どちらかの家庭が崩壊する漫画

主婦・ユイのほうの義母がリアル

どちらかの家庭が崩壊する漫画 横山了一
ゆゆゆ
ゆゆゆ

孫に会いたい気持ちと、良いことをしている自分に酔うのを並立させちゃうかんじがリアル。 突然理由をつけて行くよ連絡に始まり、好みでない服を渡されるとか、子どもの面倒をみるといって古い知識で対応されるとか。 さらに、ユイの夫はダメ男過ぎて、読んでいて心がしんでしまう。なんでこいつと結婚した。 とはいえ、対照となる毒山家がイクメンお父さんとなっているのは、働いてないからだろうなと思った。 二人でみているから余裕がある。 お金はないけど。 赤ちゃんは大人二人で1から10まで面倒をみないと、とても大変。 そして毒山家義母は、嫁に好みでない、サイズも不確かな服じゃなく現金を手渡してくれる。 よくわかっている。 現金。 商品券じゃなく、現金。 取っておけば、子どもが成長したときの資金になり、使えば今助かる。 封筒にすら入ってないのが生々しいけど、そんなのは些末に感じるほど、いらない服や夫婦で決めたかったアレヤコレヤの押し付け(知人談)と比べると、現金は嬉しい。 作中の義母ふたりは、自分が当時必要だったものを与えているだけかもしれない。 それなのに差が生まれるのは、結婚相手の親は選ばなくても身内になってしまう他人、という距離感を忘れているからと思える。 夫婦の関係も危ういのに、義母が更に危うくしてくる。 どちらも崩壊しそうな、危ういところに立っている御夫婦のお話。

うちの母は今日も大安

素敵で前向きで偉大なお母様 #1巻応援

うちの母は今日も大安 ありま
兎来栄寿
兎来栄寿

私がありまさんを認識したのは、Twitterで公開されていたこの本のChapter1 第1話にある 「アメリカで事故ってハッピーバースデーを歌ったうちの母」 でした。 アメリカのスーパーの駐車場でバックしていたら、ショートカットしようとしたおじさんと衝突してしまい烈火の如く怒鳴り散らされたものの、「It′s my birthday」というフレーズを聴き取った筆者の母君が店員さんたちと一緒にバースデーソングを歌うと途端に機嫌が良くなり謝ってくれたというほっこりエピソードです。 本書は、そんな素敵な母君様の心温まるエピソードや人生を生きる上で大切にしたいことが詰まった1冊です。 夫の仕事の都合で行った慣れないアメリカで、言葉が解らないときにどうやって英語を覚えていったのか。 介護でしんどくなってしまったときにどう対処したのか。 子どもが元気がなくて学校を休んだときにはどうしたか。 さまざまな、身近にあるシチュエーションで輝く母君の言動に読んでいて心が解れ前向きになっていきます。 バイクの免許を取ったりフルマラソンを走ったり、いくつになっても新しいことに挑戦し続ける気概や、実家での本格的な擬似縁日開催を全力で楽しむ様子を見ていると「人生の達人」と呼ぶのが相応しい気がします。 私もどちらかというと全力で物事を楽しむ方で、そこに一緒になって楽しんでくれる人が集まってくれることが多くて感謝しきりなのですが、母君様には似た気質を感じて共感します。 他方で、 「好きなものをちゃんと持っておく」 「自分の人生を生きなきゃ」 「そもそも人に謝罪と感謝を求めてはなりません」 といった言葉は、心に留め置いて大事にしておきたいものです。 ありまさんが母君様の言葉や存在によってどれだけ助けられ感謝しているかも伝わってくる内容でした。 心を前向きに持っていきたい方にお薦めです。これを読んで、人生を大安にしていきましょう。

