少年サンデーの感想・レビュー482件<<1314151617>>「プロペラオペラ」良すぎたので一気に読み返したくなったとある飛空士への恋歌 犬村小六 森沢晴行 こじまたけしmampuku慟哭に満ちた重々しい第1話からは想像もつかないような切なく、長大で壮大な物語へと発展していきます。 画力や構成ともにコミカライズの質はめちゃくちゃ高いですが、そもそもコミック4冊に収まるような話ではないので、気に入った方はぜひ小説を。。 シリーズでは「追憶」とこの「恋歌」のみ漫画化・アニメ化されていますが、他も余すところなく名作なのでメディアミックス化して欲しい。犬村先生最新作「プロペラオペラ」も「『恋と空戦』の犬村小六ここにあり」って感じで素晴らしいのでこれもどうかラストはやはりスポーツ漫画だなとうなずけるB・B 石渡治マウナケアドラマ性重視のスポーツ漫画って、クライマックスに向けた流れの作り方が大変だよな、と思います。現実を超えないとどこかで見た話になるし、かといってひねりすぎると現実感がぶっとんで興ざめしてしまうし。少し前ならドーハの悲劇、長野五輪ジャンプ団体。最近だと木村コーチ追悼試合で出た、同級生・谷の逆転満塁弾。これらまさに筋書きのないドラマに対して、生半可な脚色では太刀打ちできないよな、と。で、この作品は何をやったかというと、徹底的に焦らしたわけです。最初はフツーのボクシング漫画進行と思っていたら、主人公とライバルの対決が直前でお流れ。そこからが波乱の展開で地下に潜ったり、戦場に赴いたりとなかなか”宿命の対決”にたどり着かない。他作でもそうですが作者はこの寸止めの手法がうまくて、まんまと乗せられてしまう。焦らされた分の数々のドラマが、決着に向かって終盤にどんどん噛み合っていくのが心地いい。ずいぶん回り道をしたけど、ラストはやはりスポーツ漫画だなとうなずける、カタルシスがたっぷりです。宇宙飛行士やロケットに憧れる時期パスポート・ブルー 石渡治マウナケア子供のころ、宇宙に憧れる時期ってあると思います。この作品は、そんな少年の日の想いを存分に満足させてくれるでしょう。宇宙飛行士を目指す少年の真上直進が、宇宙に飛び出すまでの成長物語です。専門的な話になりがちなテーマですが、作者の石渡治は漫画として感情移入させるツボをホントに心得ていて、その成長過程において、心にグッとくるエピソードが満載。例えば直進が初めてロケットに興味を持つくだりでは、部品工場の職人がエンジン製造に関わっていたというネタを引っ張ってきたり、同じ想いを宇宙に寄せた子供たちが大人になってもそれぞれの分野で直進の夢に関わったり。ハラハラドキドキそしてじらされカタルシス…と物語の展開とそれに伴う人物の動かし方が絶妙。今やどうにもならない身になった自分ですが、思わず夜空を見上げて感慨にふけりたくなります。死ぬまでに火星への有人飛行を見てみたくなりました。メグちゃんがめちゃくちゃ可愛い天使な小生意気 西森博之名無しメグちゃんがめちゃくちゃ可愛い…このマンガの魅力の大半はソコだと思う。天使みたいな美少女が少年のようなピュアなハートを持っているアンバランスさがたまらん。数いるラブコメヒロインの中でもかなり可愛くないか?脇役達もみんないいキャラしてるんだけど、最初から「メグちゃんが選ぶのはどうせ主人公の源造だろ…オレたちが選ばれないことなんて分かってるんだ…!」と言っちゃってるのが面白かった。 これは是非単行本で読んでほしい作品リサの食べられない食卓 黒郷ほとりsogor25表紙に描かれている主人公・リサはお嬢様。彼女が住み込みで働く男・冬真のためにオムライスを作るが、それがどう見ても真っ黒。どうやら味見もしてないらしい。当然の如くクソ不味いわけだが、彼女はそんなことお構いなしに「今度は私の番」と冬真の首筋に噛みつき血を啜る。 そう、彼女は吸血鬼。だから『リサの"食べられない"食卓』なのである。 …というのが、冒頭10ページの内容。試し読みで1話を読んだ私は「なるほど、料理の味が分からない吸血鬼のお嬢様と彼女に捕まってしまった男とのメシマズ料理コメディなんだな」と察知する。 