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『絶対に風呂に入りたくない彼女VS絶対に風呂に入れたい彼氏』の蝉丸さんが描く、前作とは打って変わって不穏な物語です。
近年では、主人公が無条件で努力もせずに無双する作品を好む方が多いといいます。仮にイケメンでなかったとしても女性にやたらと好かれる、そんな主人公はたくさん見ると思います。
しかし、本作はそんな無条件で好かれる主人公という存在に対してある種メタ的な立ち位置にある気がする作品です。気がする、というのはまだこの作品の核、ヒロインの高校2年生の完璧黒髪ロング美少女・透桜子(とおこ)の真意の深淵が見えないからです。おじさんが女子高生に好かれる物語といえば『娘の友達』のような作品もありますが、ああいった類の物語ともまた性質を異にしています。
主人公は、結婚相手の娘である透桜子に最初からやたらと好かれます。それどころか、父娘というラインを踏み越えるようなスキンシップをしてきます。その行為には、果たしてどんな動機があるのか?
公式からも「仄暗いホームサスペンス」として提示されていますが、これはサイコホラーなのか? ホワイダニットのミステリーなのか? とも思わされる内容です。そして、その混乱に更に拍車をかけたのが今回発売された単行本における描き下ろしの最後の描写です。この物語を読み解くためには、絶対に必要であろう重大なピースが描かれていました。
単行本の続きとなる連載最新話付近もなかなかすごい展開になっていますが、この描き下ろしと併せて考え点と点を繋ぎ合わせたときに浮かび上がる像が果たして現実のものとなるのか……。
透桜子のピュアモードと闇モードのギャップを美味しくいただきながら、続きを楽しみに待ちます。