憧れすぎて、好きすぎて、これはもう嫌いなのかもしれない。
そんなセリフを言う恋愛漫画があったような気がする。

これはそれの漫画描き版といえばいいんだろうか。

自分がマンガ家・大森卓を超える存在になって、大森卓を殺したいという意味不明な発言をする大学1年生女・三秋縁。

人に作ったものを見られると快感を覚えるという性癖も意味がわからない。

普通なら見られることに抵抗を覚え、それに抗って人に見せ、批評を聞いて、プライドをずたずたにされながら強くなっていくはずなのに。
作品を見られて快感を覚えるせいか、配布するほど、見られることに躊躇がない。
作品に対する指摘はその場で直し始める。

この子、ものすごくできる子だ!!

対して主人公の小松くん。
若い時分に、ネットで好き勝手に作品を批評され、荒らされ、潰れかかっている所を担当らしき編集者はリアルでも批評してメンタルを潰してきて。
トラウマが深すぎるだろうに、小松のトラウマを横に置かせてしまう、三秋さんのマイペースさもなかなかすごい。

デコボコというか、デコデココンビだと思うのだけど、この二人によるボーイミーツガール&サクセスストーリーとなるのか。
今後の展開が楽しみ。

読みたい
推し殺す
SNS全盛時代のボーイミーツガールまんが道 #1巻応援
推し殺す タカノンノ
兎来栄寿
兎来栄寿
Xのタイムライン上で「いいね」「リポスト」の数が表示されなくなるというニュースが出てきて話題になっていました。蓋を開けてみればあくまでもタイムライン上での措置ということしたすが、個人的には「いいね」数や「リポスト」数という情報が本質を遠ざけているケースも多いのでまったく見えなくなってもそれはそれで良いのではないかと感じます。正確な情報や良識に配慮した投稿より、そうではないものの方がより拡散性は高いですし。 そんな折、このタカノンノさんの新作の『推し殺す』1巻が発売されました。 高校生にして「大森卓」というペンネームで漫画家デビューしたもののネット上での酷評を受けマンガを描くことができなくなってしまった主人公・小松悠が、大森卓作品のファンすぎて「殺す」と意気込んでマンガを描いている女性・三秋縁(みあきゆかり)と大学で出逢う物語です。 明らかに大森卓に影響を受けすぎており、またさまざまな点でこなれていない縁のマンガに対してつい的確なアドバイスをしてしまったことで縁から自分の編集者になって欲しいと懇願され、ふたりの奇妙な関係が始まっていきます。 悠が本当は相手から巨大な感情を抱かれる大森卓その人であるという秘密。それを隠したまま進行するところにストーリーとして引きがあり、また才能を持ちながら描けなくなってしまった主人公と、まだ原石ながら努力する才能はずば抜けており性格的には拗らせていてかわいい縁の主軸となるふたりのキャラクターと関係性もとても良く、どちらにも共感しながら読み進めました。タカノンノさんの描くこういう女の子は本当に良いです。 この作品には縁がSNSアカウントを作ってそこでマンガをアップロードし多くの人に見てもらおうとするエピソードがあります。その際、9万人以上のフォロワーを持ち在学中にプロデビューを果たしているminaruこと先輩の石黒成美に対して勝負を挑んでいくことになります。 ここが現代的で面白くもあり、SNSの功罪がよく表れていて考えさせられる部分でもあります。 良い面は、もちろん多くの人に見てもらえることです。一昔前、たとえば『バクマン。』などの時代はまず編集者に見初められて雑誌に載らなければ、たくさんの人にマンガを読んでもらうこともデビューすることもできませんでした。しかし、今はSNSでバズれば編集の方から声がかかることもありますし、何なら出版社を通さずとも個人で出版したりサブスク形式で配信したりといった手段もあります。作中でminaruが今は編集なんか要らない自己プロデュースの時代と言い放ちますが、そういう面も存在することは否定できません。純粋な作品を創る力とは別に、それを効果的に届けるための力もまた大事な時代です。 