しかし、単行本を購入して2話以降を読み進めると、どうも様相が変わってくる。リサは吸血鬼であり、料理が下手。そのベースは変わらないのだが、話はどんどん予想外の方向に転がってゆく。そして1巻の最後になると、話は思ってもみないところに着地を決める。 ただ、それまでの過程で紆余曲折があったために予想を超えているように見えたけど、改めて1話を読み返してみると実は1話のオチから大きくは離れてない着地点に辿り着いていたことに気付かされる。 少なくとも1話の試し読みからは想像できない作品になっているのは間違いないので、試し読みで気になったひともそうでない人も、是非この1巻通しての展開のダイナミズムを感じてみてほしい。 1巻まで読了。最近のコナンは殺人事件をゲーム感覚で楽しんでるよな名探偵コナン 青山剛昌名無し人が死んでるというのに… いつからこんな子になっちゃったんだろうひたむきに野球に打ちこむ姿ヒットエンドラン あや秀夫マウナケアプロ野球の人気凋落が叫ばれて久しいですが、あれはエンタメとしての職業野球がダメになってきているだけで、やっぱり野球は日本人の生活に根ざしたスポーツだと思います。高校野球の人気は不動だし、学校の授業や部活でもまだまだ廃れてはいないはず。漫画だってまだまだ少年誌にはいくつも連載されているのですから。で、少年野球漫画がなぜ廃れないかといえば、ひたむきに打ちこむ姿に青春を見るからではないでしょうか。この作品もそうです。のっけから廃部の危機にある稲葉中野球部。試合をすれば1点もとれずにコールド負けがあたりまえのへたっぴ集団が最後の試合に臨む。勝てなくてもいいからせめて笑われない試合をしようと思っても、やはり下手は下手。けれど泥まみれになりながら歯を食いしばってうまくなろうとする彼らの姿がここにはあります。この辺の感覚は自分も幼いころに味わったもの。ひたすらにひとつのことに没頭できる時代、うまくなることだけを考えた少年の日を描ききった良作だと思います。 ハードな伝奇アクション!鬼切丸 楠桂マウナケア大橋薫の双子の妹・楠桂。姉とは違い「サンデー」系での活躍が印象深く、その中でも代表作といえばこの作品。鬼の屍から生まれた純血の鬼が鬼を斬れば人間になれると信じ、唯一鬼を斬ることのできる刀・鬼切丸を手に人の世にはびこる鬼を斬るまくる、ハードな伝奇アクションです。描かれた当時は小説でも漫画でも伝奇作品が流行っていたころで、骨太な作品が多い中、女性漫画家の少年誌連載作品ということで気に入って読んでいたと記憶しています。鬼に憑かれた人間の救いのない結末、人間になるため鬼が同族の鬼を斬る終わらない矛盾。これらをうまく使って哀しい人間ドラマを作る、女性ならではの目線が当時印象的でした。『八神くんの家庭の事情』をはじめ、コメディーも得意とする著者ですが、私としては伝奇的な作品のほうが好み。漫画家としての本質も絶対こっち側にある、という想いもこめてこの作品を推したいです。たまに読みたくなる安定した面白さの少年漫画結界師 田辺イエロウ名無し王道少年漫画が読みたい、サンデーっぽいの! と思って読むのですが何回最初っから読んでても面白い。 まずこの結界を作って攻撃、防御、封印までやるってのすごいですよね。 ただ四角を作って、というモーションで少年漫画の戦闘シーンとしては地味なのではと思ってしまうところを描写、表現力で補ってしまう。 妖もでてくるし、組織の陰謀みたいなものも見え隠れし始めるし少年の理想が詰まってて長編なのに飽きずに読み続けられます。 多分難しいところとか、読みやすいところとか両方詰まってるので大人でも子供でも読めるものではないかと。 烏森を守る、結界師という仕事、幼馴染、要素も設定もすごく練られているのに読み手が迷わず読みやすいように導いてくれる。 しかも主人公の良守に知らず知らずのうちに感情移入して好きになってしまう。 こういう安定した少年漫画読むとすごく幸福感覚えます。 家の本棚に1セット揃ってて欲しい漫画。 あなたは時給250円で働けますか?GS美神 極楽大作戦!! 椎名高志名無しあなたは時給250円で働けますか? 多くの人が無理だと言うでしょう。僕だって嫌です。