終末を旅する少女が、人々の想いに触れ、出会い、別れ
現代よりちょっと進んだサイバーパンクみのある近未来世界のポストアポカリプス。怪物と疫病によって崩壊し汚染された世界を“浄化”しながら人類の生き残りを探して旅をする少女。 説明口調を極力排して没入感を高めてくれているため、「破滅後50年経つのになぜ食料があるのか」「なぜ主人公の少女は感染しないのか」など、読んでいて「あれ?」と思わせる謎が結構あとになってから判明したりする。登場人物に愛着が増して没入度が高まっていくにつれ、情報量も少しずつ増えていく。SF特有の、情報の物量でいきなり殴られるあのハードルの高さがなく、とても読みやすい。
表紙に描かれた廃墟の美しさに思わずジャケ買い。滅亡した世界を旅する少女(と小さな相棒)の物語だ。生存者を探し続ける1人と1匹だが、行く先々で出会うのは死体と機械ばかり。圧倒的な孤独と悲しいほどの静寂。…にもかかわらず、読みながら不思議と温かな気持ちになれるのは、きっとそこに人々の愛が残っているからだろう。買って良かった一冊。
ちなみに…表紙だけじゃなくて本編の廃墟の書き込みも細かくて、作者の建物愛をビンビンに感じたわ(笑)