同居人が不安定でして

駄目プロ絵師と世話焼き腐女子

同居人が不安定でして タカダフミ子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

最初タイトルを見て、メンヘラ的内容なのかなぁ、と思ったのですが、そこまで重い物は無かったです。 〈不安定さん〉は、プロのイラストレーター。締め切りに追われ、筆が乗らず、自信も持てなくて……と、クリエイターっぽい苦しみに、布団を被って落ち込むかソシャゲに逃避。その上極度のコミュ障で、打ち合わせの外出すらままならない。 そんな不安定さんと同居する〈しっかりさん〉は、かなり年下のOLで腐女子。世話好きの彼女は同人活動に勤しみながら、不安定さんを支える。 構図としては『2DK、Gペン、目覚まし時計』が近いですが、不安定さんはかえちゃんがコミュ障な感じ、と言うと、その救いの無さが伝わるでしょうか。一方しっかりさんは奈々美ちゃんよりずいぶん幼く見えても、甲斐甲斐しいのは似ている。 不安定さんを叱咤激励しつつ、つい甘やかし、お世話することに喜びを見出し、そして男装した不安定さんにときめいてしまうBL好きのしっかりさん、という百合は思っていた以上に強力に! 同居に懐疑的な家族が出て来るのですが、それに対するしっかりさんのアンサーは、なかなか度胸があって、これが推しへの愛なのか……と感激のラストでした。

アエカナル

悪意の介在しない"たった2人だけ"の日常 #1巻応援

アエカナル 笹倉綾人
sogor25
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サラリーマンの定井光臣は自らの命を絶つために山の奥深くに足を踏み入れていました。 彼がしめ縄の巻かれた大樹の側を死に場所に選んだそのとき、高い木の枝に縄を掛けようとする少女を発見します。 「彼女が首を括ろうとしている」と咄嗟に思った彼はその少女を助けようとしますが、実はその少女は単に干し芋を作ろうとしていただけでした。 ただしその少女・アエカは自分のことおただの人間ではなく、その土地の山の神に嫁入りしたため800年間生き続けている"八百比丘尼"(やおびくに)だというのです。 この作品はそんな2人の出会いから始まる異類婚姻譚のような物語です。 『ホーキーベカコン』を描かれていた笹倉綾人さんの新作。 仕事の多忙さに疲れて死を決意した定井でしたが、天真爛漫で朗らかなアエカに接するうちにいつしか生きることに対し希望を見出していきます。 一方のアエカも、山の神が去り、元いた村も滅び、150年もの間たった1人で過ごしていて、久々に接する人間であり、謎多き彼女にも優しさを見せる定井に徐々に絆されていく様子が描かれています。 作中で描かれていく、悪意の介在しないたった2人だけの日常は何気ない日々ながら心に染み入るものがあります。 ただこの作品、2人の日々を描くにはやや変則的な導入をしていて、それが今後の物語にどう関わってくるのかも気になるところです。 1巻まで読了

やがて君になる

役を生きる、私が生まれる。

やがて君になる 仲谷鳰
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

恋が分からない侑と、彼女に初恋を覚える先輩・燈子、そして燈子の親友・沙弥香。彼女達の心は、難解だ。 恋を知る私は、恋が分かない侑に感情移入しにくい。燈子の完璧さが隠す物も見えないし、沙弥香の燈子への心もどこか胡乱だ。 侑に甘えながら心を開き切らない燈子。燈子を受け止める侑の優しさ・苛立ち・変化。二人を見る沙弥香の複雑な心情。それを表現する彼女達の言葉は、時に鋭いが時に遠回り。 相手の事は思い遣れるのに、自分の心は掴めない三人。そのモノローグを追ううち、私は彼女達の本当に言いたい事を、未だ形にならない心を、考えずにはいられなくなる。 まるで人の複雑な心に踏み込む舞台の脚本の様な、彼女達の心理描写。そこには私を考え込ませ、よろめかせる強い引力がある。 ☆★☆★☆ 物語は、彼女達の心の変遷と生徒会劇の製作とをシンクロさせて進む。元々は燈子が自分の「人生の役」を完成される為に仕組んだ生徒会劇。図らずも燈子の内面と重なってしまった台本を巡り、三人の心は絡み・切迫し・圧縮されていく。 燈子のために侑が望んで変更した結末。そこに込められたメッセージを受け取った燈子は、舞台で役を生き切った時、「人生の役」から解放されていく。 舞台の完成と、燈子の新生。それが同時に表現される時、難解だった心情はシンプルになって私の心に届く。6巻まで積み上げた先に広がる光景は、凄い創作物を見た喜びと、燈子への祝福に満ちていて、脳が焼けつくような多幸感で煌めいている。 凄い創作物を見た時に、新たな発明品の目撃者である事と、純粋に描かれた内容に感激する事は、両立する事もあるし、そうで無いこともある。そして『やがて君になる』は、確実にそれらが両立する作品だ。 切ない人達の心の解放と新生を描いた、心に残る創造物が、創られ届けられた事に、深く感謝したい。

