青年マンガの感想・レビュー15374件<<4647484950>>祈りに似た絵という言語 #1巻応援えをかくふたり 中村一般starstarstarstarstar兎来栄寿こういう作品が、とてもとても大切だと思います。 『ゆうれい犬と街散歩』の中村一般さんの新作です。 ″ふたりにとって、「絵」は言語だった″ という印象的で秀逸なモノローグから幕を開けるこの物語は、25歳のイラストレーター花海修(はなみおさむ)が主人公。AI人型ロボットがデータ収集目的でひとり暮らしのモニターを募集していたところに修が応募して見事当選したことで「DLHC2030」、通称ハルと共に暮らしていく日々の様子を描いていきます。 元々イラストレーターとして活躍されていた筆者自身の経験がふんだんに込められているようで、現代におけるイラストレーターの仕事描写の解像度が高いです。本の装画の仕事では、帯やバーコードの位置を意識して絵を考えるなど言われてみればなるほどと思うような仕事のディティールの妙があります。装画仕事の進め方やリモート会議の様子など非常にリアルです そうした仕事マンガとしての興味深さもありながら、この作品の何よりの美点は創作者として生活している修の感性の豊さです。 2話の「夕陽はメッチャ動物的」の件なども良いですが、とりわけ1巻の最後に収録された5話が最高です。 ″俺の経験上、「絵を描くという行為」そのものは、 祈りに近いような気がしていて″ のパートは、読んでいてしみじみとする素晴らしい言語化がされているなと思います。絵のみならず、他の創作や多くのことに通ずる真理でしょう。 かつて神保町の高岡書店の店長が閉店時に「マンガがあれば、僕らはまたどこかで繋がれます」と語ってくださいましたが、マンガという言語で世界や人と繋がっている私にはとても沁みました。 ″いつから絵を描くことは 資本主義の競争に勝つための 武器になっちまったんじゃ〜!″ ″そういうことを忘れない人間でいたい 彼らにきちんと祈れる人間でありたい″ という修の語る言葉は、今の時代において極めて重要なテーゼです。一番大事なことを常に忘れずに、見失わずに生きていたいと思わせてくれます。 そして、イラストレーターということもあって決めのシーンの一枚絵から生み出される情緒がまた堪らず、湧き起こる感情を繊細かつ雄弁に補強します。 何気ない風景の1コマにも魅力が宿っており、読んだ後は心に風を通したように軽やかにしてくれる作品です。警察ってそうなの!?清く正しくお父さん 津村マミ名無し※ネタバレを含むクチコミです。温かくなる作品橙山寮のあの子たち 甲斐冬雪名無し今、推しの先生、絵柄も作品も大好き 変身人間ちえを読んで大好きになったよ 連載されたら絶対に買います!「青野くんに触りたいから死にたい」感想青野くんに触りたいから死にたい 椎名うみニーナホラーと純愛は実に相性が良い。片方だけでももちろん成り立つけど、組み合わさると最高の相乗効果が生まれる。この作品もまさにそんな感じだ。純愛ゆえの暴走はより恐ろしく、ホラーゆえ切なさにも拍車がかかる。そして物語はいよいよクライマックスに突入。この2人は一体どんな結末を向かえるのだろうか。最後まで見届けたい。 紅茶の奥深き世界 #1巻応援女王陛下の紅茶 イトカツstarstarstarstarstar_border兎来栄寿『銀のニーナ』のイトカツさんが2007〜2011年まで、かつて存在した『スーパージャンプ』及び『オースーパージャンプ』にて不定期で散発的に描いていたシリーズが長い時を経て単行本化されました。 鎌倉の紅茶専門喫茶店「ERNEST」を舞台に、さまざまな悩みを持った人が来店してそれぞれに合った紅茶を提供されることで人生の悩みを解きほぐしていく1話完結型の物語です。 我が家は常飲するのは緑茶とコーヒーがメインですが、それなりに紅茶も飲むので紅茶に関するさまざまな知識が詰まったこの作品は興味深く読みました。 