りたくなるはず。 対価0円で毎日労働、物は共有で金銭のやりとりはない、そもそもお金を隠し持っていたら没収されてしまう。 そんなカルト村で育った高田かやさんが一般社会でどのようにお金と向き合ってきたかを描いた作品です。 ・お金に触れる機会がほぼ無かったから、お金に対して強い憧れがある。 ・ものを買うという経験がないから、自分の欲望と消費が結びつかない。 一般社会で育った者からすると、こういう感覚は自分にないもの。貧乏で我慢しながら生活していた人ともまた違う感覚だと思います。 安くていいものと高くていいものの見極めができるようになったり、共有ではなく個人で所有する感覚を掴んだり。 何気ない日常にも新鮮な喜びや学びがあるのだなと感じました。 旦那さん達の金銭感覚にはちょっとモヤるけど、かやさんが受け入れて幸せなんだから凄いよな……。 環境や他人のことを責めずに、自分が幸せであるために努力できるのは素晴らしい。 素晴らしいけど……それは村で育ったおかげなのか?という考えが一瞬よぎってしまうので、やっぱりカルトは恐ろしい。
野愛
野愛
2021/11/02
村を捨てよ書を読もう
カルト村で育った著者の高田かやさんが自らの意志で村を出るまでを描いた作品。 ほのぼのとしたイラストで淡々と描かれているのでさらっと読めてしまうけれど、どこを切り取ってもおかしなところしかありません。ほんとに現代の話してる?と衝撃を受けました。 親や兄弟と切り離される。日々労働に駆り出され、休日や報酬はない。音楽も読書も恋愛も禁止。日記は検閲され、理不尽に怒られる。 そりゃはやく出ていきたくもなるよねと一般人は思うけれど、幼い頃からずっと村しか知らなければこれが当たり前になってしまうんですよね。 怒られるときに叩かれないこと、廃棄の菓子パンのおかげでひもじい思いをしなくていいこと、そんなことで喜んでいる子どもがいるなんて悲しすぎる…。 本を読むのが好きで深く思考する力があるかやさんだから、自分の本当の気持ちに気づけたんだろうなと思いました。 正直なところ、村や親を恨んではなさそうな(描いてない気持ちもあるんでしょうが)清らかさに洗脳の恐ろしさを感じざるを得ませんが……今幸せに暮らしているなら何よりだなあと安心しました。
野愛
野愛
2021/10/31
お願いだから軽い気持ちで読んで
80年代アニメ風の絵柄に物騒なタイトル。アンバランスな組み合わせがポップで可愛くて秀逸です。 主人公は成績優秀、運動神経抜群で男子からもモテる美少女・春香。 そんな彼女が恋をしたのは同じくハイスペック男子の連。 春香が連に告白しようとするたびに近くで事件や事故が巻き起こり、謎のヒーロー・赤いライオンが現れて告白の邪魔をされて(命は助かるけど)しまう。 親友の美香に協力してもらい、今度こそ告白成功なるか…? みたいなラブコメ部分は全部前フリで、SFチックなストーリーに突入します。なるほどだからこのタイトルか、と納得するわけです。 とにかく主人公の春香が可愛いんです。 恋愛も友情もまっすぐ全身全霊で向き合う姿が魅力的です。 頭も良くてスポーツもできて可愛くて、みんなわたしのことが好きなんでしょ!!という自信過剰っぷりですが、その自信過剰さも含めて可愛く見えてきます。生まれながらの主人公体質の女の子です。 恋愛も友情も突如降りかかった災難も、全部まるっとハッピーエンドになるの?と思うけど、春香なら運命も科学も超えられそうな気がします。 まだ読んでる人が少ないようで、Twitterでタイトル検索すると不穏なツイートしか出てこないのが悲しいところ。お願いだから可愛い漫画読んで春香みたいに可愛く生きよう。
野愛
野愛
2021/10/28
とにかくハイテンションな少女漫画
少女漫画をあまり読んだことがないのでこの作品が異質なのか王道なのかよくわからないけれど、普通の女の子が王子様に見染められ適度に邪魔が入りつつ陰ながら男子人気は高いけど本人は気づかない…こんな要素盛りだくさんなことある? めちゃくちゃハイテンションでアッパーなノリに圧倒されつつ、なんか面白くて読み進めてます。 くせっ毛と唇の荒れに悩む女の子・ゆい子がカリスマ的人気のイケメン・マナ様に気に入られリップケアを教わりつつ、ずっとイチャイチャしてるお話。 傍観者からするとイチャイチャだけど、本人たちはお互いの気持ちがわからずすれ違ったり、マナ様のファンから嫌がらせ受けたりイベントが多数発生します。 2010年代の作品でスマホも当たり前に登場しますが、ゆい子は携帯持ってない&門限厳しい設定なので通常よりすれ違いイベント多めな気がします。 まだ途中までしか読んでないので、携帯持ってない門限厳しい唇荒れてるってめちゃくちゃ貧乏で栄養足りてないとかじゃないよな…虐待されてるとか家庭事情複雑とかないよな…と変に勘ぐってしまってます。このハイテンションさでそんな展開嫌だからずっと平和だといいな…。 とにかくいろんなイベントがテンポよく都合よく大発生してお腹いっぱいになれるので楽しいです。 期待を裏切らない特大ハッピーエンドを信じて最後まで読みたいと思います。
野愛
野愛
2021/10/17
パンツと一緒に価値観も取り替えましょう
実際に沖田のような偏見で凝り固まった人間がこの作品を読むかどうかはさておき、常識アップデートのハウツー漫画として素晴らしい作品だと思います。もちろん漫画としても面白いです。 主人公は、男は男らしく女は女らしく、仕事終わりの飲み会は必要不可欠なコミュニケーション!みたいな思想のアラフィフサラリーマン・沖田。 引きこもりの息子、なんだか冷たい妻と娘、男性用ブラジャーをつけた部下など、どいつもこいつも何を考えているんだか…という日々の中、ゲイの青年・大地と出会い自らの凝り固まった価値観をアップデートさせていくというストーリー。 実際に自分の近くにこんな人がいたら即心を閉ざしてしまうけど、息子の気持ちを理解したいと奮闘する沖田がだんだん愛おしく思えてきます。 沖田を見ていると、今まで出会ってきた愚かな人間たちも古い価値観に縛られた被害者なのかなあ…と許せるような気さえしてきます。 タイトルにもあるように性自認や性的指向なんて、パンツと同じようなもの。何を履いたって、誰を好きだって、自由でいいじゃないか。 大地との交流を通して自らをアップデートしていく沖田の姿はとても眩しいです。いくつになっても人は変われるし学べるんですよね。 より多くの人に読んでほしい、何か気づかされる部分がきっとあるはずです。