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「こんなところで生きたくはない」。 娘たちにケアつきホームに入れられてしまったクミコは76歳の日系カナダ人、夫はとうに亡い。よかれと思って決めてくれたのだからと一度は従ってみたものの、ひそかに逃げだしてイースト・バンクーバーの街なかに小さな部屋を借りた。 長女とはメールで連絡をとっているものの、住所は明かしていない。 部屋を自分好みにしつらえ、食べたくなったものを食べ、公営プールで泳ぐささやかな楽しみを満喫するクミコを狙い、ケアホームからあとをつけてきたのは「死の影」だった。 死神の子分として働く「影」がクミコを連れ去るべく押し入ってきたその日、気楽な日常は一変する。 持ち前の頭脳、ユーモアのセンス、新しく得た味方たち、昔なじみとの絆――すべてを動員して生きるための闘いが始まったが、老いの身でいつまで運命に抗えるだろうか?
主人公はカナダに住む日系のバイセクシュアルおばあちゃん。
故縁、新しいつながり、そして家族、あらゆる力を借りながら死という運命に抗うお話。
特に元カノとの腐れ縁シスターフッドが良かった。
『蜘蛛の糸』(芥川龍之介)をオマージュしたラストの展開、尿漏れで戦う姿は滑稽でいて、カッコいい。