イトカツさんがあとがきで述べている通り、リーマンショック直後のお話のように時勢が変わってしまっているものもありますが、一方で紅茶にまつわる基礎的な知識は年月を経ても普遍的なので今読んだとしてもまったく問題なく楽しめます。 ・硬水を使ったミルクティー ・中国のブルゴーニュ酒と言われる紅茶 ・フォートナム&メイソンのアールグレイクラシック ・レモンたっぷりドライベンガルタイガー ・紅茶の中にジャムを入れない正式なロシアンティー ・チャイ などなど、ひとくちに紅茶と言っただけでは想像しにくいさまざまな側面を見せてくれます。 そして、訪れるお客さんも老若男女さまざま。家庭の問題や仕事の問題、個人的な人生におけるモチベーションなど悩みも人それぞれ。人によって、共感できるエピソードがどこかしらあるのではないでしょうか。各々の物語に沿った紅茶が提供されることで、彼らが立ち上がって前を向いていく姿にも心が温まります。 奥深い紅茶の世界について知見を深められながら、温かい人情ドラマを楽しめる作品です。読むと、ちょっと良い紅茶を淹れて飲みたくなります。晩年の夜晩年の夜 pistarstarstarstarstar寸々68ページ、大満足のボリューム。 ベテラン戦士と若き天才魔女の話。老いて衰える戦士と、歳を重ねることで強さが増す魔女の対比。 自らを顧みること、自らの役割を問うことが描かれている。面白かった!3話まで読むとじわじわハマってくる秋津 室井大資ミューズ1話目読んだときはギャグの方向性が明後日過ぎてちょっと微妙かなって思ってたんだけど3話くらいまで読むと、明後日の方向に投げられたギャグがブーメランみたいに直撃する感じで笑えてくる。 白と黒の迫力サーチアンドデストロイ 手塚治虫 カネコアツシstarstarstarstarstar_borderカイ手塚治虫のどろろリメイク作品 設定のベースはどろろに準拠してるけど、カネコアツシが近未来SFのオリジナルストーリーを作り上げてほぼ別作品と言っていいぐらい綺麗に仕上がってる スクリーントーンは(ほとんど)使わずに線とベタで描かれて迫力満点 誰の心の底も見えない。貴族社会、こわい。雪と墨 うの花みゆきstarstarstarstarstar_borderゆゆゆ大量殺人&放火をした極悪人ネネオの前では、ほわほわのほほんとした追放令嬢のフレイヤがかわいい。 そんな彼女に癒やされている、男二人もとても良い。 ネネオの傷を隠していたものは2巻でペリッと剥がされ、過去の傷が少しは癒えて生きていきやすくなった。 3巻以降はフレイヤの番ということだろうか。 ほわほわのほほんとしていたから、腹芸なんぞできるのかと思ったら、さすが本家筋の大令嬢。 ちゃんと言うことは言えていた。 義姉が単なる極悪な性格の姉だったら、もっと勧善懲悪展開ですっきりしたのだろうけど、そうでもなさそう。 しれっとひどい言葉を言い合うのに、誰も腹の底を見せない。 イラストはとてもきれいで、笑うフレイヤはとてもきれいで、きっと顔立ちが似た義姉も笑んだらとても優しい顔をしている。 ネネオはいい加減にフレイヤの名前を呼ぶべきだけど、身分差のせいなんだろうか。 4巻発売が楽しみ。『危険なふたり』感想危険なふたり 魚戸おさむ名無し暴力はいかなる場合も良くないというのは前提として、自分の大事な人が誰かの悪意によって傷ついたとき、自分はなにが出来るだろうかということを考えさせられる話でした。あと観光地でご当地限定のソフトクリームがあったら絶対食べますね。 :( ´◦ω◦`):先生の言う通り 杏梨じょう名無し最後のページが まごうことなきホラーであった 主人公はもう大人を信じられない...いい奴しかおらん #読切応援People いぬいしょうstarstarstarstarstarNanoめちゃくちゃよかった!ハッピー!人間みんな頑張ってて超えらい。ちょうど数日前に自分の周りでも結構な雪が降ったんで「あの日もこの登場人物たちのようにそれぞれの人生一生懸命やってたんかな。すげえなあ」と思いました。よくよく考えてみれば毎日そうだろうし当たり前だろって分かるんだけど、この作品のお陰で改めてすごいと思えたし周りを見る目が変わるというか優しくなれるようなそんな良質な読切でした。