一方で悪い部分はといえば、SNSでの評価はあくまで指標にすぎないにも関わらずそれが目的化してしまいがちであること。また、それによって心を乱されることです。「いいね」「リポスト」「フォロワー数」などにこだわり過ぎると、やがてしんどくなる時が来ます。なぜなら最初は1つの「いいね」でも嬉しかったはずなのに、やがて「100いいねしか来なくてあまり伸びなかった」という風に感じられてしまうからです。何なら万バズが日常化していれば1000いいねでも少なく感じる人もいるでしょう。本来は1000人に良いと思ってもらえるなんて途轍もないことなのですが。 そもそも、まったく同じものを投稿したとしてもタイミングや運によってどれだけ拡散されるかは全然変わります。バズったから良い作品、バズらなかったから悪い作品、そんなはずはないのですが潜在的にはそう捉えてしまいがちです。良いマンガがまったくバズらなかったり、それが後日に驚くほどバズっていたりする光景は何度も見てきました。 それでも、やはり多くの人に見てもらっているというのが数字で実感としてわかるのは作り手側として見れば嬉しい部分も大きいことでしょう。人間、承認欲求にはなかなか抗えません。そして、編集部側などでも数字が出ているということは上を説得する材料として非常に強力です。故にそこに頼ってしまいがちです。 ただ、バズりやすさだけを求めると作品が類型化していきます。ちょうど先日『ビッグコミックオリジナル』の編集長がこのように仰っていました。「編集者は流行に乗っかるのが仕事ではなく流行を作り出すのが醍醐味である」と。研ぎ澄まされた作家性の原液を浴びるようなその人にしか描けない味がする作品を、自分の好きな気持ちや負の感情を煮詰めたものを読ませて欲しいと、贅沢な一読者としては常に願っています。 だからこそ、縁がわかりやすくバズるための手法を安易に使わず正統派なマンガを描いて勝負していこうとする姿勢を見せたとき、私は心の中で拍手喝采でした。 縁たちのまんが道はこの先どうなっていくのか。 悠が再びペンを握れる日はくるのか。 楽しみに見届けていきたいです。
え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?(コミック)
コスプレをして働く人がフロアにいたら
え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?(コミック)
ゆゆゆ
ゆゆゆ
めちゃくちゃな仕事環境と業務量のなか、主人公の心を守ったコスプレの完成度はさっぱりわからないのだけど、作中でそのコスプレ&振る舞いに対し「解釈違い」と言われているのを見て、神は三物も四物も与えないのねと思ってしまった。 プログラミングも裁縫も、人間関係を円滑に進めるコツもよく知っている主人公。 さらにガチのコスプレ衣装姿を会社の人に見られても、普通に仕事ができる心の強さをもっている。 美容室で髪をサラサラにして、エステでお肌ツヤツヤにして、ネイルをサロンでバチッと決めて…が彼女にとってのコスプレらしい。 ものすごく優秀な人とは言え、職場のコスプレはどうなの?TPOは?と思ったものの、それなら和装ならOKかとふと疑問が湧いてきて。 さらにおかしな環境のせいで、おかしなことをし始めた(服装以外はおかしくない)なら、そもそも、おかしな環境を提供したブラック企業がおかしいわけで…と考え始め、混乱してきてしまった。 プログラマ向け塾がメインの舞台となるが、プログラミング知識は不要。 大変な状況にある方への処方箋というか予防薬というか、スカッとするというか、誰かと生活するうえでの心構えというか、そういうかんじの漫画だった。
くまみこ
女子中学生巫女と、神の使いのクマ
くまみこ
ゆゆゆ
ゆゆゆ