しかし、『GS美神 極楽大作戦!!』の横島忠夫は、雇い主がもう辛坊たまらんいい女だったからという邪な理由だけで、この薄給バイトに命をかけます。かける事ができる男です。 『GS美神 極楽大作戦!!』は、美人で優秀で傲慢で強欲でボディコン(時代をうかがえる単語です)なゴーストスイーパー・美神玲子が笑いながら悪霊をしばき倒す、一言でいえばそんなマンガです。主人公は美神玲子ですが、主な読者であった中高生男子が感情移入していたのは、アルバイト・横島忠夫の方でした。 前述のように、横島君は労働基準法に真っ向から違反した驚異の時給250円(美神さん自身は大金持ち。大金持ちこそケチなものです)で赤貧生活を送っています。何度か「このままでは生活できない」と考えますが、美神さんの色香に迷ってやめることができない。下半身に非常に忠実です。そんな野獣のような横島君は、(人間として)汚い、いやしい、根性無し(エロは除く)の3拍子そろったダメ人間。プライドなんてものはとうになくし、もはや失うもののない彼は、それはもう、すがすがしいまでの本音を吐きだします。(師匠のようなものに、自分の力を信じろと言われて)「この世に自分ほど信じられんものがほかにあるかあああ」。(完全に追い詰められた状態で)「死ぬ前に一度全裸美女で満員の日本武道館でもみくちゃにされながら「ジョニー・B・グッド」を歌ってみたかったーーー」。中高生の心の底を代弁してくれた横島忠夫も、ゆっくりと成長していきます。ダメな部分があるからこそ、物語のだれよりも立派に成長する横島忠夫の姿に、“共感”から“憧れ”を感じるように変わっていくのです。 究極の理想の暮らしがここにあるねこと私とドイッチュラント ながらりょうこnyaeおっとり系女子のトーコちゃん(おそらく作家かライター)は日本からドイツに移り住んでまだ間もない。 相棒は、人間と同じように2本足で歩きおしゃべりする猫、むぎくん。 日本との違いを楽しみながら、食事や遊びを工夫して暮らす様子がエッセイ風にほのぼの描かれてます。食いしん坊のむぎくんのためにドイツならではの食材を使っておやつやごはんを工夫して手作りしたり、おにぎりを握ってピクニックしたり、青空市へ行ってチーズや野菜、パンを買ったり、クリスマスマーケットへ行ったり、ほとんどの店が閉まる年末年始をゆっくり過ごしたり… こんな生き方ができたら死んでもいい(いや生きる)というほどに理想的な暮らしがそこにありました。 一人ぼっちだとたぶん心細い。人間のパートナーだとよほど気の合う相手じゃないと無理。 だからむぎくんの、動物なんだけどコミュニケーションがとれる、だけどお金を稼げないから自分が養ってあげないといけないという、パートナーとペットの間くらいの関係性がベスト。 はぁ、現実逃避………八極拳=最強の中国拳法拳児 藤原芳秀 松田隆智名無しブルース・リー派かジャッキー・チェン派かといわれれば、世代的に僕はジャッキー派でした。日曜洋画劇場で放送された『酔拳』を録画し、繰り返し見ながらその技を真似したものです。今でも宴会芸くらいには使える腕前と自負しております。この我流中国拳法演舞は、それからも映画(『イップ・マン』)やゲーム(『鉄拳』)を参考にレパートリーを増やしてきましたが、もっとも多く取り入れたのは『拳児』からです。 『拳児』は八極拳と出会った剛拳児の成長の物語です。剛拳児は間違っていないと思えば、大人にでも立ち向かうことができる正義感あふれる少年です。時として母や先生からは暴力的と思われていますが、祖父である剛侠太郎はその芯の強さ、心根が真っ直ぐなことを見抜き、八極拳の手ほどきをするのです。。 祖父から八極拳を学びながら過ごしていたある日、祖父・ が突如中国へ旅立ってしまいます。かつて、兵隊として中国へ出征していた侠太郎は瀕死の怪我を負い、そこで地元の人間に助けられます。敵国の人間を、厭うことなく世話を焼く村人と、侠太郎は親交を結び、村に伝わる八極拳を学ぶことになります。彼らに恩を返すために再び中国へと旅立っていったのです。 そのまま音信を絶ち、何年も帰ってこない侠太郎を探すために、高校生となった拳児が中国に旅立つのが第二部の始まり。 