わたしは春太くんに恋なんてしない【コミックス版】

12歳の歳の差 #1巻応援

わたしは春太くんに恋なんてしない【コミックス版】
兎来栄寿
兎来栄寿
11ヶ月前

『欠けた月とドーナッツ』や『女ともだちと結婚してみた。』の雨水汐さんが描く、12歳の差がある男女の恋愛物語。 強い結婚願望を持ちながら2年付き合っていた彼氏と別れ、一方で仕事では順調に出世コースに乗りますます恋愛や結婚から遠ざかりそうな30歳春を迎えたファミレス会社勤務の本田沙綾。 彼女を幼い頃から慕い、将来結婚して欲しいとおもちゃの指輪を渡して申し込んだこともある弟の友人である12歳年下の春太と再会して猛アプローチされるラブコメです。 物語の中では多少の歳の差など問題になりませんが、実際に12歳も歳が離れていたら現実的な問題も色々とあります。 結婚費用。 家賃などの生活費。 35までに子供を産みたい。 23で父親になれるか。 子育てはできるか。 総合的に考えて、「好き」という感情だけで結婚できる年齢ではない。 そうしたハードルがあることを踏まえながら、それでも歩みを進めて行こうとするふたりのラブのコメり方に「いいぞ、もっとやれ」となる作品です。 再会後最初に春太が取ったムーブには思わず『グラップラー刃牙』1話の空手家になってしまいましたが……。 何しろ、雨水汐さんの絵が綺麗で魅力的です。感情が溢れる大ゴマのときの表情など、とても良いです。 1巻完結ですが、おまけにあるようなこの先のふたりの掛け合いをもっともっと見ていたかったというのが正直なところ。多分、これからふたりには大変なことも押し寄せると思うんですが、それを乗り越えていくところなんかもあわせて見たかったなぁと。 細かいところでは、ファミレスの従業員の「推しと同じ身長なんですけど」という空気の読めない強火オタクちゃん、地味に好きです。ヤニカスの林さんなど、彼らのキャラクターの良さからエピソードもどんどん膨らみそうだったので総じて続きが読みたいなと思いました。 年上のお姉さんと子犬のような男子の関係性が好きな人にお薦めです。

100億の男

華を添える女性でも

100億の男
誰が何と言おうと美村奈緒子
11ヶ月前

様々な女性キャラが主人公、富沢琢矢と関わるこの「100億の男」、冷酷になるまでも分かりもう一人の主役と言って差し支えない久我山沙貴、中国人の若き指導者の楊美娟(ヤン・メイチュワン)、あくまで一般人の広瀬和美(新しい婚約者も一般人のよう)、手厳しい情報屋のりさ子、屈折気味の社長令嬢の前島マリエ、擦れっ枯らしの事業部本部長の森下圭、亡き夫のような馬鹿な男が好きな篠田冴子、研究馬鹿のチーフのレイチェル・ヘイズワード、悪魔のような速見香織… 中でもスクープに貪欲で正義感のあるルポライター、美村奈緒子が好き。沙貴の父、天善が持つ国土創成社などが財界を牛耳る現状をを快く思わず、調べるうちに琢矢が“100億の男”と知った。仕事と結ばれたと言われて男に振られ、琢矢とまぐわう時も前置きをするこの奈緒子、盗聴も得意で活発的。新しい婚約者のいる和美に琢矢の恋人かと勘ぐられた時の複雑な感情を見せるのもよかった。

