あらすじ憧れのお姉さま・美月の正体は、小学校時代に陽芽のソトヅラをクラスにバラした因縁の相手“矢野”だった。二人は小学生時代に同じクラスで息の合った友だち同士だったが、陽芽の嘘からすれ違いが生まれ、今に至るしこりを残すことに。美月の正体が矢野だと知った陽芽は、サロンの仕事も思うようにできなくなり……
舞台の仮面を外す時。人に見せたくない素顔が晒される時……一度は目を閉ざしながら、薄目を開けて見てしまう。 辛さと、少しのワクワクと、剥き出しの生々しい本性への感動。 そんなもの、欲しくないですか? ★★★★★ 本作の舞台は、ミッション系女子校の来校者をもてなす喫茶室……というコンセプトのカフェ。そこで給仕を担当する在校生……も、もちろんバイト。 働く女子たちは学校の姉妹制度のもと、関係を紡いでゆく……という芝居を、百合オタクの客に見せるまでが仕事。つまり百合営業が仕事、というわけです。 ここで重要なのは、カフェにはバックヤードがある、ということ。 主人公の陽芽は、外面の良さで人を騙し続ける人。彼女の姉となる美月は、フロアでは優しいのに裏では陽芽にキツく当たる。そんな二人の関係を陽芽の事が大好きな果乃子が不安視し、さらにこの三人を古参の純加が心配する、という構図。 四人の思いは、表と裏への猜疑心で乱れ、不安は増し、そして破裂する。何度も繰り返されるそのサイクルは、時に相互理解を促し、時に決裂を生む。表での美しいやり取りの分、バックヤードでみっともなく足掻く苦悩に、みっともなさの分だけ同調してしまう。その苦悩、私も持っている、と。 現実では自分の心を曝け出し、受け入れられるのは大変なので、私は見せたくない内面を隠す。だからたとえ創作でも、己を曝け出すやり取りに、心惹かれる。彼女たちが「人に好かれたい」気持ちで起こすやり取りは、たとえ苦しくても一つひとつが尊いと感じるのです。