“かわいい”はキミのもの

クールな女子の秘密にときめくラブコメ #1巻応援

“かわいい”はキミのもの いうのす
sogor25
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主人公の田丸君は背が低くて童顔という見た目からクラスでは可愛いキャラとしていじられていました。 今日も同級生の男子に頭にリボンをつけられて、女子からも可愛いと言われる始末だったのですが、その日の放課後たまたま誰もいない教室に入ったら、クラスの中でもクールでかっこいいとゆう評判の女子、森永さんが鏡の前でこっそりリボンをつけている場面に遭遇します。 そんな偶然から森永さんの秘密を知ってしまった田丸君の事を描いたラブコメ作品です 森永さんの方は周りからの印象に反して可愛いものに憧れているような様子があり、それを周りには知られたくないのか田丸君だけに共有しようとします。 森永さんのモノローグはほとんど描かれていないため、可愛い部分も見せつつどこかミステリアスさも残っている、そんなキャラクターになっています。 一方の田丸君はそんな森永さんのことが気になり始めますが、クラスでのクールな雰囲気はそのままなのになぜか自分にだけ可愛い姿を見せようとしてくる森永さんにただ振り回されるばかりで、結果として森永さんと田丸くんどちらも可愛いラブコメ作品に仕上がっています。 1巻まで読了

カクレガミ

幼馴染5人が足を踏み入れてしまう"極限の孤独" #1巻応援

カクレガミ 烏丸渡
sogor25
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幼馴染で夏祭りに来ていたヒロ・ツカサ・サキ・マツリ・ユノの5人。 彼らの町の神社には直径メートルぐらいの巨大な球のような石が御神体として祀られているのですが、ヒロとツカサの2人はその意思に大きなヒビが入っているのを見つけます。 興味本位でその石の割れ目の中を見ようと棒を突っ込み割れ目を広げようとするツカサとそれを止めようとしたヒロでしたが、次の瞬間、ヒロはその割れ目から自分にそっくりが何者かが出てくるという幻覚を見ます。 その後、残りの3人に見つかり、非難されたことでその御神体は諦め祭りに戻ることにしたのですが、人混みに戻った時、彼らはある異変に気が付きます。 どうも彼らは祭りに来ている人の誰からも認識されなくなってしまっていたようで、すれ違う人にぶつかっても、金魚すくいの水槽の中に落ちてしまっても、誰も気にも止めません。 そんな彼らが自分たちの「存在」を取り戻すために駆け回るという物語です。 この作品、表紙を見ると楽しそうな夏祭りの風景なのですが、ここから1巻の間で怒涛の展開が繰り広げられます。 自身の存在が認識されなくなること以上に衝撃的な光景を目の当たりにし、なんとか元に戻れるよう奮闘するのですが、この現象の正体が明らかになろうとした瞬間、追い打ちをかけるように彼らに試練が訪れます。 とにかく先へ先へと引き込まれる展開、さらに最後の予告の部分にこの後また大きく物語が展開していくことを予感をさせるページが載せられていて、1話を読んでしまったら最後、次の巻まで読まないと気がすまなくなる、そんな作品です。 1巻まで読了

