親は子を保護する役目があるけど、子の成長につれてそれが必要なくなったり、立場が逆になったりして、気付けば子が親を守ってあげないとという状況になっている。でもそうなって初めて、自分が如何にいままで親に守ってもらっていたかを知る、というストーリーがグッと来ました。この感覚が刺さる人、多分多いんじゃないかなと思います。
朝日新聞デジタルで連載されていた実話のコミカライズ。 https://www.asahi.com/special/matome/gannotsuma/ 病気でなくなった妻が遺したレシピ帳で料理を作る夫。原作によると、病気が発覚してからひとりでも家事ができるように妻から指導を受けたようです。コミカライズではどんなふうに描かれるのか楽しみです。
連載していた吹奏楽部漫画の『宇宙の音楽』が完結して直後のこの読み切り。 めちゃくちゃ良いホルンのエピソードだけに、連載作に入れ込もうとしていたのかな〜とか、ただ最終巻のあとがきで「次作も吹奏楽を描く」と宣言しているのでこういうエピソードを無限に描ける人なのかもしれない。 なんにせよ次の作品も楽しみな作家。
ホルンってどちらかというと吹奏楽等であまり人気ではない方の楽器という印象があったけど、このマンガを読んでホルンがどういう楽器なのかを知ってやってみたい!と思う人、いるんじゃなかろうか。どんな形にもそうであるべき理由があるんだな〜。それはそれとして、教師の過重労働問題についても改めて意識する内容でもありました。
「トマトエモーション」と同じ作者ということを知って再読。一年前の雑誌掲載時にも読んでいましたが、今も記憶に残る作品でありました。ロボットが高齢者を介護する話でギャグを挟みながら軽快に描いてあるんですが、これから先の未来で実際に起こり得そうな問題な気がしますよね。「トマトエモーション」に比べるとページ数も半分くらいなので軽く読めてしまうのですが、この時点で作家性がすでにあるので記憶にも残る作品になっているんだなと思いました。
48Pとボリュームのある読切でしたが、ベトナム人技能実習生のヤウさんとトマト農家のおじいさんのほっこりする交流シーンと、失踪事件を調べる犬飼探偵のシリアスなシーンのギャップが交互にあって、最後までダレることなく面白かったです。農園と内科医が技能実習生の健康に気を使っていたのはそういう理由だったんですね…。 描かれたのは48歳の新人漫画家ということですが、作画もクオリティ高いし経歴が気になるところです。どこかでアシスタントでもされてたんだろうか。 https://bigcomics.jp/episodes/4c1c6d40b76ca
オリジナル増刊を読んでたらザビエラー長谷川の漫画が載ってて驚いた。イブニングが休刊になってからご無沙汰だったが元気そうで何より。2Pしかなかったけど。このままオリジナル増刊で何か連載してほしいな。
いとこ同士で同じ大学に通い、親が経営するコンビニでバイトをしているまゆとアコ。ふたりはいつも一緒で仲良く見えるけど、アコのほうに少し邪悪な部分がありそうで… 世間でいうところの「女が嫌いな女」みたいな言動で嫌〜な空気になりますが、そんなアコちゃんにも誰にも言えない悩みや苦悩があるんだなとわかる後半。身近な誰かに依存するっていうのはあんまり良いことじゃないかもしれないけど、まゆちゃんはアコちゃんのそばにできるだけ長くいてほしいと思ってしまった。
※ネタバレを含むクチコミです。
面白すぎる!!最高でした。 親が再婚して兄弟姉妹になった関係性を描いたマンガの中でいちばん好きです。言い方悪いけど、2人ともほんとに野生の猿みたいでかわいいですね。で、それにあの山田くんというキャラクターが出会って最高の化学反応が起こった。何回言うんだって感じですけど、最高です。
久しぶりに帰省した主人公は東京で女芸人をしている。父と母は兄の子供である孫に夢中で、90歳を過ぎた祖母はボケてきていた。今現在の時間の流れを主人公の視点で語りつつ、そこにボケて子供に返った祖母の記憶と意識が混ざる構成。 祖母が子供だった頃の村では凶作で食うに困った人達が芸を見せて金をもらい歩いていて、同情した父親が彼らを家に泊めたが、翌朝に物が盗まれていたことがあった。主人公はパソコンの画面越しにネタ合わせしていた相方に「どうして里帰りしたの?」と聞かれ「自分は子供に返りたかったのだ」と気づく。子供に返ってしまった祖母と子供に返りたい孫。二人ともそれぞれの過去と現在のしがらみに苦しんでいる。 物語の最後で東京に帰ろうとする主人公を玄関先で呼び止めて「私からもらったと言うな」と祖母がお菓子を握らせる。おそらく祖母のボケた思考回路の中では、子供心に印象的だった貧しさから盗みをしてしまった人物達と、同じく芸をしている孫を混同しているが、この行為は祖母からの泥棒をしたあなた方を恨んでないというメッセージだと思う。主人公は自分が買ってきたお土産を渡してくる程ボケても子供のように可愛がってくれる優しい祖母だと感じている。 ある意味ここで意思のすれ違いが起きているけれど、同時に祖母も孫も救われている。そこに気づけるのは読者だけ、というのも面白い。 短編集『心臓』に収録されていた作品それぞれに登場したモチーフが数多く見つけられた。高野文子のオマージュのような表現もそう。今回の「あんきらこんきら」で一つの完成形に達したような感じがする。けれども奥田亜紀子の進化はまだまだ続くと確信を持てる傑作でもありました。
