かんかん橋をわたって

嫁姑漫画を少年漫画の文法で描く!

かんかん橋をわたって 草野誼
toyoneko
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「嫁姑漫画」なるジャンルがあります。嫁と姑の確執は永遠のテーマですからですね。コンビニなどでよく見かけます。 そして本作「かんかん橋をわたって」は、嫁姑漫画の極北に位置する漫画です。 初期は、まぁ、わりと普通の(?)嫁姑漫画です。嫁ぎ先の姑がイジワルで、いろいろな嫌がらせをしてきます。 主人公の嫁ぎ先である「川東」(かわっと)では、イジワルのことを「おこんじょう」と呼ぶのですが、主人公の姑はなんと「川東(かわっと)一のおこんじょう」と呼ばれている凄い姑! 主人公は、そんなおこんじょうに耐えて一生懸命頑張る!というお話でした。 まぁ3話で「嫁姑番付」という「嫁いびり番付」の話が出てきたりとか(主人公は4位)、やや特殊な設定が見え隠れしますが、このへんはまだ普通でした。 ところが4巻くらいからだんだん風向きが変わります。 主人公の姑は、ただの「おこんじょう」ではなく、恐るべき策士であることが明らかになっていきます。 主人公は、その様子を見て、「お義母さんにはすべて見えているんだわ」「なんて…なんてすごい人なんだろう!」とか言い出します。 そして、憧れの姑に負けないように、自らも恐るべき「おこんじょう」を発揮するようになっていきます。 具体的には、姑の着物ダンスから防虫剤を全部抜き取って着物を虫食いだらけにしたりするんですが…(なお、姑はそれを見て大変喜び、とびきりの笑顔で虫食いだらけの着物をきて歩き回ります。)。 さらに、主人公は、その他の嫁姑番付ランカーにも働きかけ、嫁姑の仲違いを解消したり、問題を解決するなどして、どんどん力をつけていきます。 それを見た姑が「なんて上手なおこんじょう」と評すシーンなどは、作中屈指の名シーンですね!(添付)。 そして物語はクライマックスに向けて動き出します。 地域支配者たる「ご新造さま」があらわれ、嫁姑番付ランカーが次々と登場します。 恐るべき「ご新造さま」に対し、主人公と姑は共闘し、最終決戦に挑むことになります。 もう何のこっちゃか全然わからないかもしれませんが、とにかく最終的にはそういうお話です。 このように、本来は、嫁姑漫画のはずなのですが、「嫁姑ランキング」とか「成長する主人公」とか「力を合わせての最終決戦」とか「ラスボス」とかの少年漫画的要素を盛り込みまくって完成されたのが本作です。 「嫁姑漫画を少年漫画の文法で描いた」ともいえます。 怪作ですが、個人的には大好きです! なおコミックは全10巻(ただし電子版のみ)。現在は全巻アンリミで読めます!

汚部屋そだちの東大生

結局、環境は言い訳にすぎないでFA?

汚部屋そだちの東大生 ハミ山クリニカ
六文銭
六文銭

タイトルがセンセーショナルだけど、読み方で随分変わるかも。 自分は東大、というところに目がいったので 「こんな環境下でも東大いけんだ」 と、主人公の謎のハングリー精神や、親の教育とはなんぞやと考えてしまった。 これがフィクションなら総ツッコミして終わりだが、 作者「ハミ山クリニカ」先生の自伝的な話なようで、より考えてしまった。 (余談だが作者は、現役で芸大に受かり1年で中退し、東大に進学という「おい、『ブルーピリオド』息しているか?」みたいな、ギャグみたいな経歴の持ち主。) 東大生の家庭環境は、親の平均年収◯万円以上とか、どこどこ出身が多いとか、そういう数値的な一般論を出しがちだけど、 なんか東大落ちに 「自分が「そう」ではないから入れなかった」 という、言い訳を用意してくれているようで、いかがなもんかと思っていた。 昔、塾講師をしていたから、こういう情報が毒にも薬にもなるので。いや、大部分の人にとって毒にしかならない。 だけど、こんな異常値みたい人も当然いるわけで、どんな環境下でも「意志あるところに道がある」 ことを証明してくれて、こっちのほうがよっぽど共感できた。 部屋が汚く料理もしないけど、教育には熱心な母親だからネグレクト?と一概に言っていいのか疑問だが、そんな母親でもしっかり子供は育つ。 一方で、産まれて3歳から塾に通わせ、子供の時間管理を徹底的にして東大受からせた受験ママもいて、正直、自分的にはどっちも狂気だなと思う。 親と子供の関わり方、親の役割ってなんだろって考えさせられました。 4話ぐらいで父親との関係もわかってきて家庭環境の複雑さが増していきます。 なんにせよ、これから主人公が世間と接点をもって、いわゆる「普通」に変わっていくにか、「普通」との乖離に絶望するのか、どっちに転ぶのか楽しみです。 最新6話の終わりが不穏なだけに、頑張ってほしいっ!