アークナイツ コミックアンソロジー

アークナイツの世界で何が起きてるか分かる

アークナイツ コミックアンソロジー 一迅社アンソロジー
名無し

『アークナイツ』、久しぶりにハマったソーシャルゲームです。普段アンソロジーコミックなんていうのもあまり買わないのですがこれは読みたかった。なぜなら『アークナイツ』、やってはいるけどよう分かっとらんから…。 これは自分のプレイスタイルがよくないのですが、ゲームの性質上、自分が使っていないキャラのことがイマイチピンとこないわけです。基地でタッチしたときの台詞しか知らなかったり、なんなら誰の台詞なのか未だに分かってないキャラ居る。 そしてこのゲーム、とにかく説明がふんわりしている(個人の感想)ので、アークナイツ世界のことを知ろうと思うとキャラのボイスや設定資料を全部読み解いていく必要があるという…。 そんなわけで結構プレイしてるけど一向に手持ちの情報量が増えてこんな…みたいなことが僕には起きてたのでこのアンソロはありがたかったです。 オペレーターそれぞれのバックグラウンドや関係性、日常の所作が描かれているので「なるほどこういうヤツだったのか!」と得心できるはず。 読んだらどのキャラもかわいいし、ゲームでも育ててみるかという気持ちになるんじゃないでしょうか。とはいえやっぱり贔屓しちゃうメンバーも居たりして…自分の場合はペンギン急便です。推しの魅力を再確認しました。 アークナイツの世界とキャラクターの解像度がグンと上がる副読本だと思います。

漫画 黒川温泉新明館

もはや1人鉄腕DASH…! 1949年から始まる温泉旅館物語

漫画 黒川温泉新明館 柴田敏明
ぺそ
ぺそ

1949年の熊本県黒川温泉。温泉旅館・新明館の長男である主人公の哲也さん(19)は暮らしを支えるため学校を辞め、家業の他に近所の農作業や土木作業をして働いている。ちなみに19歳というのは数え年なので今で言う17歳です。 道が舗装されていない、バスが通ってない、ズックが貴重だから普段はわらじ、家族10人暮らしで家にラジオがない、林間学校の生徒たちが米を持参してくる、家族で晴れ着で百貨店に出かける…というのが当時の暮らしぶり。 家でわらじを編んだり道がまだアスファルトじゃなかったことは、父や祖父から聞いた昔の話と重なり実感を持って読むことが出来ました。 温泉を引くための配管もまだ竹で高熱に耐えられないので4・5カ月に一度新しいものに替えなくてはならず、山から竹を取ってきて節を抜いて設置するのも哲也さんの役目。 そのことについて「わしは長男じゃからあたりまえばい」というセリフがあり、山道を2俵(120kg)の米や石炭を「おいこ」で運ぶ姿とあいまって「リアル炭治郎だ…」と、なんだか感じ入ってしまいました。 https://togetter.com/li/1612718 常に自分たちの温泉を良くしようと考えている哲也さんは両親に呆れられながらも、露天風呂から見える裏山の竹を切ってツヅジやサツキを植えたり、岩肌をノミで(!)彫って洞窟温泉を作ったり…。 向上心が強く勤勉な哲也さんの姿に頭が下がる思いがします。 新明館そして黒川温泉が今後どうなっていくのか続きが楽しみです。 【現在の新明館の公式サイト】 https://shinmeikan.jp/spa/

ハカセの失敗

「失敗」の意味を知る物語

ハカセの失敗 七野ワビせん
兎来栄寿
兎来栄寿

史群アル仙改め七野ワビせんさんがTwitterで2018年〜2020年にかけて描いていたシリーズが単行本化されたものです。古き良きを感じさせてくれる可愛らしい絵柄で、心の奥深くに響くものがある作風は健在。 本作では世界征服を目論む博士が作った自分のクローンと二人暮らしをしていた過去の失敗の日々を最期に回想するという設定で進行していきます。 クローンは生まれたての赤ん坊と同様で、シングルファザーとして子育てに勤しみ喜怒哀楽にまみれる姿は半ば子育てエッセイのよう。子供が見せる純朴な姿に心を奪われたり感心したり、一方で子育ての大変さに心身を窶してストレスが爆発したり……。 博士がお土産にもらったかわいいウサギの置物を壊されてしまった時の、「誰も悪くないけれど大切な人に大切なものを壊されてしまった時のやり場のない感情」をマンガに落とし込む巧さは流石だと思いました。 偏屈で人間嫌いな博士と、無垢に色んなものに触れて育っていくクローン、博士の発明に目を付けているハリスら中心となるキャラクターが立っており、彼らのストーリーは無限に生み出せそうなほど。単体でも関係性でも好きになる要素が豊富にあります。 脇役の犬猿も絶妙。特に猿社会でも人間社会と同様のストレスを抱えて自分で処理していることが見受けられる猿に心を寄せてしまいます。 七野ワビせんさんのマンガは本当に愛おしいですし、スランプに陥ってしまったそうですがこれからも無理のないペースで執筆を続けて欲しいです。