バットマン:ホワイトナイト

ゴッサムを守るのはジョーカー…!!

バットマン:ホワイトナイト ショーン・マーフィー マット・ホリングスワース 秋友克也
ANAGUMA
ANAGUMA

バットマン最大の宿敵といえば犯罪のカリスマ、ジョーカーです。 狂人である彼が正気を取り戻した時、ゴッサムに何が起こるのか、バットマンは彼を裁けるのか?という「もしも」を描いたシリーズ。 単に善悪の設定を入れ換えただけでなく、ブルース・ウェインという上流階級と、社会的弱者ジャック・ネイピアという対立構造を描くなど、現代のアメリカ社会を背景にしたテーマ構成が秀逸で、説得力があります。 市民の味方として声を上げた「ホワイトナイト」が現れたことで、法に縛られずに暴力を振るう「ダークナイト」とビランの違いはどこにあるのかという問題が浮き彫りになり、バットマンのフォロワーとして声援を送っていた読者の心も揺さぶられることに。 アルフレッドが病に倒れたことで深まるブルースの孤独、何時ジョーカーに戻るかわからない不安を抱えたジャックの葛藤…。 「ふたりのヒーロー」が悩み、傷つき、それでも戦うようすには胸が熱くなること必至です。 シリーズのヴィランも総登場するほか、ジョーカーを付け狙う黒幕ネオ・ジョーカーの設計などオタクが喜ぶ要素もタップリ。 特にクライマックスのバトルは『スパイダーバース』的なお祭り感があってテンション爆上がり。 映画になってくれ…!! 設定の奇抜さだけではない上質なエンタメに仕上がっているので、バットマンを読んだことがない人にこそ読んでほしい一作です!

マンガ酒

酒豪列伝よりも下戸の喜怒哀楽語りが多い酒エッセイ

マンガ酒 新久千映 鈴木小波 北駒生 他
名無し

お酒大好きな酒豪漫画家連中が登場するかと思いきや 「実は私は下戸でして」で始まる漫画が多い。 どうらやコミック・ゼノン連載陣を中心に リレー形式で酒に関する話を語ってもらった エッセイ的な漫画を纏めた本らしい。 下戸でもいいです酒にまつわる思い出話でもいいし、 みたいなワリと緩い感じの企画だったみたい。 そりゃそうだ、漫画家がみんな 土田世紀先生や西原理恵子先生みたいな人 ばかりのわけがない。 むしろ、このくらいの人が揃うほうが普通。 これで酒豪ばかりのエッセイ漫画がそろったら、 コミック・ゼノンはどんな雑誌だよ、となるし。 漫画ゴラクやアクションならともかく(ゴメン、偏見です)。 そんな感じで、ヘベレケに泥酔した話とか 酒乱気味に大暴れして大失態みたいな話とか それほどにはなくて、 下戸からみた客観的な酔っ払い観察記、 みたいな話が多い。 この漫画を読んで酒を飲みたくなる人は少ないだろうが、 お酒にたまに触れる生活、 家族や友達に酒好きがいる日常、 酒が引き出してくれて知った自分や知人の意外な一面、 世の中には、そんなあれこれがあってもイイんじゃないの、 と思ったりはする漫画だった。 そういう意味ではいわゆる飲兵衛漫画とは 別角度からの酒肯定漫画なんだけれども、 果たしてこの漫画を企画した意図が そういうことだったのかどうかは解らない。

赤い文化住宅の初子

薄幸の少女、初子の報われない青春。

赤い文化住宅の初子 松田洋子
nyae
nyae

親がおらず貧乏で高校進学もできない環境に置かれながらも懸命に生きる初子。 幼い頃に父親が借金を残して蒸発、母親も他界。兄とふたり暮らし。兄も、妹想いではあるが貧しさに心が荒んでいる。 初子にとっての心の支えは兄ともうひとり、クラスメイトで交際相手の三島くん。かつては彼と同じ高校に進学するつもりだったが、アルバイト先からも十分な給与をもらえず、進学を諦めるしかなくなる。 初子の周りにはどうしようもなく薄情な大人ばかり。 まともに仕事をしない担任や、弱った初子を介抱するついでに宗教に勧誘するおばさん。最終的には、蒸発した父親が浮浪者になって戻ってくる。 最後の最後までとにかく報われない初子だけど、ほんの一握りの希望を捨てずに健気に生きる初子の姿には色んな感情が混ざり、泣ける。 ちなみに、この作品は実写映画化されており、当時原作のことは何も知らずに観に行っている。まあ面白かったという記憶はあるが、キャストの顔とか名前、内容もほぼすべて覚えておらず、原作を読んでも何も思い起こされなかった。 同じく掲載されている、工場の息子が主役の話はまた雰囲気がガラッと変わって読み応えがあった。広島弁ていいな。

針鼠

あらたな光る才能…!!これは連載すべき!!

針鼠 よしおかちひろ
たか
たか

はい歴史漫画好き注〜目〜!!よしおかちひろ先生の「針鼠」めっちゃ最高でした…!!!狼の口 ヴォルフスムント、ヴィンランド・サガ、イサック、チェーザレ、ヒストリエなどなど、西洋歴史漫画好きに読んでほしい、**三十年戦争を戦ったドイツ傭兵(ランツクネヒト)**を描いた読切です。いやもう正直この設定だけで面白い…! https://twitter.com/_12Log/status/1181454745333977091?s=20 **少年漫画らしさのある独特の線のタッチと、史実に基づいたゴリゴリにシリアスなお話のハーモニーが堪りません…!!**ボロボロの羊皮紙がナレーションのフキダシになってるタイプの雰囲気を大事にするマンガ大好きです。 はあ〜!もうこれこのまま連載してほしい。 こちらはイブニングの新人賞「俺の零話プロジェクト」の第7弾に選ばれた読切作品なのですが、もし連載するとしたら話の濃さと内容からいってイブニングより月刊誌のアフタヌーンの方があってるのではないかななどと勝手に妄想しています。 「俺の零話プロジェクト」は全部拝読していて、面白かったものには逐一メッセージをお送りしてますが、**個人的な好みにドスレートで刺さったのはこの「針鼠」だけ**です。 **歴史ものを面白く描ける人は正直どんな話でも描けると思います。でも面白い歴史ものを描ける人は何百人に一人もいません。**だからどうかこのまま歴史ものを描いてほしい…!! よしおかちひろ先生の30年戦争を連載で読めることを、心から楽しみにしています!! 【掲載ページ】『針鼠』よしおかちひろ http://www.moae.jp/comic/reiwaproject/7