制服ぬすまれた

この突拍子のなさを楽しむ

制服ぬすまれた 衿沢世衣子
影絵が趣味
影絵が趣味

個人的な衿沢世衣子との出会いは『コミックH』にて、原作:よしもとよしとも、作画:衿沢世衣子で発表された『ファミリー・アフェア』という漫画でした。話が好きなのはもちろんですが、コマのほとんどがアクションで構成されているような短編マンガとしては類い稀な躍動感にびっくりして、いまでも大好きなマンガのひとつにこの『ファミリー・アフェア』を挙げることがよくあります。 さて、このアクション的なコマ作りはよしもとよしともの資質でもあったわけですけど、当時のよしもとは衿沢世衣子にもこの資質を見出していたと思います。事実、のちに『ファミリー・アフェア』が収録されることになる単行本デビュー作の『おかえりピアニカ』は年頃の少年少女が描かれる青春群像のような体をなしているんですが、コマ作りはアクションそのものです。アックスでの連載になった『向こう町ガール八景』を経て、『シンプル ノット ローファー』ではアクションとともに絵柄も洗練されてきて、つぎの古地図というテーマを掲げた『ちづかマップ』でプチ・ブレイクを果たします。このテーマの新規性がウケたということがあると思うんですが、『ちづかマップ』においても屋台骨としてマンガを支えているのは、やっぱりアクション的なコマ作りだと思います。もっともこの時期には、アクション的なコマ作りというより、それを血肉にした衿沢世衣子ならではマンガ的呼吸のようなものに変質しているような気がしますけども。 衿沢世衣子のばあい、マンガを作るとき、これこれの話があって、頁がこれだけあるから、こんなふうにコマを割っていこう、みたいな作り方をおそらくしていないのではないかと思うわけです。というよりは、まずは活発なガールズに動いてもらう。それによって何らかのマンガ的事件が生じて、それに対してさらに活発なガールズが動きまわり、二転三転あって、当初からぼんやり思い描いていたこんなコマを描きたいという山場にのぼって、おりゃっと力業でフィニッシュする。有り体に言えば「ドタバタ」ということになるんでしょうけど、もっと力が入っているところは入っているし、抜けているところは抜けているし、「ドタバタ」よりも自然体でプリミティブな何か、強いて言うなら「ドタバタかわいい」とでもいうような何かが衿沢世衣子にはあるような気がします。 『うちのクラスの女子がヤバい』はタイトルからしてとても良く、衿沢世衣子の「ドタバタかわいい」さが全面に出ていると思います。そして、『制服ぬすまれた』これもまずタイトルがとても良い。このタイトルにこの表紙に、我が意を得たりって感じではないですかね。1ページ目をひらいてみれば、いきなり、まさにいきなりですよ、アイドルの衣装のようなフリフリの服を着ているガールがベンチにぽつんと座っている。もはや、ガールズに敢えて動いてもらわなくても、そこにガールズをぽつんと座らせておくだけで、コマがざわざわと躍動してしまう。この突拍子のなさ、これだけでこのマンガの楽しさは保障されたも同然だと思います。『制服ぬすまれた』という幾分かセンセーショナルなタイトルをアイドルのようなフリフリな衣装で軽~く飛び越えてしまう。で、行きずりの女性とフリフリの衣装で制服捜索に入るわけですけど、フリフリの衣装で校内を歩かせるだけでもうコマが躍動してしまうんですね。 あと、とっても好きなセリフがありました! 「私も 今日は自主練するつもりはなかったんです  でも なんか昨日の夜 燃えるボクサーの映画観ちゃって いてもたってもいられなくなって……」

アキンボー

びっくりするくらい名作だった

アキンボー 下吉田本郷
かしこ
かしこ

下吉田本郷先生の代表作といえば「万福児」ですね。このイメージがとても強いので「アキンボー」を手に取った時も、ほのぼのギャグ漫画なのかな〜?と思っていましたが、最終的に私の心の名作10選に選ばせて頂きました。 詳しく説明すると、妻に先立たれて海辺の家に犬と二人で暮らしていた元大工のじーちゃんが人魚の赤ん坊のアキちゃんを拾って育てる話なので、ほのぼの育児ギャグ漫画といっても間違いではないです。小さい頃のアキちゃんのふてぶてしさは万福児の福志にも似ているし、そんなアキちゃんとじーちゃんと犬のフジオのやり取りはめちゃくちゃ面白いです。しかしこの物語は赤ん坊だったアキちゃんが中学生になるまで続きます。じーちゃんにはアキちゃんを人魚として育てるべきか人間の女の子として育てるべきかという葛藤が生まれたり、アキちゃんも成長して外の世界が見てみたくなり学校に行ったら初めてじーちゃん以外の人間との出会いがあったり、色々あるんだよ………。 最後まで読むと、こんなに立派に育てたじーちゃんは偉いし、アキちゃんがいつまでも幸せでいられるように願わずにはいられない。すごくいい漫画なんです。

コウノドリ

完結したと聞いて全部読んだ

コウノドリ 鈴ノ木ユウ
名無し

モラル破綻者ドーン!!正義の産婦人科が正論バーン!!モラル破綻者が「ぐえーやられたー」みたいな話なのかなって思ってたから読んでなかったけど、完結を機に試し読みキャンペーンもやってたし読んでみた。 1話目はインパクト重視ってこともあり、上述のわかりやすい構図を感じたけれど、以降はそんなこともなく、産婦人科医は選択肢を提示できるけど、決めるのは妊婦や旦那だ的な一線を引きつつも、本当にそれでいいのかねって悩む様子がよく見られた。ただ医療ドラマというよりは、家庭側の話も多くヒューマンドラマだなって思った。 まぁ漫画だからそうじゃなきゃ話にならないとはいえ、五体満足で生まれてくるのってすごい大変なんだな…と思った(切迫早産の子が多いから)し、帝王切開めっちゃするやんって思った。 不謹慎は承知の上で、帝王切開がカイザーって呼ばれてるのがそもそもかっこいいし、死戦期帝王切開ってめちゃくちゃかっこいいなって少年漫画脳のわたしは思った。 以下、いつかわたしのライフイベントとして訪れるかはわからないけど、心に刻んだこと。 ・葉酸はサプリで飲もう!食べ物からだとあまり摂取されないぞ! ・麻疹はワクチン打っておこう!お腹の中の赤ちゃんが感染すると、失明したりするぞ! ・マタ旅滅ぶべし!海外で出産になったらカルテはないし医療費とんでもないことになるぞ! ・抱え込む前にケアへ相談だ!