デビルズキャンディ

ハロウィンに読みたいマンガ2023第1位 #1巻応援

デビルズキャンディ
兎来栄寿
兎来栄寿
11ヶ月前

渋谷ハロウィンにも大規模な規制が入り大人しかった今年。代わりに池袋ハロウィンでは小林幸子さんが鬼舞辻無惨のコスプレをするなど大いに盛り上がっていたようですね。 ハロウィン本番は今日10月31日なわけですが、そんな本日にこそ読みたいのがこのアメリカ発のアクションモンスターコメディです。さまざまな悪魔や怪物たちが暮らす世界で、幽霊が暴れ、コウモリが舞い、骸骨が郵便配達を行う。そして、ヒロインはフランケンシュタイン的な美少女。これ以上ハロウィンにぴったりなマンガもなかなかありません。 物語は、主にヘムロックアカデミーという学校を舞台に、人造悪魔のパンドラを作ったインプの少年・カズを中心としたドタバタ劇です。生徒も教師も軒並み強い個性を持っていて、ひとりひとりの濃ゆい特徴も見所となっています。 特に、カズのことが好きなサイクロプスの女の子・ヒトミの片思いラブコメ部分は力が入れられており注目です。 アメコミというともっとコテコテな画風をイメージすると思うのですが、本作の画風は表紙絵だけでも解るようにとても日本のマンガに寄っています。またページこそアメコミと同じく右開きですが、ネームや演出などもかなり日本のマンガに寄っており多くの日本人が親しみ易いことでしょう。 ファンタジーならではの架空のさまざまな競技が登場し、アクションの見せ場となるシーンの演出も派手で楽しく、国境を越えて目で見ているだけでも楽しめる作品です。 果たしてカズの作ったパンドラはどのように成長していくのか、その道程を見守る楽しみもあります。 皆さんが良きハロウィンを過ごせますように。 HAPPY HALLOWEEN!

流浪のグルメ 東北めし

ハンター錠二ガチ恋勢より愛をこめて

流浪のグルメ 東北めし
野愛
野愛
1年以上前

土山しげる先生の漫画を一作でも読んだことがあるもしくはインターネット大好き好きマンなら絶対にハンター錠二のことを知っているはず。そして、ハンター錠二のことを笑うひとはいてもハンター錠二のことを嫌う人間はいないはず。嫌いって言ってる人はたぶんOKFFの人です(喰いしん坊!参照)。 そんなハンター錠二がつかず離れずの距離感で東北のうまいものを紹介してくれるのが流浪のグルメ。ハンター錠二と出会う人達はハンター錠二がハンター錠二であることを知りません。 なんかよくわかんないけどグルメで説得力があってテンガロンハットにサングラスの謎の男として出会うのです。 飯を死ぬほど大量に食う訳でも箸を両手に麺を食う訳でもないハンター錠二、なんかいいんです。大食い甲子園のときのコーチ姿もよかったけど、姫トラお京とのやりとりにリアコ味すら感じるんですよ…恥ずかしながら…!! そんな冗談はどうでもよくて(6割5分ガチだけど)東北は本当に美味しいものがたくさんあるので、グルメガイドブックとして読んでも参考になると思います。 魚も肉も野菜も美味しいし、B級グルメや甘いものも魅力的なものたくさんあります。 旅行なんて難しい状況ですが、お取り寄せなんかも盛んな時代ですから!! 漫画読みながら東北の美味しいものを食べればハンター錠二のリアコ味をあなたも感じられるはず…です。

今日もベランダで

ベランダでつながる関係

今日もベランダで
六文銭
六文銭
11ヶ月前

マンションのベランダでコミュニケーションする関係。 しかも、お互いの顔はみせずに会話だけ。 字面だと、なんともコミュ障にはキツく感じるのだが(自分ならベランダにいて、隣の人間の空気を感じたら、物音たてずに絶対部屋に避難するわ。)フィクションだと楽しめるから不思議。 しかも、隣の美少女は俳優。 それに気づかずに、関係性を深めていくのも面白い仕掛け。 主人公は、ベランダで趣味のカーデニングをしており、その知識もチラホラでてくるので、こういうのに一度でも憧れた人は、それも楽しめる作品です。 ベランダって気づくと物置になっているので、こんな感じで楽しめる余裕が欲しいとつくづく思ってしまう。 ラブコメとライフスタイルマンガ的な感じが、ゆるく楽しめる作品です。