東遊高校の日々

変人奇人たくさんの高校コメディ #1巻応援

東遊高校の日々 ★薄荷堂★
兎来栄寿
兎来栄寿

みなさんの学校では先生はどんなあだ名で呼ばれていましたか? 私の学校の先生方は「極道」、「ソルジャークラス1st」、「化身」(いずれも女性の先生)などと呼ばれ親しまれていました。そんな懐かしい記憶を呼び起こしてくれたのが、この愉快な4コママンガでした。 生徒も先生もキャラがとにかく濃い東遊高校を舞台に繰り広げられる学園コメディで、ギャグ色強めのラブコメ成分も多めに含まれています。 バレエをやっていたものの背が伸び過ぎてモデルをやっており、同じ事務所に所属する超美形の恋人もいるものの、独特の感性を持った美人ゾーィ。 人間観察が趣味で、茶道部に入って「頂上(てっぺん)」を取ろうとしている、自分の容姿に自信がありすぎる鈴音。 身長は低いもののラグビー部で活躍する、優しいけど鈍い、いつも笑顔でスマイル王子と呼ばれている鍛冶。 中学時代から鍛冶を慕いストーカー化しているが自覚に乏しい怜。 そんな怜への気持ちに徐々に自覚的になっていく、この作品の中では常識人寄りで清涼剤のような存在の小川。 おとなしいメガネ文学少女的な外見で、バイオレンスアクション小説を書いている青山さん。 10年間「とび森」をやりこみ続け公共事業をコンプリートしている斉木。 ミステリアスな美人だが、目を開けたまま眠ることができ、鍵開けが得意で、男子ふたりのかけあいに妄想を昂らせる五十嵐さん。 他にも、書ききれないほどたくさんの個性的なキャラクターたちが登場します。 教師のあだ名も「アンドロイド」、「板長」、「アガペー」など特徴的で、それだけで日々の賑やかさが伝わってきます。倫理教師のあだ名がアガペーになるところ、好きです。 それぞれのキャラクターたちが複雑に関係し合って織りなされる群像劇は実際の学校生活さながらで、その中で萌芽を見せるいくつかのラブの部分も見どころとなっています。ラブらないところも、それはそれでまた良く。 私はこういった耽美な絵柄で描かれるエキセントリックなギャグが大好きです。同じ趣味の方、変な人間が好きな方にオススメです。

どちらかの家庭が崩壊する漫画

どちらの家族が幸せか? #1巻応援

どちらかの家庭が崩壊する漫画 横山了一
兎来栄寿
兎来栄寿

薬師寺家と毒山家。幼い子が生まれて間もないふたつの家族の話が、同時並行的に描かれていく物語です。 一流企業に勤めるエリートでイケメンの旦那・シュウがいる薬師寺家に対して、ギャンブルに明け暮れろくに仕事もしてないスジモノのような外見の旦那・ゴンがいる毒山家。 そんな対照的な両家ですが、妻の薬師寺ユイと毒山海(マリン)はお互いにこれまでいなかった初めてのママ友となり交流を深めていきます。 ただ、最初の3ページと8〜9ページを見た時ではかなり両家への印象が変わっていきます。 更に、この物語のキーパーソンとなるのが姑。シュウの母親の聡子はシングルマザーであったこともあり、親子共に絆が強くユイや子供に対しても過干渉してきます。子育て中に事前連絡なしに何度も家に突然来られるのは、妻の立場だときついですよね。 一方で、ゴンの母親である虎乃はスナックを経営しておりざっくばらんな性格で海とも非常に気質が合っています。パチスロで買った現生を直接渡してくるなど生々しさはありますが、豪気で優しく温かい性格を見せます。 一見、完璧な家庭に見える薬師寺家の内部の綻び。逆にメチャクチャに見えながら互いを思い遣る心に溢れている毒山家。幸せとは何か、本当に大事なものは何かということを考えさせられます。 シュウの母親はいわゆる毒姑ではありますが、番外編では彼女もまた酷い夫と姑によって苦しんだ経験があることが仄めかされ、最悪の負の連鎖を感じさせます。自分が受けた痛みを違う形で他人に与えるのではなく、痛みを知っているからこそ労わる心を持って負の連鎖を断ち切り子供たちが笑顔で暮らせる世界にしていきたいところです。 育児、モラハラ、詐欺、不倫などに加えてSNSで縦読みを使ったにおわせ投稿など「今」感のある要素もふんだんに取り入れられており、実写ドラマ化などもされていきそうです。 なお、 「もっと善意の押し付けがユイを追い詰める感じにした方がリアルでいい」 というアドバイスをした横山了一さんの奥様は本作の陰のMVPだと思います。