『江戸前エルフ』が好きな方は『くまみこ』も好きかもしれないなと思った。 連載もアニメ化もこちらが先みたいなんですが、知った順番が逆だったので…。 こちらは女子中学生巫女とクマ。 神の使いである、人語を話すクマのナツと祖母と一緒に暮らしている女子中学生のマチは、高校は都会へ出たいと思っている。 でも家電は使うと即壊すほど苦手(冷蔵庫は使用可)、パソコンは少し操作すればブルーどころか黒画面。 Suicaもヒートテックも知らず、クマのナツに都会クイズを出される始末。 薪割りやら、かまどで飯炊きするマチをみているとこれはどのくらい前の漫画なんだろうと思ったのだけど、ナツを見ると現代に戻される。 ナツはパソコン・タブレット・インターネット等々に詳しく、操作も問題なく、テレビも見るし、村には携帯電話の電波が届かないことも知っている。 マチ以外のムラの人たちはナツと同じくらいの知識量にみえるので、もしかしたらマチだけおかしいのかもしれない。 第一話を読んで、そんなマチが都会の高校へ進学して、都会生活をやいのやい過ごす物語かと思いきや…。 村からほぼ出ない。 出るのはナツが与える都会慣れ試練か、村おこしを望む従兄弟の手伝い(なかば強制)。 慣れ親しんだ人以外と会話は苦手で、服も巫女服・制服・ジャージくらいしか持っておらず「服を買いに行くための服がいる」状態。 なんなら村につながる橋が、割とよく崩れ落ちているように見える。村から出られない。 よく考えたらまだ中学生なんだし、そこまでして、ひとりで街なかのイオンやらなんやら行かなくても…と思うのは私が地方の田舎出身だからだろうか。 マチとナツ、二人のやり取りが楽しい。あっという間に読み進めてしまう。
魔入りました!入間くん外伝
外伝 一巻 カルエゴ編
魔入りました!入間くん外伝
ゆゆゆ
ゆゆゆ
ストーリー設定は、あの悪魔(人)たらしの入間くんがまだいない世界(もしかすると、産まれてすらいない?)、そして見慣れた大人の面々もまだ初々しいというか若さというか、まだ幼さを感じる年齢の時代。 学校も荒れています。よくあの秩序だった今の学校へ変わったなと驚くばかりです。 登場する、若かりし頃のオペラさんは無茶苦茶というかめちゃくちゃ度合いがフルスロットルで、とてもおもしろいです。大人げない無茶ぶりと思っていましたが、落ち着かれていたんですね。 バラム先生は本編でもあったように、絵本を読む、夢見る子として描かれています。かわらず怪力ですが。そして、しれっと出てくるバラム先生のご両親。他のご家庭と同じく、似ています。 主人公のカルエゴ先生は、真面目というか厳格というか、その性格ゆえに昔から苦労していたことが伝わってきます。 まさか自分が召喚されてエギーちゃんになると、想像だにしないでしょう。 大人になっても「仲が良い」三人組の学生時代。 本編では読むことができない、作者本人によるサイドストーリーは、とてもおもしろかったです。 読み直したら、あとがきに「外伝は基本カルエゴの物語なのですが、他にもお話したい悪魔たちは沢山います」と書かれていて、カルエゴ編続刊も、別の方の外伝も楽しみだなと思いました。 続刊を気長に待っています。
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真夜中サウンドトラック

真夜中サウンドトラック

憧れの鷲巣さんが酔いつぶれてしまったので、家へと送っていけば、部屋には大量のCDが……!?(月刊コミックビーム2022年4月号 別冊付録小冊子【コミックビーム アルバ 2022 SPRING】)
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ショートショートショートさん

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私のことも生きてるだけエライってほめてくれよ――!! 彼氏ほしいけど、モテないし、仕事はそこそこに頑張ってるけど……。ネットに発表してる自作の小説の評判はまぁ…うん……。てか、なんで出版社声かけねぇんだよ!! イタイのになぜだか愛おしいショートさんの日常マンガが描き下ろしを加えて、ついに書籍化!
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