最後はマジで泣きそうになった…!面白かった裏道ヒーロー 樽路実名無し途中、うう、せつない...と思ったけど ハッピーエンド万歳\(^o^)/ お幸せに...隣のよし子ちゃん 黒大柳名無し面白かった。 よく見ると(よく見なくても)後頭部がない相手を人間かどうか迷うあたり、主人公もポンコツアンドロイド(自分は人間だと思い込んでいる)か何かの可能性が...。 前世の記憶巡る運命なんてなくていい 大吉丸名無し面白かった。ちょっと泣いた。主人公の意思の強い感じの顔が印象的だった。 相手を求めるのが恋、相手の幸せを願うのが愛...傷?雪を踏む 古川楊也名無し冒頭で「一生消えない傷を残した」ってあったから、余程酷いことを言うなりするなりしてしまうのかと思って読んだので、終わり方に拍子抜けした。 傷つけるというより、図らずも生き方を別人のように変えさせてしまっただけで、相手がそっちの方が幸せなら、相手にとってはそれで良かったのでは。 むしろ傷ついたのは、自分の好きだった相手の言動パターンや人生のあり方を変容させてしまった主人公側かもしれない。 自分は過去に「自分の影響で友人が誤った選択をして少し失敗したのかもしれない」時、勝手に責任や申し訳なさを感じた。 この漫画の主人公ほど他人の人生を大きく変えてしまったなら、その戸惑いや後悔や苦悩のようなものは大きいだろうと思う。 この主人公の中に、「かつての大好きな相手の姿が自分によって失われてしまった事への やるせない気持ち」や「変わってしまった相手とでも 仲良くなれて嬉しい気持ち」がそれぞれどれくらいあるのかが伝わってこなくて、想像するしかなかった。 PeoplePeople いぬいしょうstarstarstarstarstar寸々人間それぞれ抱えているものがあって、それでも他人に優しくあろうとする姿が描かれていてとても良い。 絵もめちゃくちゃ好きだ!こんな思春期過ごしたらないしょの予習 森井暁正starstarstarstarstar_border野愛本命の恋人がいながら、友達の恋人とキスをしたり手を繋いだりそっと触れたりの「予習」をする。 そんな都合のいいことあるわけないし、していいわけない、なのに止められない。 恋人のことが本当に好きなのに、背徳感や性欲に唆されてどんどん予習相手を好きになってしまう感覚が伝わってくる。思春期のうちにこんなことしてたら頭おかしくなっちゃうよ…!! とにかく予習相手・北見さんのキャラクター性が素晴らしい。 ショートカットで幼く見えるのに妙な色気があって、天真爛漫なのに影があって、こんな女の子が身近にいたらどうにかなりそう!と、自分まで思春期男子の気持ちになっちゃう……! ひとまず大人であることは忘れて、思春期男子になったつもりで読んでみましょう。一緒に悶えましょう。蝋燭姫蝋燭姫 鈴木健也starstarstarstarstar寸々「守る者と守られる者」「野蛮と高貴」の関係性からお互いの胸の思いを口にし、死の瀬戸際で王女と侍女の役割から解き放たれるラスト。この描き方がとても好きだった。 カメラの使い方というか、1コマ1コマがキャラにクローズアップした画面も印象的。やや読みにくくも感じるが、キャラクターの顔がコマ枠をはみ出すように描かれるからこそ、2巻でのスクワ姫の豊かな表情変化が効いてくる。 夢想のまち夢想のまち 夜の羊雲starstarstarstarstar_border寸々ただの雰囲気漫画…では終わらせない、読ませる何か(というか物語の意図みたいなもの?)があるような気にさせられる。 夢と現実の境界が曖昧なお話の中で、印象的なセリフが多い。交番勤務のシーンが少ない?ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 泰三子starstarstarstarstar_borderゆゆゆ交番やパトロール以外にも、特別捜査本部にいたり、機動隊にいたり、交番勤務のおまわりさんはそんなに忙しかったなんて。 