あくたの死に際

結局は、情熱が全てを動かす

あくたの死に際
六文銭
六文銭
11ヶ月前

「天才と凡人の比較」 的な題材は、若い頃から結構好きで、とくに圧倒的な才能によって凡人を駆逐していく様は爽快感があり、同時に英雄的な憧れを抱いたもんでした。 自分には、そういう才能がないと気づいたのも大きな理由だと思います。 だけど、年食ってつくづく感じることがある。 月並みですが、天才と呼ばれる人たちはすべからく努力していること。 それこそ、寝食を忘れるほど、その対象に没頭しているんです。 才能にあぐらなんてかいていない。 人並み以上に光る才能がありながら、それを磨く手を一切やめない。 イチローはどんなに体調が悪い日でも素振りをやめなかったようだし、藤井聡太は寝ても冷めても将棋のことばっかり考えているっぽい。 凡人との差は才能ではなく、ひとえにこの狂気ともとれる情熱の差なんだと感じるようになりました。 しかも、空腹、睡眠欲、そして性欲などといった欲に負ける程度のものじゃない。むしろ凌駕していく、これを才能と呼ぶんだと。 本題。 本作の舞台は文芸界。 主人公は、やり手のサラリーマンだったが、ある日を堺に会社にいけなくなってしまう。 そんな時、大学時代の文芸部の後輩で、時の人となった黄泉野季郎と出会い、自分のなかにくすぶっていた文芸への思いを再熱させるという展開。 天才・黄泉野季郎と凡人主人公の対比だが、上述のとおり今では見る目も違う。 天才が凡人を圧倒する様よりも、凡人が障害に屈せずどう乗り越えていくのか、そこに焦点があたる。 何より滾る情熱を、現実とどう折り合いをつけるのか? 一般的な幸福と、自身の中にある情熱に従うべきかとの選択に揺れる表現が(水に潜ったようなシーンとか)、とにかく秀逸で読んでいてひきつけられます。 ただでさえ凋落の厳しい文芸界に、編集者の言葉の切れ味もスゴイ(添付参照) ホントに一握りの才能しか生きられない逆境の世界なんだと痛感させられれます。 だからこそ、主人公は何を武器に、そして全てを投げ売ってまで向き合おうとする世界でどう戦うのか、今後の展開が予想できなくて楽しみです。 そして、読んでいてつくづく、情熱こそが人を動かすんだと改めて感じた作品でした。

最果てから、徒歩5分

人生は山も谷もありすぎる。

最果てから、徒歩5分
Pom
Pom
11ヶ月前

ドラマ化していたんですね、知らなかった〜 色んな事情を抱えて、死にたいと思って自殺の名所の近くのオーベルジュに集う人達。 そして、オーベルジュの人達もやはり何か抱えている。 人は人に救われるのか、とこの作品を読んで思う。 どんだけ死にたい思いを抱えて自殺の名所に行っても、オーベルジュの人達や、はたまた美味しい料理だったり、自殺したい思いを抱えて行ったのに何かが吹っ切れてまた彼ら彼女達の人生に戻っていく。 共感してじんわりしたり、よし頑張ってみようって思えたり何かしら心に響く作品なのは間違いないのではと思います。

新人ほとかわの激情

スカッとの後もちょっとだけ

新人ほとかわの激情
野愛
野愛
7ヶ月前

スーパーで働く新人の女の子。子どもたちにも真摯に対応してて優しいねいい子だね接客業向いてる素敵な子だ〜と感動していたら、スカッとジャパン(もう懐かしいね)みたいなクソ客が来た〜!!! ちゃんとスカッとするし、スカッとしたあとの新人ちゃんの心の動きもかわいいし、ここまで描いてくれるとスカッとを求めちゃう自分の愚かな心も浄化されますね…

役所の下にはゾンビが埋まっている

withゾンビ社会のお仕事コメディ

役所の下にはゾンビが埋まっている
名無し
11ヶ月前

暴力性も感染力もないゾンビが当たり前に存在する世界。 ゾンビの権利や処分に関する様々なルールがあったりして、そんなゾンビに関するあれやこれやの対応する役所の「蘇生課」に配属された主人公の話。ゾンビは大抵が誰かの家族だけど、ゾンビになる=人としては死んでいるという事実が複雑な問題を発生させます。やる気がなさそうで冷徹な課長の元、様々な試練に立ち向かう!というあたらしいお仕事コメディと言う感じです。

ネイチャープリズム

なんにもない田舎の風景が、キラキラ輝きだす…!

