兎来栄寿
兎来栄寿
4ヶ月前
ジョージ・ルーカスの半生、とりわけ『スター・ウォーズ』第1作のメイキングから完成に至るまでに尺を割いて描いたノンフィクションです。 お化け屋敷を営んで創造性を発揮する一面もありながら基本的には控えめな少年だったころ。命の危険にも晒され、人生の転機が訪れたティーンズ時代。コッポラやスピルバーグに出逢った若かりしころ。 登場するたくさんのビッグネームは、『スター・ウォーズ』を観ていない人でも楽しめます。 オーディションに来るのはまだ今のように有名ではなかったころのジョディ・フォスター、ジョン・トラヴォルタ、トミー・リー・ジョーンズなどなど錚々たる顔ぶれ。 ハリソン・フォードもまだ俳優業だけでは食べられず、他のバイトもしながら食い繋いでいたという時代で、撮影の際の裏話などもたくさん登場します。 スポンサー・配給会社とのタフな交渉に、現場の壮絶なマネジメント。多くの人が面白さを理解できず、SFなんてヒットするわけがないと言われていた時代に途轍もない記録を生み出した『スター・ウォーズ』第1作目ができるまで。 そんなの間違いなく面白いに決まってますし、帯文で山崎貴監督が言うようにこれ自体を映画として出したらそれも大ヒットしそうです。フランスでこちらが出版された際には5万部が即日完売したというのも頷けます。 今現在存命中の世界的に知名度のある偉人・有名人の中でも、こうした形で物語って面白い人物を考えたときにジョージ・ルーカス以上にうってつけの人はなかなか思いつきません。 映画を作るのが並大抵ではない苦労を伴うのは素人でも想像がつきますし、ましてや1000人規模の現場を回すに当たっては紙幅に収まらない辛いこともたくさんあったでしょう。1作目の段階で倒れるほど体調を壊してしまうのも仕方ないと思います。 しかし、いち『スター・ウォーズ』ファンからするとインダストリアル・ライト&マジック社を立ち上げてなしえた原初のSFXであったり、R2-D2やC-3POにまつわる舞台裏などは読んでいて楽しくて仕方ありません。 特に心に残ったのは『スター・ウォーズ』の最後のピースとなる音楽が最終段階でも決まっていなかったところで、契約に漕ぎ着けられたのは『ジョーズ』などでもお馴染みのジョン・ウィリアムズ。僅か3週間で90分分のオリジナル・サウンドトラックを完成させたという彼の曲を初めて最終的な形でルーカスが聴くことになる場面。 思わず私にもあの『スター・ウォーズ』のテーマ曲が脳内に鳴り響くと共に、感動と興奮が伝わってきてブワッと泣けてきました。その後、ルーカス氏はその素晴らしさを30分にわたって電話で熱弁したそうですが、それはそうでしょう! と。 音楽というものもまた、単体でも何十年経っても記憶に残るもの。特に『スター・ウォーズ』のあの曲は、あの字幕と共に脳裏に焼き付いています。 また、本書を読んで『スター・ウォーズ』を語る際にあまり出てこないもののとても重要な人物だと感じたのが、何度も何度も20世紀フォックスの上層部からストップがかけられるもののルーカスの映画に心酔して粘り強く説得し、最後には自分のクビまでかけて制作費の拠出がストップすることを凌いだアラン・ラッド・ジュニア。 本気の本気で行われたもの・創られたものはたとえ大半の人には理解されなかったとしても深々と刺さる人がいるもので、ジョージ・ルーカスが作ったものの本質的な部分がアランに伝わり、最初の熱狂へと繋がっていったことは胸が熱くなります。 ある意味でビジネスなどとも通ずるものがあり、iPhoneのように世界を革命する真に斬新なものというのは最初はその良さや凄さが真には理解されないものなんですよね。多くの人が反対し、そんなもの上手くいくわけがない、価値がないというものこそ断行する意義がある。アランがいなければ『スター・ウォーズ』も世に出ていなかったかも知れないと考えると、たとえ自分ひとりだけでも心が最高だと思ったものを、しっかりと最高なのだと推し続けることがいかに大事かとも思います。 『スター・ウォーズ』ファンはもちろんのこと、世界最高の映画がどのようにして作られたのかというドラマはファンでなくとも一見の価値があります。人類史における営みというマクロな視点で見ても、普遍的な価値をいくつも発見できるでしょう。
名無し
5ヶ月前
BLをちゃんとチェックしている人にちゃんと見つかって、ちゃんと売れてほしい。 コマ割も演出もキャラクターの魅力も主役2人が惹かれ合う姿も 身体が溶け液体が弾ける性描写(メタファー演出)も こんなにもBLとして(BL読者層以外にも好きな人は多いと思います)完璧なのに話題になりきっていないのはどうして… SHUROの読者層が異なっているとか…? 単行本が出るタイミングでトーチ漫画賞の審査員をされていた 雲田はるこ先生に宣伝をしてもらう等、確実にささる層にしっかり届いてほしいです。 トーチで受賞されていたときは漫画の卓越さに注目が集まっていて、その流れでBL読者層にしっかり届いていた印象があるので、せめて当時読んで驚いていた読者に連載作品になっていることが周知されてほしいです。 トーチに当時の作品(1話の元となった読み切り)が今も掲載されているので、せめて該当ページに作者の現在のSNSや連載ページへのリンクをはってほしい。 わたしはトーチが漫画賞をまたするんだな→過去の受賞作はどんな作品があったかな?→作品を読んで思い出す→作者名で検索する→連載になってる???の経路で連載に気づきましたが、気づくまでの手間を一つでも減らせないでしょうか。 そもそもSHUROの他の連載作品は読んでいたのに掲載頻度が低いためか、蛇ノ目くんには気づいていなかったくらいなので、 読者の関心の誘導みたいなものが致命的にうまくいっていない気がします。 SHUROは漫画が読みやすいし、UIもシンプルで、PCスマホタブレットいずれでアクセスしてもストレスがなく、好ましいのですが 読者層がかぶっていそうな作品同士のサイト内での連携がうまくいっていない気がします。混沌さを目指しているのかもしれないし、実際そういう良さもありますがもう一息どうにかしてほしい… BL好き以外にも読んでほしいと言われそうな作品ですが、BLが好きな人に絶対に愛される作品なのだから、まずはしっかり届いてほしいです… 単行本化が本当に楽しみですが、作品の良さに適した宣伝が行われたうえで、信じられないほど売れてほしい。