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時は中世鎌倉時代の初め、坂東武者のりりしき気慨が東国の野に満ちていた。都に帝王、東国に荒武者、歴史のうねりが風雲を呼ぶ、古今東西幻想綺談「夢の碑」シリーズ鎌倉戦乱編。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。」 ……時は平安末期、武家の出身でありながら、日本で初めて太政大臣という朝廷の最高職に就いた平清盛率いる平家は、朝廷内の軍事力・警察権を掌握し、まさに栄華を極めていた。徳子はそんな平家が権勢を誇った時代に、清盛の娘として生まれた。徳子は幼少期に、真っ白な髪と琥珀色の目を持つ少年・千珠丸と出会う。「神人」と平家内でそう呼ばれていた千珠丸は人ではない何者かだったが、徳子は不思議な魅力を持つ彼に心を掴まれる。徳子はゆくゆくは清盛による外戚政策のために、時の帝である高倉天皇に入内することになるが、それを拒否した彼女は何と千珠丸と駆け落ちすることを決意し……!? ※こちらは巻末に電子版のみの特典ペーパーがついております。
頼朝亡き後、後ろ盾をなくした北条家の執権・経時は16歳の妹・檜皮姫を7歳の将軍に嫁がせた。しかし、その妹が本当に愛していたのは…!?堕ちたのは恋の谷。鎌倉を舞台に、政敵と戦う男たちと、彼らを愛した女たちの物語。
鎌倉以来の奥州の名門・最上家。出羽国57万石を領した最上家が戦乱の世を生き抜くために下した苦渋の決断と、そしてその先に掴んだ光明とは…!?悲劇の姫・駒姫の物語を含む全5編収録。
河内国(かわちのくに)の悪党・楠木正成(くすのきまさしげ)は、ついに挙兵を決意する。倒幕と親政を掲げる後醍醐(ごだいご)天皇への忠節と、自らも志す太平の世を築くために。そして正成を密かに想い慕う少女・あぐりも、固く心に誓うのだった。わずかでもいい、その人の行く道を照らす光となることを。その大きな背を支え守れる、力のひとつとなることを。時代は、まさに新たな動乱の時を迎えようとしていた――。鎌倉末期を舞台に描き下ろす、渾身の長編歴史ロマン!!
幼い頃に出会った二人の少年のあまりに強い友情譚と、二人に宿る不思議な力を巡るサイキックSF、それらが絡み合い高まり合い、鎌倉時代を大きくうねる壮大な絵巻物。久々に、読まない間もつい思い出してしまう、という経験をした。 生母を失い継母に虐められる、秋葉介の長男・融明(とおるあき)と、融明の遠縁で父が失踪した露近(つゆちか)。二人は気質は違うが意気投合する。苦しみから逃れるようにして、兄弟のように仲良く過ごす二人の様子が夢の様に美しい。 どこまでも遠くへ駆けて行きたい……しかし二人は引き裂かれ、露近は京で後鳥羽院に飼われ、融明は鎌倉で将軍実朝の側に仕える。 二人を繋ぐ不思議な力は、時に互いを救い、互いの存在を感じさせる。天紋・地紋、鬼としての妖力、融明の力強さと露近の妖艶さ。その魅力で沢山の人を惹きつけ、関係を持ちながら彼らはいつも、共に野を駆けた時代を懐かしみ、遠い目をしている。そんな二人の切なさに感情移入してしまう。 二人に与えられた天命、あまりに強大な力を彼らはどうするのか……そこにはただ見送ってやるしかない、という無力感もありつつ、籠の鳥の自由を喜ぶ感覚もあって、見開き絵の美しさと共に強い感慨を私の胸に残した。