修行を重ねてきた八極拳を頼りに、そして、数多くの人たちの親身な助けにより、拳児は様々な中国拳法を出会っていくのです。 行く先々では、次々と師匠と呼ぶべき人間が現れ、暴力や復讐に溺れない正しい道へと拳児を導いていきます。そんな拳児の対極に位置するのがライバルのトニー・譚。拳児と戦い敗北を喫してしまったトニー・譚は、拳児を倒すために最強の武術を求め続けます…。 祖父を探し出し、トニー・譚とも決着を付けた拳児は、八極拳を通じてなにを見つけるのか。師匠に導かれ、自身の闇と対決して、悟りに至る…『ゲド戦記』にも通じますし十牛図に描かれるような悟りとも言えるものが、ここには描かれているのです。そう考えるととんでもなくスケールのでかい哲学漫画ともいえるのです。 それはそれとして、日本における八極拳=最強の中国拳法の方程式を作ったのは『拳児』ではないかと疑っておりますが、どうなのでしょうか。悩める最強の男お茶にごす。 西森博之名無し「狩る側と狩られる側、キミはどっち」と聞かれれば、僕は当然狩られる側なわけです。生物は抑圧されることであらたな進化の可能性を得ると言われていますが、僕も中高生のころにヤンキーに対するステルス性能を獲得し、幸いなことにいままで絡まれたことはありません(かわりに、精神が不安定な人と野生動物にはよく絡まれます)。そんな僕ですから、ヤンキー漫画は好きではありません。ヤンキー漫画に描かれている友情は仲間内のものだけで、""それ以外”には向けられないからです。""それ以外”な僕がどうして感情移入できましょうか(いやできない)。 今回紹介する『お茶にごす。』はヤンキーが主人公のマンガです。でもヤンキー漫画ではありません。そこに描かれているのは「優しさとはなにか」に葛藤するひとりの青年です。 『お茶にごす。』の主人公・船橋雅矢は恐ろしい人相と人智を超えた強さで、近隣の不良から”悪魔まークン”と恐れられる男です。そんな彼の望みは『平和な生活を送りたい』ということ。しかし、その凶悪な人相に寄ってくるクズを返り討ちにしているうちに、いつのまにか修羅の道へと突き進んでしまったのです。 高校入学をきっかけにほのぼのスクールライフを送ろうと思ったまークンは、部活に入ろうと思うものの、彼の悪評は広まっており誰も目も合わせてくれません。そんなとき、茶道部の部長・姉崎さんが、誰もが恐れるまークンを勧誘したのです!公平に接してくれた姉崎さんに心打たれたまークンは茶道部に入部し、新たな最凶伝説を作っていくのです。 そんなまークンに「アンタの顔が怖いから」といつだってストレートにツッコミをいれる女の子が夏帆。ちょっとばかりガサツで活発な夏帆は、どうすれば優しさを表せられるのか、まークンと同じように悩み、同じように部長にあこがれています。 しかし、まークンが憧れる部長も、特別な人間ではありません。まークンを勧誘した時も膝が震えるほどビビっていたのです。彼女は、人に優しくすることに躊躇しないと決めただけの、普通の人間なのです。 普通なのに優しい部長に憧れた、普通になりたいまークンは、さまさまざな経験から段々と他人に優しくできるようなります。「もしかしたら、自分は人にやさしくできるかもしれない」そう思った時、同時にあることに気が付いてしまいます。それは「災いを呼びこむ自分は、いるだけで他人を傷つけてしまう」ということ。自分が他人に誤解されるのはかまわなくても、周囲の人にまで迷惑はかけられない。 部長を大事に思うからこそ、近づかないという選択をしたまークンを、夏帆は川へ蹴り落とします。そして、彼の人生を変える一言を発するのです。 以前紹介した『道士郎でござる』の道士郎とは違う、悩める最強の男の小さな一歩がとても心地よいのです。全然爽やかな風ではないのに、爽やかな気持ちになれる、不思議なマンガなのです。 それにしても、西森博之先生が描く人間のクズは本当に非道でドキドキしますね! 舞妓さんとまかない食べたい舞妓さんちのまかないさん 小山愛子名無したまたま読んだ話が舞妓さんがお客さんにご飯を注文してもらう回。 お腹が空いても動き回らねばならないお仕事。 