掲載誌情報ビッグコミックオリジナル増刊小学館2024/10/111978年のまんが虫/ホロウフィッシュ/凱輝! Yoshiki/ランジェリー・リリィ/港町ブルース/次の整理/13日には花を飾って/大地の子 すみれ/一月の白魔/ロッシとニコロのおかしな旅/七帝柔道記/波の間にまに/クイズの神様 QuizRoad/七帝柔道記外伝/写真屋カフカ/ブルーバード5/探偵見習い アキオ…/大河への道/釣りバカ日誌番外編 シャドーマン/言葉にできないこの感じ/愛の彷徨シリーズ/メロスのバカ!/そぞろマン/猫道 NECO DOH/赤松さん/
作品情報著者奥田亜紀子arrow_forward_iosカテゴリ青年マンガarrow_forward_ios出版社小学館arrow_forward_iosレーベルビッグコミックオリジナル増刊arrow_forward_ios掲載誌ビッグコミックオリジナル増刊arrow_forward_ios
久しぶりに帰省した主人公は東京で女芸人をしている。父と母は兄の子供である孫に夢中で、90歳を過ぎた祖母はボケてきていた。今現在の時間の流れを主人公の視点で語りつつ、そこにボケて子供に返った祖母の記憶と意識が混ざる構成。 祖母が子供だった頃の村では凶作で食うに困った人達が芸を見せて金をもらい歩いていて、同情した父親が彼らを家に泊めたが、翌朝に物が盗まれていたことがあった。主人公はパソコンの画面越しにネタ合わせしていた相方に「どうして里帰りしたの?」と聞かれ「自分は子供に返りたかったのだ」と気づく。子供に返ってしまった祖母と子供に返りたい孫。二人ともそれぞれの過去と現在のしがらみに苦しんでいる。 物語の最後で東京に帰ろうとする主人公を玄関先で呼び止めて「私からもらったと言うな」と祖母がお菓子を握らせる。おそらく祖母のボケた思考回路の中では、子供心に印象的だった貧しさから盗みをしてしまった人物達と、同じく芸をしている孫を混同しているが、この行為は祖母からの泥棒をしたあなた方を恨んでないというメッセージだと思う。主人公は自分が買ってきたお土産を渡してくる程ボケても子供のように可愛がってくれる優しい祖母だと感じている。 ある意味ここで意思のすれ違いが起きているけれど、同時に祖母も孫も救われている。そこに気づけるのは読者だけ、というのも面白い。 短編集『心臓』に収録されていた作品それぞれに登場したモチーフが数多く見つけられた。高野文子のオマージュのような表現もそう。今回の「あんきらこんきら」で一つの完成形に達したような感じがする。けれども奥田亜紀子の進化はまだまだ続くと確信を持てる傑作でもありました。