あらすじある夏の日の午後、おいどんは突然姿を消してしまった。しかし下宿館のバーサンは主なき大四畳半に残された“守り神”を見て安心する。大丈夫!おいどんはこの大四畳半に必ず帰って来る……!その時が来るまで、男おいどん大山昇太とはしばしお別れである。巻末に『おいどんの地球』を初め、おいどんの原点を描いた珠玉の短編『元祖・男おいどん』『聖サルマタ伝』『幻想サスペンス』『螢の泣く島』を収録。
昔、といっても1990年代あたりまでは、おいどんみたいな学生ってけっこういたものです。大学時代の私の周りにもそんな人たちが集まっていました。無芸大食人畜無害。キノコが生えそうな湿度の高い部屋に住んでいたり、人がよくてすぐだまされたり、曲がったことが嫌いで馬鹿を見たり…。まったく同じではないですが、みんなおいどんの一部をもっていたんですよ。だからかもしれません。大学生のとき、初めて最終巻まで読んだあとは喪失感でいっぱいになりました。おいどんのことをもう他人とは思えなくなっていたんですね。劇中の下宿館のバーサンみたいにしんみりしてしまいました。今ではあのラストについてはこう思っています。おいどんも私の友人たちのように、進むべき道をみつけたからあんな行動に出たのだ、と。きっとどこかであのサルマタの怪人は元気に暮らしているのでしょう。でもやっぱり、何度読んでも古い写真を見返しているようで、少し寂しくなるのは変わらないんですけどね。