食べたい時にご飯食べれないのね… 大変そうだけど漫画の世界の舞妓さんは頑張り屋で屁理屈一個漏らさない。 癒されるし、そんな舞妓さんが飯食ってる様を見るだけで多幸感に包まれます行動理念は武士道道士郎でござる 西森博之名無し「力なき正義は無力なり、正義なき力は暴力なり」という言葉があります。社会的にも肉体的にも力のない僕には全く関係のない言葉ですが、『ザ・ムーン』や『DEATH NOTE』をはじめ、正義を問いかける作品は強くココロに残っています。その中でも、もっと身近な正義を描く『道士郎でござる!』が、僕は大好きなのです。 物語は、12年前にアメリカに渡った桐柳道士郎が、なぜか武士になって日本に帰ってくるところからはじまります。ふと、現代に蘇った憲兵を描く『ケンペーくん』(ならやたかし)を思い出しましたが、道士郎とは全く関係ありません(これもある意味、正義を問いかける作品であります)。道士郎はチートといえるほど強大な力を持つ男です。そして、行動理念は武士道。武士道的観点からクズだと思えば、ヤンキーだろうがヤクザだろうが問答無用で叩き潰します。道士郎が殴ればヤンキーは空中を回転しながら飛んでいき、復讐など考えられないほどのトラウマを植え付けられます。身近にある悪に天誅を下すのが道士郎なのです。 向かう所敵なしの道士郎の代わりに、物語の主役となっていくのが、道士郎に目をつけられ、殿にされてしまった健助です。健助は、小心者で、常識的で、自身に危険のない範囲で優しい、そんな普通の少年です。道士郎に関わったことで、ちょっとした優しさを発揮してしまったがゆえに、どんどん道を踏み外し、高校は退学し、転校した底辺校では級長になってしまい、挙句の果てに、ヤクザと対決するはめになります。 はじめのうちは、健助が巻き込まれたトラブルを道士郎とが解決するという、「水戸黄門」か「いけ、ピカチュウ!」のような展開もあります。しかし強大すぎる道士郎の力と見境のない正義感は、およそ制御できるものではなく、放っておけば無限にトラブルが拡大してしまうのです。社会から完全にはみ出した道士郎という存在に振り回されることなく一般生活を営むために、健助は自分の力で解決を目指すようになっていくのです。 健助はちっぽけな人間でしたが、道士郎によって追い詰められることで身につけたクソ度胸で、強大な敵に立ち向かうことができるようになります。どんな敵でも必ず倒す道士郎と、弱くて殴られても決して折れない健助の姿に、周囲のクズたちも少しずつ変わっていくのです。あの二人がいるから俺は頑張れる――そうやってグズでザコだったモブキャラが頑張る姿には心動かないはずがないのです。 とてつもなく笑えて、グズの所業に心から頭にきて、成長するキャラクターたちに感動する……全8巻の短い物語の中で、あらゆる方向に心が揺さぶられる、王道の名作が『道士郎でござる』なのです。3馬鹿トリオこそ真の主人公ガンバ! Fly high 菊田洋之 森末慎二名無しスポーツで汗を流す青春って妬ましいですね。僕が一人きりの部屋で不健康な汗をかいていたとき、グランドや体育館で健康的な汗をかいていた彼らは、きっと美人マネージャーと幸せな関係になっていったのでしょう。僕は2次元な彼女と不適切な関係になっていたというのに……。ああ妬ましい。今回紹介する『ガンバ! Fly high』も“スポーツ”と“ねたみ”というキーワードは欠かせません。「オリンピックで金メダルをとりたい」と、逆立ちもできない運動音痴の藤巻駿が飛び込んだのは、県最弱の平成学園体操部。そこには、一芸だけは秀でた三馬鹿トリオの先輩、内田、真田、東がいた。藤巻のひたむきな姿に3人も影響されて――。そんなプロローグから始まる『ガンバ~』の主人公・藤巻駿は典型的な少年漫画の主人公です。はじめはどんくさいけれど、眠った大きな才能をもち、努力を厭わない。あっと言う間に日本代表になり、世界初のオリジナル技を発明するまでになります。しかしこうなると、なんとも感情移入できなっなくなってしまいます。「努力とかいいながらも、結局“天才”の物語かよ」と。ああ妬ましい。しかし、『ガンバ~』はひとあじ違う。