ネイチャープリズム
名無し
9ヶ月前

海と山以外はなにもない田舎から離れる勇気もなく、なんとなく就職も地元でしている浜谷は、かつて片想いをしていた高校の同級生・西田と再会。それからというもの、当時の気持ちが蘇り、とたんに見慣れた景色が輝いて見えてくるというわかりやすさがとても面白くて、同時に可愛いなと思った。さらには西田が自分に全く気がない素振りを見せると、一瞬でいつものつまらない風景に戻ってしまう。気持ち次第でそこまで変わるものなんだな。ラストにはキュンとしました。

カデギ 物流倉庫でミックスコーヒーをがぶ飲みしながら働いた話

カデギ 物流倉庫でミックスコーヒーをがぶ飲みしながら働いた話の感想 #推しを3行で推す

カデギ 物流倉庫でミックスコーヒーをがぶ飲みしながら働いた話
マンガトリツカレ男
マンガトリツカレ男
11ヶ月前

・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 大邱の夜、ソウルの夜を出したところ一緒の会社か。物流倉庫で働いている主人公の日記のようなマンガだったで日本でもありそうな感じもするが細かい文化の点が違ったりとして面白い。ミックスコーヒーは日本でも売っているのかね ・特に好きなところは? 特定の時期に大量に送られるある食べ物の存在。加工前でも加工後でもすごい大変そうだ ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 前の大邱の夜、ソウルの夜も面白いし今回のも面白かった。こういう他国にある問題や文化の違いなどがわかるマンガがやはりいい。今考えると呉世浩の『水の国のアリラン』や黄美那の『ユニ』や『李さんちの物語』も好きだったな

路傍のフジイ

真の自由と豊かさを謳歌する40男 #1巻応援

路傍のフジイ
兎来栄寿
兎来栄寿
11ヶ月前

『リボーンの棋士』鍋倉夫さんの新作です。 人間はどうしたって他人の目が気になる生き物。 SNS全盛の現代社会ではますますその傾向は強まり、承認欲求に囚われてしまう人は数限りありません。 しかし、そんな世の中の潮流に逆行するように自らの道をマイペースに突き進む男・藤井こそがこの作品の主人公です。 同僚から見れば、存在感がなく冴えない40歳の独身非正規社員。真面目ではあるものの鈍くて友達もいなさそうで、こうはなりたくないと思われるような存在です。しかし、そんな彼の中にはこのご時世では稀有な豊かさが宿っているのです。 映画や小説、昆虫の飼育、DIY、絵画や陶芸、ギターなど無数の趣味を持っていて、どれもさして上手くはないものの本人は心の底から好きで楽しんでいる。孤独であることを厭わず、何なら不老不死になってずっと永く人生を謳歌していたいというその在りようが、本当に素晴らしいです。藤井のように、真に豊かで自由な人生を謳歌できている人は少ないのではないでしょうか。 それ故に、すべてがつまらなくなってしまっていた青年・田中や、とある事情を抱える職場のクール美人の石川さんらの方に多くの人は共感しやすいことでしょう。ある種、藤井が鏡のように自らを写し出す存在としてさまざまなキャラクターの藤井との関わりを通して生まれる変化が描かれていきますが、その様子ひとつひとつに感じ入ります。 分かりやすい地位や名誉や物質的な豊かさ。多くの人が欲して憧れる、何ならそれを持つことこそが「普通」とされるものに特に興味を示さない。そのせいで、異端扱いされ疎外されても気にすることはない。私もどうしたってそんな藤井の生き方や精神性の側なので、それをこんな形でマンガにしてくださる鍋倉夫さんの着眼点や言語化能力の高さに感謝してしまいます。 『リボーンの棋士』より一層地味な主人公と物語ですが、静かで深い味わいがありこちらも大好きです。 余談ですがスピリッツ本誌の筆者コメントの欄で「漫画史上最高のカップル」というお題の際に鍋倉夫さんとジョージ朝倉さんが共に『狂四郎2030』の狂四郎と志乃を挙げシンクロしていたのが何とも言えない感慨がありました。

千年絵太郎

美術予備校生と天才絵師幽霊のバディもの

千年絵太郎
名無し
11ヶ月前

千年前?から幽霊として人に取り憑き、その取り憑かれた人物の身体で作品を出し、絵師として世に名前を遺してきた絵太郎が、知識はあるけど画力がほぼゼロな予備校生に取り憑くも、上手いだけでは評価されない現実を目の当たりにして、予備校生の「頭脳」と絵太郎の「テクニック」で難関受験を突破する!というそこそこ力技で進んでいく話でした。あの状態で藝大に合格したふたりがこれからどうやって大学生活を送っていくのかがとにかく気になります。

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