アップデートというよりも根本のお話
見た目も収入も申し分ないけどモラハラ気質で古い男が、恋人にフラれたことをきっかけに自らをアップデートしていくストーリー。 恋人が仕事終わりに作ってくれたご飯に、色味がどうだ出汁がどうだバランスがどうだとケチ(アドバイス)をつけ、そりゃプロポーズしてもフラれるわ!ざまあみろ! と思うものの、ちゃんと傷つきちゃんと学ぼうとする姿を見るとだんだん応援したくなってくる。 そして変わろうとするのは何も男ばかりじゃない。勝男をフった鮎美も、自分が本当に好きなものを見つけ人生を変化させていく。 読んでいくと2人はお似合いのカップルだったんだなあ、と皮肉じゃなくて本当に思う。 理屈じゃなく惹かれあった男女が、結婚という目的や男と女という役割に縛られてお互いが見えなくなっていく、なんて悲しい話。 そうさせているのは世間の空気や常識や今まで歩んできた人生など要因は様々だけど、「わたし」と「あなた」だけをしっかり見ていれば起こらないはずなのになあ……。でもそれが難しいんだよね。 勝男と鮎美の人生が再び交わるかどうかはさておき、2人もわたしもみなさんも、自分と相手の好きを大切にして人間関係を築いていけたらいいなと思った。
長年連れ添った料理上手の彼女。
その料理に対して、褒めつつも、余計な一言をいつも言う主人公。
全体的に茶色いとか、顆粒だしはありえないとか。
そんなこだわる割には、自分では料理なんてしたことすらないという体たらく。
この時点で昭和なオヤジでモラハラ感が満載なんですが、記念日に狙ったかのようにプロポーズをするも、彼女から
「んー無理」
とフラれる。(当然)
そこから、自分の何が悪かったのか?
を同僚のアドバイスを通して、変わっていこうとする話。
手始めに自身の好物である筑前煮をつくってみると、その難しさに発狂。
いつも彩り豊かに手際よくつくっていた彼女の偉大さに気づく。
そこから思い出を頼りに少しずつ自分でも料理をはじめていく流れ。
今まで自分の価値観で空気の読めない発言ばかりしていた主人公が、他者の価値観に触れて自分を見つめ直し改めていく姿が純粋に尊敬した。
年食うと、変わるのってホント大変だから。
また彼女がフッた理由も、主人公のモラハラだけではなく、意外と深い。
自分らしく生きたいと思いながらも、他人と折り合いをつけるのって難しいだけに、そこで誰もが悩むんだと思う。
読んでて自分自身も考え直すきっかけになった。
タイトルから最初読んだときは、ただのモラハラ男の別れ話かと思ったが、大事なもののために自ら変わろうとする人間の葛藤を描いていて、素晴らしかったです。