安達としまむら

片恋/独白/不器用な距離感

安達としまむら 入間人間 のん 柚原もけ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

まず、妙に硬いモノローグが、何か面白いなぁと思ったのである。 それは、まるで外国映画の字幕の様にぎこちない文体で、女の子達が共にいて・少し会話し・表情を変えるコマを繋ぐ様に流れ、作品の心地良いリズムになっている。そしてそれは、不器用な女の子達の物語と、妙にマッチしている。 人間関係が酷く苦手な安達と、そこまでではないけれどそれなりに人付き合いが面倒なしまむら。体育館の二階のスペースで授業を共にサボる二人は、緩く一緒にいられる関係だった。 けれども安達は、しまむらに恋をする。 不器用すぎる安達の片恋。よく分からない安達の言動を、戸惑いつつやんわりと受け止めるしまむら。息苦しさと優しさの同居。多少の奇妙な話はありながら、それよりも細かく生真面目に語られる心情に、しっかり心を掴まれてしまう。 私が読みたいのは、変わった話や恋の駆け引きではない。私は難しい人の心、それがどうしようもなく動く瞬間が読みたいのだ……だから言葉を尽くした心情描写の後に、安達がふと漏らす「しまむら……」の一言、これだけで頭でっかちなモノローグが吹き飛ぶ程の衝撃に、思わずあぁ……と声が漏れてしまうのだった。

押して駄目なら押してみろ!

君が一番美味しいラブコメディー! #1巻応援

押して駄目なら押してみろ! 廣瀬アユム
ふな
ふな

令和2年でイチオシしたくなるような、読めば絶対ニヤニヤしちゃう魅力を本作は持っている! 人間は恋愛対象外、蛇にしか恋愛感情を頂けないことを隠しながら生きてきた学園のアイドル的女子高生・財部つくしが、なぜか新任教師の加賀美肇に恋してしまうというラブコメディ。     ファーストコンタクトで人が恋に落ちる瞬間を読者が目撃してしまうのけれど、なぜ好きになってしまうのか……というのはもちろん読んでいけば分かる。異種間ラブコメと謳っていることから、色々と察して欲しい。 ただ一言、**ヒロインの嗅覚が凄すぎる……(笑)**     自分の感情を確かめるために、先生をグイグイ押していくヒロインの姿は可愛いし、自分の感情の理由を自覚してからはさらに推していくヒロインの可愛さは無限大。 フェチズム全開で頬ずりしようとするわ、嬉々として舐められようとするわ、タイトル通りで押しまくり。 駄目でも引かない、前進あるのみ!     ファーストインプレッションでヒロインに抱いた優等生的なイメージが、読み進めていくうちに崩れていく。 **学園で被っていた仮面など、「好き」というエネルギーの前にはあっさりと剥がされてしまうのだ。**     舐めるという行為が、実は教師の加賀美に取っては大事な行為なのだけれど、JKを舐めるというあまりにも非日常的な光景(というか普通なら教育委員会案件)が、時にえっちな雰囲気があったり、邪魔できないような尊い雰囲気が漂っていたり。     先生はペロリスト(舐める人)として照れを持つ稀有な存在だし、つくしちゃんはペロラレリスト(舐められる人)として反応が完璧。 舐めたい人と舐められたい人で、需要と供給が見事に満たされている!WinWinの関係性なのが素晴らしい(!?) 舐めるという行為にこんなに魅了されるのは、かつてアフタヌーンで連載していた『謎の彼女X』以来と言っても過言ではない(これもヒロインのよだれを舐める良い漫画なんだ) **ヒロインが作った手料理よりも、ヒロイン自身が一番美味しいというから、先生も読者も困ってしまうんだよなあ!!!(笑顔)**     まさにタイトルに書いた、「君が1番美味しいラブコメディー」が嘘ではないことが、読んでもらえれば絶対に分かる。 読み終わった頃には、すっかり胃袋を掴まれてしまっているはずだ。読者はつくしちゃんを舐められないので、熟読して胃袋を満たすしかない!   **つくしちゃんが美味しく食べられる様(嫌らしい意味ではなく)を、ぜひ楽しんで欲しい。**     また、めちゃくちゃ押しまくるつくしちゃんだけど、実は赤面シーンが多いのも大きな魅力。 赤面しているヒロインは人類の文化遺産なのだ。押して押して押しまくりながら赤面するつくしちゃんを、みんなで堪能しよう!     **訳アリ高校教師✕訳アリ女子高生=ニヤニヤ必須のラブコメディ**   令和2年以降の人類史では上記方程式が成り立つということを、漫画好きの全ての人間に、ぜひ提唱させて頂きたい……! 電撃マオウ2020年6月号の表紙のつくしちゃんも最高に可愛いことを、最後に報告してこの文を終える。