後半になると、完璧超人となった藤巻から、藤巻に追いこされてしまった3馬鹿トリオにフォーカスが移るのです。身近にいる天才・藤巻が世界の舞台で活躍するのをみて、感動しながらも焦りを感じた内田と真田は、自分なりの努力を重ねます。しかし、どうしても、どうしても、藤巻の背に追いつくことができない。藤巻に逆立ちを教えた内田は言います。 「俺はあいつに負けたくねえのよ! 体操の技術がどうとか得点がどうとかじゃなく、一生懸命ガンバるってことにおいて!」 決定的に実力の違う天才の背中を見ながらも、そんな気持ちをストレートに吐きだし踏ん張り続ける3馬鹿トリオこそ、読者が感情移入に足る、真の主人公だと思えてならないのです。これは、ひとつの【凡人萌え】マンガの極みと言えるではないでしょうか。そうジメジメした部屋の中で思うのです。 優希の巨乳BE BLUES!~青になれ~ 田中モトユキ名無し悩んでばかりいるコンニャク主人公が跋扈する(大分減ってきたような気がしますが)『BE BLUES!』の主人公・一条龍は、かなりメンタルの強い主人公です。わかる人にだけわかればいい例えでいうと、『無限のリヴァイアス』の相葉昴治並にメンタルが強いのです。 物語は、一条龍の小学校時代からはじまります。一条龍は小学の頃から話題の選手です。個人技から戦術眼、そしてメンタルまでふくめて、観客だけでなく敵チームまで魅了するようなスタープレイヤーです。「オレは計画をやりとげるタイプだ」と、将来ワールドカップに出場するまでの計画をしっかりたて、そこに向かって邁進していくはずだったのですが…龍は親友の命を守るために大怪我を負ってしまいます。サッカーどころか日常生活も危ぶまれる龍。誰もが、サッカー選手としての一条龍は終わったと、思っているなか、当の本人だけは全くあきらめていないのです。そこから2年の月日を経て、彼はサッカーに復帰します。友人、家族はサッカーを龍がプレイできるだけで感動しますが、かつての龍を知る人間は、変わり果てたその姿に落胆を隠しきれません。 声高に泣きもわめきもせず、苦しみは全て腹に込め、目的にひたむきに向かう龍は、それはもうかっこいいのです。事故で失ってしまったものはなにか?その時間で得たものはなにか?みんなが絶望している間も、龍だけは計画の達成を目指し、できる努力を重ねていた。復帰してそれが花開いていくストーリー展開は非常に盛り上がっていきます。登場人物誰も彼もが泣くし、読んでる私も泣けてくる。そんな展開です。 諦めないといえば、たしかに、梶原一騎作品の主人公たちも不屈な人たちでした。けれど彼らの不屈さって、破滅型というか、自己陶酔というか…目標に向うよりも、美しく散ることに焦点があるように思えます。陶酔もなく増長もせず、まっすぐに生きる一条龍の主人公像はかなカッコイイのです。 と、十分に作品の素晴らしさを説明したところで、ここからはヒロインの可愛らしさを述べますね。この作品には巨乳幼なじみの優希と金髪ハーフのアンナという2人のヒロインが出てくるのですが、とにかく可愛い。王道ツンデレなアンナもよいのですが、龍をずーっと支え続ける優希は本当によいヒロインです。そして巨乳可愛い! 巨乳な女の子ってボタンで止めたシャツに隙間できちゃうじゃないですか(僕も巨乳なのでわかります)。そういった巨乳ならではの服装のたるみを、あらゆるシーンでさしこみ、優希の巨乳を強調する田中モトユキ先生は偉大だと思います!強烈にマニアックな一発ネタの数々神聖モテモテ王国 ながいけん名無しこれは、ナオンと彼らだけの蜜あふるる約束の地・モテモテ王国の建国を目指す、自称謎の宇宙人ファーザー(23の秘密がある)とオンナスキー(メガネ)の物語です。舞台となるモテモテ王国は普通のアパートの一室。ちなみに王権は神から授けられたもの(王権神授説)なので、その正統性に疑問を挟む余地はありません。ファーザーとオンナスキーは、何者か(悪の組織や犬やトーマス)の陰謀にもめげず、とにかく女にもてようと、バンド・フィンガーツーを結成したり、お笑いコンビ・ザビ山ドズル、ガルマを結成したり、宮廷画家・宮廷ハニーになったり、ユカイツーカイ俗物くんになったりする、いろいろアレな8ページギャグマンガなのです。 