チキタ★GUGU

人喰いの妖と少年が紡ぐ絆 #完結応援

チキタ★GUGU TONO
ANAGUMA
ANAGUMA

妖(あやし)の起こす問題を解決する「あやしい屋」の少年チキタ・グーグーは人喰いの妖ラー・ラム・デラルとともに暮らしています。人と相容れない存在であるはずのラーが稼業を手伝っているのは彼の目的がチキタと100年間をともに過ごし、美味しくなった彼を食べてしまうことだから。 これだけ書くと『うしおととら』みたいなコンビバトルものっぽいですが、妖と人の命のやり取りがシビアに描かれる『チキタ』の世界はかわいく見えて非常にハードでダークです。 「人喰い」が関わる残酷なシーンがあるほか、主要キャラを巡って精神的にクる展開が容赦なく続くので最初のうちはほわんとした絵柄とのギャップにやられてしまうかも…(もちろんそれも大きな魅力です!) スリリングなエピソードのなかで「100年」とラーの抱える秘密や不死の存在など、ぞわぞわするような謎も解き明かされていくのでどんどん読み進めてしまいました。 両親の仇であるラーと暮らすチキタを筆頭に、作中では度々殺し殺され喰い喰われ…という関係のキャラクターが登場します。誰かが誰かの仇である過酷な間柄ですが、同じ時間を過ごすことで互いの想いが変わっていく過程が丁寧に描かれます。 食うものと食われるもの、許さないことと許すこと、そして生きることと死ぬこと。『チキタ』のキャラクターたちはそれぞれ凄絶な過去を持ちながら、誰かとともに日々を生きることで重厚なテーマに自分なりの答えを出そうとします。 「そうまとめるのか〜!」という最終話がとても好きでした。 チキタとラーが迎える「100年」の旅の決着、読めばきっと心に残るものになると思います。

クダンノフォークロア

顔の良い百合・怪異ミステリー #1巻応援

クダンノフォークロア 煮汁 志水はつみ SukeraSparo
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

私はミステリー漫画の登場人物が「顔が良い」と、結構読める。美しい顔が恐怖にor暗い本性に歪むのも、沈んだ顔が美しい笑顔を取り戻す瞬間も堪らないのだが、それが劇画調だと、怖すぎる(なので金田一少年とか好きです)。 本作の凛々しい主人公も、彼女が憧れ、守ろうとする手弱女ぶりなヒロインも、周囲の協力者達も、美しい女性ばかり。その誘引力は強い。 彼女達を襲う怪異は、タイトルの通り「件」と呼ばれる〈予知〉の妖怪をベースとした物。そこにとある都市伝説を加える事で、迫り来る恐怖のある怪異を創作している。 ヒロインに迫るタイムリミット。怪異の「真相」を巡る物語はスリリング。九段下を舞台とした女性ばかりのミステリーは、美しく楽しい一冊だ。 【ゲームについて教えてください】 こちらの原作はゲームなのですが、ストーリー部分はこの漫画を読んでもネタバレとか大丈夫なのでしょうか?私はゲームやらないので良いのですが……。 それにしてもキャラクター原案はイラストレーターのはねことさんで、ゲームビジュアルは非常に美しいのですが、煮汁先生の漫画は全く遜色なく美しい。漫画としての勢いもあって、楽しく読めました。

まにあってます!

私の「思い出せないマンガ」はこれだった!

まにあってます! 森永あい
かしこ
かしこ

マンバには「思い出せないマンガ」を探してる方がたくさんいますが、そういえば私にもそういう漫画あるな〜と最初に思い出したのがこの作品でした。たぶん小学生の時にネットで試し読みをしたんだと思うんですけど、「少女漫画」「誉ちゃん」「メイド服」の記憶があったので、検索したらすぐヒットしました。えっ!『山田太郎ものがたり』の森永あい先生の作品だったのか…!どおりで20年前に数ページしか読んでないのに強烈なインパクトが残っていた訳だ。そして森永あい先生が2019年に亡くなられたと知ってショックでした。 『まにあってます!』はイケメン三兄弟の家に借金のカタとして誉ちゃんがやって来て平和な暮らしをめちゃくちゃにしていくコメディーです。家の中では雇われの身としてメイド服を着て家事をするのですが、コロッケを揚げたら家を燃やすなど散々な出来です。でも三兄弟が通っている私立の名門校の編入試験に満点合格するし、去年まで男子校だったから女の子は一人だけっていう逆ハーレム状態で、むしろ誉ちゃん無双な漫画だったりします。イケメンを天然ドジっ子がブンブン振り回すTHE漫画なマンガで面白かったです。また読めて嬉しかったなー。

