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芸術家でも誰でも、事務作業を疎かにしては何も成し遂げられない。夢を現実にするたった一つの技術、それが《事務》です。この作品は作家、建築家、画家、音楽家、「いのっちの電話」相談員として活動する坂口恭平が若い頃に出会った優秀な事務員・ジムとの対話で学び、人生で実践した方法を記したテキストを原作にコミカライズして、《事務》ってめちゃくちゃ大事!ってことが漫画でわかる本です。「自分に自信がない」「ハードルを高く設定しがち」「悩んで行動に移せない」足らないことは《事務》でした。【目次】はじめに ジムとの出会い第1講 事務は『量』を整える第2講 現実をノートに描く第3講 未来の現実をノートに描く第4講 事務の世界には失敗がありません第5講 毎日楽しく続けられる事務的『やり方』を見つける第6講 事務は『やり方』を考えて実践するためにある第7講 事務とは好きとは何か?を考える装置でもある第8講 事務を継続するための技術第9講 事務とは自分の行動を言葉や数字に置き換えること第10講 やりたいことを即決で実行するために事務がある第11講 どうせ最後は上手くいくあとがき
建築家で作家でアーティストの坂口恭平さん。マンガ好きにとっては『月刊スピリッツ』での連載のイメージも強いでしょうか。
そんな坂口恭平さんが、noteで執筆していた「生きのびるための事務」を『みちくさ日記』の道草晴子さんがコミカライズしたものがこちらです。
私は元のnote版を少し読んだ程度だったのですが、改めてこのコミカライズ版で通読すると本当に素晴らしい内容だなと感じると共に大きな勇気をもらえました。
皆さんは「事務」というとどういうイメージがあるでしょうか?
「メインの仕事とは別に存在する、やらねばならない多量の雑務」
「面倒くさいもの」
「堅苦しくて地味な仕事」
そんな風に捉えている人も少なくないと思います。かくいう私も、書類作成や確定申告などやりたくもない事務に時間と労力を割かねばならないのが辛く感じる人間です。しかし、この本を読むと「事務」というものの概念ががらりと変わります。
この書は、筆者が普通の就職はできず将来何をして良いのかも定まっていなかった大学4年生のときの筆者が、イマジナリーフレンドのジムを通してどうやって生きのびていけば良いのかを体得していった実体験を描いたものです。
家賃28000円の家に住み、日雇い仕事をして月給12万円ほどだった坂口さんが一体どのようにマインドと行動を変えて1000万円以上を稼ぎながら自由にやりたいことをして生活できるようになっていったのか。
ピカソやデュシャンなど、名だたるアーティストたちも事務をやりながら生きのびていっていたことに触れながら、
「≪事務≫こそが創造的な仕事を支える原点」
「≪事務≫は継続することでどんどん伸びていく」
「冒険があるところに≪事務≫がある」
「死ぬまで好きなことをやる続ける人生において、≪事務≫は好きとは何かを考える装置」
「会社設立は≪事務≫の中でも最高のブツ」
「やりたいことを最優先に即決で実行するために≪事務≫はある」
といったことを語っていきます。普通にイメージする事務とは、大分異なるのではないでしょうか。おおまかに言えば「スケジュール」と「お金」の管理こそが事務なのですが、それを具体的にどのように行なっていけば素晴らしい未来を切り拓いていけるのかが語られ、読んでいるだけでもワクワクします。
ジムは「イメージできることはすべて現実になる」と語りますが、私も他でもよく語られるその言葉は人生の指針のひとつでした。そして、そのイメージをどう具体化して実際の行動に移していくのか。そうしたところも実体験を通して非常に解りやすく記されています。
・自己を肯定も否定もする必要はなくて、否定すべきは己が選んだ≪事務≫のやり方だけ
・才能というのは毎日やり続けられること
・≪将来の夢≫の前に≪将来の現実≫の具体的なヴィジョンを思い描き書き出し、≪将来の現実≫に楽しくないことは1秒も入れない
といった部分も、とても共鳴します。
坂口さんは自身の電話番号を公開して(作中にも登場します)、自殺者を減らすための相談窓口「いのっちの電話」という活動も行っています。この本には、少々クセの強いところもありはしますが、それでもタイトルにある「生きのびるための」という部分が大きな意味を持つところもあります。文字通り、この本を読んだことで生きのびることができる人もきっといるはずです。
自分の好きなことだけをして生きていきたい人、将来何をして生きていけば良いのかわからない人にこの本が届いて欲しいです。すべては、≪事務≫のやり方で変えていけます。