はっきりいって、何をいってるかわからない説明かもしれませんが、あらゆる意味で伝説の作品であることは、わかっていただけたことでしょう。私は、この作品の言葉の感覚が大好きです。一つ一つの言葉に宇宙的な何か…イデが込められているのです。 第一話「別に死んでもいい奴ら」(タイトルからすでに最高だ)の冒頭からキレキレです。 「オンナスキー… わしらがなぜもてないかというと…」「何かの陰謀じゃよ!!」セリフだけではわからないと思いますが、この間がたまらなくステキなのです。絶妙な間と、強烈なセンテンス、そして歴史、特撮、ジョジョ、三国志といった、あらゆるマニアックなネタ…それがうまく合わさっているのです。 「ご冗談でしょう、ファインマンさん」というネタはまだいいのです。「宇宙の棋士テッカマン永世名人」とは一体なんでしょうか?しかも持ち駒はペガスです。物語はこの強烈にマニアックの一発ネタを皮切りに「テッカマンは、宇宙奨励会時代からすでに「この宇宙人は将来の名人なり」と言われており、期待の大型生物として、本州・四国・九州に生息。 水のきれいな川の石の下にいて、小さな虫などを食べる」という説明(~将来の名人なりのくだりは、『月下の棋士』のパロディと思われる)が入ってあさっての方向に暴走します。でも、1コマ後にはなんの問題もなく元の物語にもどっていくのです。 これらのステキな文章を読んでいると、たとえ言葉として通じていなくても、意味が心からわかるという体験をします。文法の正しさだけが日本語ではないんだ!そんな体験をさせてくれたのは富野由悠季監督と『神聖モテモテ王国』だけです。 そんな感動と共に、オンナスキーがファーザーに投げかけた言葉が、今も僕の胸に刻み込まれているのです。「もうお前 生きたいように生きろ… だってお前の人生なんだから」面白い!初恋ゾンビ 峰浪りょうむ今までなんで読んでなかったんだって感じです。(土から這い出してきたゾンビとのラブコメだと思ってた)これはなかなか考えつかない設定〜〜〜! サンデーっぽい古見さんは、コミュ症です。 小田智仁 オダトモヒト大トロこういう普通の日常系の漫画って最近少ない気がします。 高校生がわちゃわちゃする話が好きなので、この漫画は本当に好きです。 サンデーのギャンブル漫画ギャンブルッ! 鹿賀ミツルなつおうぇぶりで見かけて、「サンデーなのにギャンブル漫画」というギャップに惹かれて読んだ作品。 パッとしないチビっ子のマサルが大人びた顔で勝負する姿がかっこいい。 賭け事が小学生まで浸透している世界観や、ギャンブルの「流れ」を読むマサルと理論派のジャンという設定がすごく好きです。まっすぐに宇宙飛行士を目指す!パスポート・ブルー 石渡治名無しすごく純粋に宇宙飛行士を目指す漫画です。 煙突に登って怒られた幼少期から始まり、ペットボトルロケットを作ったり、種子島のロケット発車をみて感涙し宇宙飛行士になると志す。 専門的な部分の説明もちゃんと出てきます。 伊坂幸太郎の漫画化したやつは本気でおすすめ魔王 JUVENILE REMIX 伊坂幸太郎 大須賀めぐみ名無し伊坂幸太郎のファンですが最初の方の作品は小説というより映像脚本、漫画より。 魔王、これも面白いです。 能力モノですが、ちょっと変わってます。 腹話術、相手に自分の思ってることを言わせる能力。 ただそれだけですが、ただそれだけの能力で切り開いていく様が面白い。23巻もあるのがすごい行け!!南国アイスホッケー部 久米田康治大トロ下ネタがキレキレで好きです。<<1314151617>>
慟哭に満ちた重々しい第1話からは想像もつかないような切なく、長大で壮大な物語へと発展していきます。 画力や構成ともにコミカライズの質はめちゃくちゃ高いですが、そもそもコミック4冊に収まるような話ではないので、気に入った方はぜひ小説を。。 シリーズでは「追憶」とこの「恋歌」のみ漫画化・アニメ化されていますが、他も余すところなく名作なのでメディアミックス化して欲しい。犬村先生最新作「プロペラオペラ」も「『恋と空戦』の犬村小六ここにあり」って感じで素晴らしいのでこれもどうか