はやくしたいふたり

令和のソーシャルディスタンスラブコメ? #1巻応援

はやくしたいふたり 日下あき
sogor25
sogor25

高校2年のJK・長谷川結理は、近くの男子校に通う同学年の男子・葛城慶一郎に告白し、付き合うことになる。その告白の流れで慶一郎にキスをしようとする結理だったが、なぜか慶一郎から拒絶されてしまう。「完全にキスの流れだったじゃん」という結理に対して慶一郎は、告白にOKはしたが「性的な接触については同意していない」という謎の回答をする。 実は慶一郎は祖父・父ともに元内閣総理大臣と言うエリートで、さらに"葛城家のしきたり"として「十八歳まで異性との性的接触を禁止されている」という厳格な家庭に育った人間だった。結理と同い年である慶一郎が18歳になるまではあと1年半。つまりそれまでの間、結理が慶一郎に気安く触れることは許されないらしい。 それからというもの、結理が不意打ちで彼に触れようとしたらまるで痴漢を撃退するかのごとく関節を決められたり、2人でいるときも実は葛城家のSPに監視されているということが判明したりと、なかなか恋人として(物理的に) 距離を近づけることができない。 そんな、恋人同士のイチャイチャに夢を持っていた結理と、何よりも自身の家柄としきたりを重んじる慶一郎との交際を描いた作品。 あらすじを見ると、アプローチを仕掛けて行く結理に対して慶一郎があしらっていくという形のラブコメのように見えるのだが、実際にはそれだけではない作品。というのも、導入部分からは読み取れないのが、読み進めていくと結理が慶一郎のことを好きな以上に慶一郎が結理のことを大好きで、彼自身も結理に近づきたい、触れたいという感情を我慢しながら彼女に接しているということが分かってくる。 そんな彼が、基本的には葛城家のしきたりを第一に行動し結理との距離を保とうとするが、ある時には正攻法で、ある時にはしきたりの隙を突いて結理の期待に応えようとしてくれる、そのギャップが可愛らしい。 ただ、そんな慶一郎の行動が若干的外れだったり、そもそも結理の期待しているようなイチャイチャとはかけ離れていたりして、なかなか結理自身が満足する交際はできない、その様子もラブコメとして楽しい作品。 1巻まで読了

きみのせかいに恋はない

セクマイという"型"に嵌めず自分自身を見つめ直す物語 #1巻応援

きみのせかいに恋はない 伊咲ウタ
sogor25
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高校生の花井チカは同級生の君嶋に告白され、付き合うことになる。 しかし実は彼女は、人に対して"恋愛感情"というものを持ったことがなく、仲の良かった君嶋に対してもその"一線"を超えることができず、結果的に別れることになってしまう。 その後、大学の心理学部に進学した彼女は、ある教授との出会いから"恋愛感情"がわからない自分自身がどういう存在なのかを見つめ直し始める、という物語。 「恋愛感情がわからない」という説明で気付く人もいるかもしれないが、この作品はいわゆる「アセクシャル」をテーマとして暑かった作品。 しかし、主人公のチカが「アセクシャル」なのかと聞かれると、すぐには首肯できない作品でもある。 作中でも「アセクシャル(無性愛者)」とは「性別を問わず他社に対する性的な欲求を持たず、関心や欲求を抱かない人」という説明があり、チカも自身がこの説明と合致するという印象を抱いている。 しかし、チカは「自分がアセクシャルなのかどうか」という過程を通り、さらにその先の「自分がどういう人間なのか」という部分にまで考えを巡らせるようになる。 セクシャルマイノリティを扱う作品では、それぞれの"定義"というものが存在しているがためにその"定義"に沿った人物像という形で描かれやすく、実はそれは「男らしさ」「女らしさ」のような、本来セクシャルマイノリティとは対局に位置するはずの考え方に近づいてしまっているのかもしれない。 この作品では、登場人物が自らをセクシャルマイノリティという定義の枠組みに当て嵌めていくのではなく、定義を知ることで逆に自身がどういうアイデンティティを持っているのかを丁寧に因数分解して見つめ直すという過程が描かれていて、"定義"よりも"個"としての存在を大切に描いているような印象を受ける。 『性別X』などのエッセイマンガでは"定義"を説明しながらその定義に当て嵌まらない人も実際にはいるという説明が著者の実体験に沿う形で描かれることも多いが、もしかしたらこの作品はそういう意味でリアルに近い形でフィクションとしてキャラクターの成長の過程を描いている稀有な作品なのかもしれない。

堀さんと宮村くん

青春時代に読んだ至高の学園ラブコメ群像劇! #完結応援

堀さんと宮村くん HERO
たか
たか

高校生のときに個人サイトで連載されてるWEBマンガにハマってて、クラスの友達に読解アヘンというサイトを教えてもらい読んだのがこのHERO先生の「堀さんと宮村くん」でした。 全く意識していませんでしたが、2007年から連載がスタートしたまさに自分がリアル高校生のときにリアルタイムで読んでいた高校生たちの学園群像劇です。 今のアラサーのオタクで「堀宮」通ってない人は居ないのではというレベルの作品。 もう、絵のスタイルがなにもかも良いんですよね…! スッキリしたデフォルメも、フルカラーのポップな色使いの塗りも、縦長でシンプルなコマ割り…全部好きです。 「ギャルに見えて弟の世話でものすごく家庭的な堀さんと、陰キャに見えて実はタトゥーだらけな宮村くん」という、クラスメイトには見せない顔を持った2人が秘密を共有するというストーリーがとにかくエモい。今思い出してもキュンとします。 クラスメイト、両親、兄弟姉妹。 全員が個性的で魅力的で、そんな登場人物たちが部分的に繋がり合って織りなすシリアスでコメディな人間模様が最高。 メチャクチャ読み返したいけど読み返したら懐かしさでどうにかなってしまいそうで怖くて読めないのがつらい… http://dka-hero.me/