夢なし先生の進路指導 笠原真樹
「夢」を追うのは良いことなのか
これ高校の教科書にして欲しいと強く思ったくらい衝撃的でかつ素晴らしかったです。
作者が『群青戦記』の人とわかって『リビドーズ』に続き、作風の幅広さにびっくりした。
内容は進路指導で夢を追うことの現実を伝える主人公、通称夢なし先生。
彼と彼の教え子1人を中心に、その教え子が自身の希望する進路を選んだ先で起きる苦悩や葛藤を描いた内容。
教え子1人ずつエピソード的に紹介するオムニバス形式な感じ。
夢を追うことのリスク。
夢がかなう人の確率や他者事例を頭では理解しているつもりでも、どこか
「自分は絶対そうならない」
と思い込んで突き進み、結局自分もその他大勢だったり
周囲の期待や意見との折衷によって、結果捻じ曲げられた夢だったことに気づかず、本当に自分が大事にしていたもの何か?を見失ったり。
その手の、夢を追ったことで得た代償をリアリティたっぷりに描いてくれます。
大きな夢をもて、夢を諦めるな、なんて安易に言えなくなります。
本作の素晴らしい点は、仮に失敗したとしても夢なし先生の指導によって、きちんとその後の未来(現実)を描いていること。
夢見て失敗した後の悲惨さだけではなく、何度でもやり直せるという力強いメッセージを感じます。
夢がある人もない人も、本当に多くの、特に色んな可能性に溢れた若者に届いてほしい作品だと思います。