あらすじ春、新たなる門出の季節。しかし“おいどん”大山昇太は夜間高校への復学すらままならない。下宿館の同居人たちが催す合格パーティーを尻目に、一心不乱にバイトに励むおいどん。今はダメでも来年がある来年がなきゃ、さ来年がある!!何度となく失恋をくりかえしてきたおいどんの前に、一寸変わった少女が現れた。スケ番の京子、向かいの部屋に住む川口さんの妹だ。姉妹ゲンカの仲裁をきっかけに、2人の距離が急接近していくのだが……。
昔、といっても1990年代あたりまでは、おいどんみたいな学生ってけっこういたものです。大学時代の私の周りにもそんな人たちが集まっていました。無芸大食人畜無害。キノコが生えそうな湿度の高い部屋に住んでいたり、人がよくてすぐだまされたり、曲がったことが嫌いで馬鹿を見たり…。まったく同じではないですが、みんなおいどんの一部をもっていたんですよ。だからかもしれません。大学生のとき、初めて最終巻まで読んだあとは喪失感でいっぱいになりました。おいどんのことをもう他人とは思えなくなっていたんですね。劇中の下宿館のバーサンみたいにしんみりしてしまいました。今ではあのラストについてはこう思っています。おいどんも私の友人たちのように、進むべき道をみつけたからあんな行動に出たのだ、と。きっとどこかであのサルマタの怪人は元気に暮らしているのでしょう。でもやっぱり、何度読んでも古い写真を見返しているようで、少し寂しくなるのは変わらないんですけどね。