あらすじ

時は中世鎌倉時代の初め、坂東武者のりりしき気慨が東国の野に満ちていた。都に帝王、東国に荒武者、歴史のうねりが風雲を呼ぶ、古今東西幻想綺談「夢の碑」シリーズ鎌倉戦乱編。
夢の碑 風恋記 前編

時は中世鎌倉時代の初め、坂東武者のりりしき気慨が東国の野に満ちていた。都に帝王、東国に荒武者、歴史のうねりが風雲を呼ぶ、古今東西幻想綺談「夢の碑」シリーズ鎌倉戦乱編。

夢の碑 風恋記 中編

野心あふれる京の王者後鳥羽院が見た夢占「王道をゆくため異形のものを手に入れよ」。その夏、東国を襲った厄災を鎮めるために、融明は激しい風雨の中で占いが告げた嵐の目を射抜く。そして…

夢の碑 風恋記 後編

京と鎌倉の対立の裏で、幕府御家人の確執も激しさをましていた。一族を滅ぼされた融明は京で反乱を起こすが敗れ、御鳥羽院の御所に迷い込む。そして院の執念は融明の鬼を呼び覚ました。夢の碑シリーズ最終章。

夢の碑 風恋記

少年達は時を超え野を駆ける

夢の碑 風恋記 木原敏江
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

幼い頃に出会った二人の少年のあまりに強い友情譚と、二人に宿る不思議な力を巡るサイキックSF、それらが絡み合い高まり合い、鎌倉時代を大きくうねる壮大な絵巻物。久々に、読まない間もつい思い出してしまう、という経験をした。 生母を失い継母に虐められる、秋葉介の長男・融明(とおるあき)と、融明の遠縁で父が失踪した露近(つゆちか)。二人は気質は違うが意気投合する。苦しみから逃れるようにして、兄弟のように仲良く過ごす二人の様子が夢の様に美しい。 どこまでも遠くへ駆けて行きたい……しかし二人は引き裂かれ、露近は京で後鳥羽院に飼われ、融明は鎌倉で将軍実朝の側に仕える。 二人を繋ぐ不思議な力は、時に互いを救い、互いの存在を感じさせる。天紋・地紋、鬼としての妖力、融明の力強さと露近の妖艶さ。その魅力で沢山の人を惹きつけ、関係を持ちながら彼らはいつも、共に野を駆けた時代を懐かしみ、遠い目をしている。そんな二人の切なさに感情移入してしまう。 二人に与えられた天命、あまりに強大な力を彼らはどうするのか……そこにはただ見送ってやるしかない、という無力感もありつつ、籠の鳥の自由を喜ぶ感覚もあって、見開き絵の美しさと共に強い感慨を私の胸に残した。