うちらはマブダチ

自分と友達はどうだったかなと思い出して浸ってしまう

うちらはマブダチ やまもとりえ
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

やまもとりえ先生の、大学時代から現在までの少し変わった友人たちとの思い出の日々を描いたコミックエッセイ。 同じ内容をポッドキャストでも話してます。 https://open.spotify.com/episode/5WjmBjW1p7GmQXsDWxLJUW?si=d199b921940442c2 読み始めてすぐ「いつも谷間が見えている友人Yちゃん」というバズった投稿を見たことがあったのを思い出ました。 https://twitter.com/yamamotorie/status/1595362304576868352 作者さんが「大好きで仲が良い私の素敵な友達をぜひ知ってほしい」と紹介してくれてるような形だからこそ、読んでいると自分の友達もぜひ紹介させてくださいよ、という気分になってきて楽しかったです。 自分の学生時代の友人たちとの思い出がいろいろよみがえってきました。 エッセイなので、フィクションのように特別ド派手なドラマがあるわけじゃない、でも等身大の青春劇がそこにある。それがいいんですよね。 美大ならではのクリエイティブな話もあるけど、基本的には普遍的な友達の話。 そして、なんといっても一冊としての構成が素敵でした。 困ったときに友人が助けてくれた最高の人生だったんだなと。そしてこれからもそれが続くと思うと最高です。 どの友人のエピソードも面白くて、その個別の友人紹介の話があったからこそ、最後のエピソードに集約されて際立って輝いて見えて、感動しました。 同時に、男同士の友人グループだともしかしたらこうはならないだろうなっていう羨ましさもありました。男同士は楽しさを共有はしても弱みはあまり見せないこともあるから。 読んでるときの感覚としては、友達の結婚式の新婦側の仲良したちでの出し物とか、学生時代の写真のスライドショーとか見てどういうふうに仲良かったのかなーと想像したときの、最高に楽しい青春の「中身」をしっかり見せてもらった気分でした。 共感ポイントとしては、「自分たちの用語辞典作ったな~!」って思いました。 小さい界隈だけで通じる用語・共通言語ができて集団としての絆が熟成されていく感あって楽しいんですよね。秘密の合言葉みたいで。 ふわっと思い出した自分のエピソード ・Nくん、高校で誰とも全くしゃべったことなくて会話はいつも筆談していたらしく、大学で僕が普通にNくんと話してるのを見られて「どうやってあいつの心開いたんだ!?」って驚かれたことがある。そのNくんは窓が割れたままの部屋にずっと住んでて、いつもお菓子でお腹いっぱいにしてた。 ・Mくん、子供がどうやってできるか知らなくて、植物みたいに受粉するものだと思って通学で乗る満員電車に毎朝めちゃくちゃ緊張してた。その反動か、気づいたらテニスサークルに入って遊びまくってた。 などなど。 一気に読むのもったいないので、ちょびちょび1日2ページずつとか少しずつ読むのもいいかも。とはいえラストはどうやっても一気に読んでしまうはず。

娘がいじめをしていました

めちゃくちゃ考えさせられた

娘がいじめをしていました しろやぎ秋吾
六文銭
六文銭

自分の子供がいじめられた・・・という話は、よくありますが本作は、いじめた側の話。 というか、いじめ加害者・被害者双方の親がW主人公といっていいような話。 それぞれの視点で物語がすすむので、双方の状況や言い分がわかるのが、本作の特徴です。 最初は当事者同士で物語がすすむのですが、いじめの様子が動画に残されておりSNSで拡散され、名無しの正義感によって炎上。 いじめた側も、社会的に制裁をうけてしまう。 この一連の流れが今っぽくて、めちゃくちゃ考えさせられました。 自分自身、いじめた人間は、いじめられた人間と同じ苦しみを味わうべき論の人間だったのですが、実際、この様子を目の当たりにすると、びっくりするほどこれじゃない感がすごかったんですね。 目的が達成されたとはいえ、なんとも言えない後味の悪さが残るんです。 この後味の悪さってなんだろうって考えているのですが、結局、当事者間で何も解決していないことが原因なんだと思いました。 いじめた側が、そりゃもうゲッソリするほどいじめたことを後悔・反省しても、それが、こういうSNSで炎上して身バレして不特定多数の人間におもちゃにされるやり方だったのが、どうなんだろう?ってことなんですよね。 こんな再現性のない無責任なやり方ではなく、社会システムとして取り組んで欲しいとさえ思いました。 いじめも立派な犯罪として、隔離して、少年院みたいなところでブチこんで反省させるとかでもいいです。 また、いじめは100%いじめた方が悪いのですが、いじめられた側も一定期間で謝罪や反省を受け入れるようなこともして欲しいと思った。 恨み続けても、人生の無駄で何も解決しないことに気づかせて欲しい。 とはいえ、これは自分がいじめられたことがない人間なだけなので、実際、いじめ経験者は加害者がたとえSNSの不特定多数の人間からでも制裁をうけている様子に「ざまぁみろ」とか思うのだろうか。 そういう人にとって、モヤスカな内容なのかもしれません。 などと、めちゃくちゃ考えさせられる内容でした。