焼肉屋の前で臭いだけ嗅がされてるような食い足りなさ
人とケモナー(異形)の対比と言うモチーフの一貫性と、それがヒロイックな他作品に比べると主題に置かれている点での目新しさがあるが、『アイアンナイト』が人間にエス(フロイト)を、ケモナーのユキにスーパーエゴを対比させるような鮮烈さがあったのに対し、そのような強烈さやそれに匹敵する丁寧さが無いので、発想は面白いが良くも悪くも食い足りないと言った感じ。
『アイアンナイト』、『レッドスプライト』の屋宜知宏最新作!!獣人が住む星に一人の地球人が訪れる。獣人たちは初めて目にする“ヒト”の姿に動揺し!?獣たちの“ヒト”観察が始まる…!!
真面目で獣人としての文化やプライドがある分、アニメ『けものフレンズ』のサーバルちゃんのように「すっごーい!」で終わらせることもできず、なかなか貧乏くじを引いてしまった報道官だなと思った。
意思疎通できるようになったあとは、相手は好意をもって接してくれているためか、生真面目な報道官がだんだんと懐柔されていく様子もおもしろい。
報告書で、腕部が性器も同然と黒塗りで隠されているのもおもしろかった。
獣人同士だと、手でワシワシ撫でられてもそれほどのことにならないんだろうか。
考えたら、ワシワシされたり、ペンで遊ばれたり、ある意味ハニトラ。
知能もケモナーたちより高そうとあるので、これらはすべて計画のうちで、この地球人のあとから大量の人間がこの星を征服しにくるのではと疑うほど、接した人たちはほだされている。
実際は静かに悲しい現実が隠されているのだけど。
読み進めれば読み進めるほど、ケモナーになったこの人間に幸あれと思うお話だった。