殺し屋ちゃんと死なないターゲット

殺し屋の少女と不死身のマフィアの不思議な同居生活 #1巻応援

殺し屋ちゃんと死なないターゲット 古賀由人
sogor25
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幼い頃から教育を受け凄腕の殺し屋となった少女メメント・モリ。彼女がターゲットであるマフィアのボス・レオナルドの首を落とした場面から物語が始まります。レオナルドの部下たちが乗り込み、敵討ちをしようとメメント・モリに銃口を向けるのですが、次の瞬間、切り落とされたレオナルドの首から白煙が上がり、彼の体が元通りに再生されます。これは彼自身も知らなかったようなのですが、実はレオナルドは何度殺しても再生する不死身の体の持ち主だったのです。 その後、何度もレオナルドのことを殺すメメント・モリでしたが、その度に彼は生き返ります。 依頼を遂行するまでは帰れないと言い、彼の館に居座るメメントモリ。そんな彼女に対してレオナルドは、彼が死にはしないけれど不老であるわけではなく「ヨボヨボになっても死ねないなんてかっこ悪いだろ」ということで彼女に自身の殺害を自ら依頼します。そんな奇妙な縁でメメント・モリがレオナルドやマフィアの一味と共に暮らし始めるという物語です 暗殺のターゲットであるレオナルドはマフィアのボスなので、善か悪かで言えばおそらく悪の側の人間だと思うのですが、違法な薬物は取り扱わない、自身の利益となるための殺人はしないなど一本筋の通った人物として描かれています。そして屋敷に居つくことなったメメント・モリに対しても自然とマフィアの一員、仲間であるかのように扱い始めます。 そして、元々は殺し屋として徹底した教育をされており、任務のためなら自分の命を惜しまないというメメントモリだったのですが、レオナルドたちと暮らしていく中で、1人の人間として扱われることとで徐々に人間らしい感情を獲得していくという物語にもなっています。 なので、殺し屋とマフィアと言う非日常的な登場人物ばかりですが、いわゆる疑似家族もののような読後感のある作品でもあります。 2人が同居する目的はあくまでメメント・モリがレオナルドを殺すことにあるのですが、それを忘れてしまうほどの関係性が二人の間に構築されていきます。今後、2人の関係性がどのように変化していくのか、そしてレオナルドが改めてメメント・モリに依頼した彼自身の殺害という任務がどうなっていくのか、ハッピーエンドもバッドエンドも想像できるからこそ今後が楽しみな作品です。 1巻まで読了