交番にいるおまわりさんはいつも同じ人と思っていたけど、実は違ったんだろうか。 そのくらいこの人たちは交番にいない気がする。 こち亀の両さんたちが交番に居すぎるんだろうか。知らない世界のことはわからないものだ。 本作は、すごく美人で毒舌の先輩と、「やめてやる!」と言いつつ続けながら辞めずに働き続けている天然で毒を吐く主人公。 二人のコンビがとても良い。 周囲の警官をまきこんで、漫才なのかコントなのか、テンポよく笑わせてくれる。 犯罪に関してもためになる。 最初の方にあった、「なんでルールを守らなければいけないの」は、なるほどなと勉強になった。 女警察官が主人公で、スポ根でもなく、お色気でもなく、恋愛でもなく。 ブラック勤務の辛さがにじみ出ているあたり、とてもリアルだ。秘境・奇祭・ミステリーニッポン秘境紀行 佐藤啓名無し前にも読切として載っていたらしいですね。何号に載っていたんだろう、読みたい。もしくはシリーズ化してコミックスになって欲しい。 その一歩は、誰かの勇気のうえにあるスカートを脱げたら 三住圭一nyae自分がいま比較的自由に自分のことを選んで決められているのは、以前にその権利を獲得するために戦って道を作ってくれた人がいるということを忘れないでおきたいと改めて思ったマンガでした。こういうドタバタ人情劇は大好物People いぬいしょうstarstarstarstarstarnyae忙しい時に限ってどんどんトラブルが舞い込んできてわ〜〜〜ってなって、でも無視できないからわけもわからず対応してたら、気づいたらめっちゃ人助けしてて、感謝もされて、最後あ〜〜よかった〜〜〜…みたいなの好きなので読んでて楽しかったです。絵もいい。<<4647484950>>
こういう作品が、とてもとても大切だと思います。 『ゆうれい犬と街散歩』の中村一般さんの新作です。 ″ふたりにとって、「絵」は言語だった″ という印象的で秀逸なモノローグから幕を開けるこの物語は、25歳のイラストレーター花海修(はなみおさむ)が主人公。AI人型ロボットがデータ収集目的でひとり暮らしのモニターを募集していたところに修が応募して見事当選したことで「DLHC2030」、通称ハルと共に暮らしていく日々の様子を描いていきます。 元々イラストレーターとして活躍されていた筆者自身の経験がふんだんに込められているようで、現代におけるイラストレーターの仕事描写の解像度が高いです。本の装画の仕事では、帯やバーコードの位置を意識して絵を考えるなど言われてみればなるほどと思うような仕事のディティールの妙があります。装画仕事の進め方やリモート会議の様子など非常にリアルです そうした仕事マンガとしての興味深さもありながら、この作品の何よりの美点は創作者として生活している修の感性の豊さです。 2話の「夕陽はメッチャ動物的」の件なども良いですが、とりわけ1巻の最後に収録された5話が最高です。 ″俺の経験上、「絵を描くという行為」そのものは、 祈りに近いような気がしていて″ のパートは、読んでいてしみじみとする素晴らしい言語化がされているなと思います。絵のみならず、他の創作や多くのことに通ずる真理でしょう。 かつて神保町の高岡書店の店長が閉店時に「マンガがあれば、僕らはまたどこかで繋がれます」と語ってくださいましたが、マンガという言語で世界や人と繋がっている私にはとても沁みました。 ″いつから絵を描くことは 資本主義の競争に勝つための 武器になっちまったんじゃ〜!″ ″そういうことを忘れない人間でいたい 彼らにきちんと祈れる人間でありたい″ という修の語る言葉は、今の時代において極めて重要なテーゼです。一番大事なことを常に忘れずに、見失わずに生きていたいと思わせてくれます。 そして、イラストレーターということもあって決めのシーンの一枚絵から生み出される情緒がまた堪らず、湧き起こる感情を繊細かつ雄弁に補強します。 何気ない風景の1コマにも魅力が宿っており、読んだ後は心に風を通したように軽やかにしてくれる作品です。