選ばれた者のみが持つ「超能力」とは違い、誰にでもひとつ備わっている能力が「強能力」らしい。 ある日の満員電車、"二駅先"で降車する人間を察知する能力を持つ男・向井はさっそくその能力をつかってある女性に狙いを定めていた。対するその女性・近藤は、自分が持つ何かを狙っている人間がいるとそれが"熱くなる"能力を持つ。 向井が狙うは近藤が座る席。どんどん熱くなる近藤の尻。 自分の尻を狙う輩がいると勘違いする近藤。 はたして向井は無事に近藤の席に座ることができるのか!? 個人的には向井の能力はむちゃくちゃほしいけど、近藤さんのはいらないですね笑
経験がないことをとやかくいう権利はないけれど、結婚によって妻が夫の姓に変わることを当然のことだと思いたくない。手続きが手間であることを軽く見たくない。少しずつ、自分のアイデンティティが他人のものに差し替わっていく様を見て、自分がこぼれていってしまう感覚を覚えたこの漫画の主人公と、同じような人がこの世にたくさんいることを知っておきたい。その違和感は間違ってない。 そして願わくば、姓を揃えるか揃えないかを自由に選べる未来が来てほしい。
「たまご他5篇 光用千春作品集」に収録されてました。 気になったから買ってしまった。 思ってた展開とは違ったしびっくりしたけど良作でした…
道端にふと現れる「名代さま」という黒い御札に会いたい人の名前を書くと叶うという都市伝説。それのおかげなのか、子供の頃、転校で離れ離れになった親友に会うことが出来たという主人公が、20年ぶりにその地・尾道へ向かうという話でした。 また会おうという約束をしたはずなのに、どうしてそれきり疎遠になってしまったのか。再びその場所へ訪れることで、しまわれていた記憶が引き出され、大人になったからこそわかる人の成長を実感します。旅に出るきっかけって、こういうことでも良いんだなというのと、これこそ旅の面白さだなというのを感じました。
すごい「夏」の切り取り方だなと思いました。地獄のドン底みたいな夏だってある。 少年の傷ついた心と、母の止まらない独り言の差がすごいことになっていた。実家だな、という感じがした。
自分にとってできることは何で、やりたいことはなんだろう。そんな青春期の王道な悩みをすこし不思議で優しいところへふわっと飛ばしてくれるようなお話。 今回はヒロインがサブのポジション。試験結果を覗いて、ついてくるだけの子。でもだからこそ味のある名脇役だなぁと思う。 さすがカラシユニコ先生だなぁ
とても面白かった。女子のほうが男子よりも身長が高かったら、小学生たちはどんな関係性を築くんだろう。そんな疑問を素直に反映したような世界が広がった作品。 この作品の重要なところは「男女が逆転した世界ではない」ということ。女子がちょっと粗暴で男性的、男子が大人しくて女性的という構造はたしかにあるものの、安易に反転しているわけではなく、あくまでそれぞれの「異性」らしさがある。この結末に持っていけるのはさすがのカラシユニコ先生だと思った。
田舎に帰省するのが億劫で、おじいちゃんやおばあちゃん、もしくは両親に最近会ってないという人は、これを読んだ次の日には会いに行ってるかもしれない。 自分にはそういう存在はいないのに、いないはずのおばあちゃんに会いに行きたくなった…。 老人がボケてるのかボケてないのかどっちかわからないような状態って、こんな感じなのかな、と疑似体験したような感覚でした。
著者が「はじめてペンで描いた」という、王道ラブストーリー読切。 ベネチアを舞台に、大学の交換研修制度で日本から来ている青年と、ダンサーの女性の短い恋が描かれる。 デートでも、彼女はかならずその日の最後のフェリーで家に帰る。家庭の事情が少々複雑そうだけど、お互いのプライベートには深く踏み込まない。 そして研修期間も終わろうという時、それぞれに自分なりの決意をして最後のデートの日を迎えるが…。 異国の恋というのは情熱的なイメージがあったけど、この話はあっさりと始まり、あっさりと終わる。期待はずれとかではなく、こういうこともあるか。と妙に納得…。 案外、このふたりが再会する可能性は低くないんじゃないかと思う。
「メメント飛日常」カラシユニコの読み切り。 魚談義から始まるちょっと新しい青春漫画。前作を読んだ時にも感じた、小さいけどたしかな喜びを覚えた時に人が感じる、ふわっとした非日常感を独特の感性で描写できるところが素晴らしい。 特に今作では指先で感じた水の感触から広がっていく、主人公の空想世界が綺麗で、どこか親しみを覚えるものだった。また、この人の青春漫画を読みたい。
親は子を保護する役目があるけど、子の成長につれてそれが必要なくなったり、立場が逆になったりして、気付けば子が親を守ってあげないとという状況になっている。でもそうなって初めて、自分が如何にいままで親に守ってもらっていたかを知る、というストーリーがグッと来ました。この感覚が刺さる人、多分多いんじゃないかなと思います。