声優ラジオのウラオモテ

JK声優、喧嘩しつつ高み目指す! #1巻応援

声優ラジオのウラオモテ 巻本梅実 二月公 さばみぞれ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

お仕事漫画でライバル同士が、火花散らしながら高みを目指す物語は、昂るものがあります。アニメの現場はプロ意識の塊のような場所だと思いますが、声優さんも、プロ意識高いですよね。 声優さんの意識が垣間見られる場所として「声優ラジオ」があります。フワフワ喋っているようで、時々生々しい本音でトークをする声優さんが好きです。そんな「声優ラジオ」に、女子高生で、しかも同じ学校・同じクラスの二人が起用される……というのが、このお話。 声優ラジオというと、ふんわりした仲良しトークが普通です。この二人のラジオも表面的には仲良しキャピキャピトークですが、実際の二人は物凄く険悪。方やギャルの陽キャ、方やぼっちの陰キャ。何かというと喧嘩ばかり……ちょっと引く位の刺々しさ、荒み具合。 しかし「アイドル声優」として、可愛さを売りにする為に素の自分を隠しているのは一緒。そして仕事人としての意識が高いのも、共通している。 その上で、ラジオの収録・公録、作品の現場を成功させる為に、互いの意思をぶつけ、苦手なところを支え、相手に負けまいと高みを目指す二人は、次第に互いを理解していく……その過程を追う程に胸高鳴り、のめり込んで読んでしまいます。 陰キャのツンっぷりが物凄くて正直怖いのですが、徹底的なツンの後にポロっと出るデレが、威力抜群!陽キャと一緒に心グラグラ揺れまくりです! こんな二人をアニメ化したら、誰に声を当ててもらおうか……と、かなり真剣にメタな事を考えながら読みました。

缶乃短編集 無職とJK

「明日に続く」物語に力を貰う #1巻応援

缶乃短編集 無職とJK 缶乃
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

『あの娘にキスと白百合を』の著者・缶乃先生の短編集。新連載作『合格のための! やさしい三角関係入門』との同時刊行です。 表題作『無職とJK』は、電撃コミックの百合アンソロジー『エクレア』シリーズにて〈連載〉。金持ちJK(素直ないい子)が、「ヒモ稼業」のお姉さんを養いたくて、グイグイ迫って行くけど……というお話。 コミカルなやり取りと、「金」というドライで生臭い物を介しても尚、お嬢様の強い恋情と、子供を思い遣るお姉さんの真摯さは、胸に迫るものがあります。 その他、一迅社・双葉社のアンソロジーと『百合ドリル』、同人誌掲載の小品が集められていますが、缶乃先生の一貫したカラーは、昏さも明るさも「しなやかに」描く、という感じでしょうか。 明るい絵柄で描かれる女子達のコミカルなやり取りから、不意に昏さが立ち現れて来る。それを明るさが救うか、昏さが飲み込むか、という物語の、どの終局からも「終わり」という声は聞こえない。聞こえるのは「続く」という声。 昏い感情も切なさも、生きている限り明日も続く。抱えて進むか、立ち直るか……いずれの物語も、へこたれなさ・次に繋げること・生きる力を表現していて、それ故に本質的に明るく、しなやか。読んでいて打ちのめされない、自然と力を貰えるような作品達だと思いました。

合格のための! やさしい三角関係入門

誰か一人を選べぬ苦しみを知る #1巻応援

合格のための! やさしい三角関係入門 缶乃
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

タイトルはコメディ調なのに、読み進めるごとに切なくなる物語。登場人物皆が心の奥底に何かを隠し、その感情が昂る瞬間に、胸が苦しくなる。 登場人物は ●憧れの先輩を追って難関校受験を目指す中3女子・真幸 ●真幸の家庭教師になる高1の凛 ●真幸の憧れの先輩で、凛の親友でもあるあきら 主人公は真幸のように描かれるが、物語のキーマンは、家庭教師の凛。 彼女は実は「複数の人を愛する女」。そのことは誰にも理解されず、ずっと仲良しだと思ってきた大切な仲間も、傷つけ失ってしまう。その過去話も、辛い話だ。 〈倫理にもとる〉本能を持つ人の、絶望的な感情……傷つけたい訳ではないのに、存在するだけで誰かを傷つける、という凛の苦しみは、とてつもなく切ない。救われて欲しいと思うが、そのために越えるべき〈倫理〉の壁は高い。 そんな過去故に、もう友人は作るまいと思って来た凛だが、思いがけずあきらという親友を得て、さらに生徒の真幸に自分を肯定される。 意図せず新たに生まれた、大切な「三人の」関係。1巻にしてもう、波乱の予感しかない。凛と真幸の危なすぎる距離、親友としての凛とあきらの関係のおぼつかなさ、そして凛の生徒が後輩の真幸である事を、あきらが知る時は来るのか……この困難、この複雑さと切なさ、2、3巻程度で「やさしく」完結する筈がない……のか?