作画が違いすぎるふたりのピュアラブストーリー
※ネタバレを含むクチコミです。
少女マンガの主人公のような美少女・姫路ルル。たくさんの友達に囲まれて、キラキラした高校生活を送っていたルルは、父親の仕事の都合で転校することに。新生活の期待に胸をふくらませるルル。しかし転校した先はなにかがおかしい。クラスメイトの顔の濃さも線の太さも全然違う――そこは劇画(ギラギラ)の世界だった!同じクラスに幼馴染の極楽寺禅の名前を見つけ再会を喜ぶルルだったが、彼もまた変わり果てた姿になっていた!漫画誌・ハルタで連載開始直後から大反響を呼んだ、ジャンルを越える恋物語、待望のコミックス第一弾!
『鋼鉄奇士シュヴァリオン』、『青武高校あおぞら弓道部』と立て続けにすばらな作品を発表してきている嵐田佐和子さんの新作。嵐田佐和子さんが描くという時点で全幅の信頼を置いているのですが、今回はまたかなり変化球寄りでありながらも160キロストレートのようにズバッと心のストライクゾーンに球を放っていただきました。
というわけで、今日は『キラキラとギラギラ 』1巻の範囲で好きな所で打線を組んでみました。
1番センター 少女マンガと劇画のハイブリッド
ヒロインのルルは少女マンガの世界の住人のような絵柄ですが、転校先の獄門高校ではヒーローの禅を始め周りの画風が一気に80年代劇画調へと移り変わります。ルルだけが少女マンガの画風のまま話が進行するのはシュールなギャグマンガのようですが、幼馴染との再会から始まるピュアなラブストーリーとしても上質で楽しめます。むしろ、この違和感が背景にあるからこそ主軸の物語が引き立っていると言えるかもしれません。
2番ショート ″絵に描いたような 不良″
ルルが不良を見た時のリアクション。フリー素材になりかねないほど、ルルの率直すぎる言が面白いワンシーン。
最近ではめっきり見ることも少なくなった稲妻フラッシュもこの作品では多用され、ノスタルジックな気分になります。トーンの柄も、懐かしさが溢れるものがありますね。
3番レフト 女番長・愛子の「およし」
女番長と書いて「スケバン」と読む。
取り巻きがルルにちょっかいを出そうとした所を、木の上からアメリカンクラッカーで静止しながらの「およし」。まさか令和に「およし」と言い放つ女番長を見ることになろうとは、と謎の感動すら覚えました。愛子さん自体、好きにならずにはいられない良いキャラです。
4番ライト カンカンカンカンカンカンカンカン
上記の女番長・愛子が愛用し武器にもなるアメリカンクラッカー。令和の時代にアメリカンクラッカーを見ることになろうとは。そして、アメリカンクラッカーの存在を知らないルルが、愛子よりもアメリカンクラッカーの正体に気を取られているのも好きです。執拗なまでのカンカンというオノマトペ、描くのも楽しかったのでは。
5番ファースト プリント届け
学園ものでは定番の、休んだキャラクターにプリントを届けに自宅まで行くイベント。その際に初めて部屋に入るなどのイベントも高確率で併発し親愛度を高めていくシーンとなるのが一般的ですが、本作のプリント届けは少々一線を画しています。必見。
6番セカンド ″豪腕″の東郷、左利きの嶋、俊足の陣
スポーツテストで活躍(?)する脇役たちで、禅の引き立て役とも言いますが、何気に東郷の放った球の地面の破壊痕は凄まじく、計測不能であった禅と比べても殺傷力は上に見えます。他校との抗争の際には、射撃部隊として活躍して欲しい逸材です。
7番サード わざわざ文房具屋に行く不良
禅たちへの嫌がらせのために、学校内にある道具でもまかなえそうな行為を律儀に文房具屋にまで買いに行く不良がかわいいです。
8番キャッチャー メロンパンを買ってきてくれる不良
『男塾』か『北斗の拳』にでもいそうなクラスメイトたちとの賭けに買ったルルが、好きなパンを買ってもらえることになるシーン。3人が1個ずつメロンパンを購買で買っている絵図を想像すると、笑顔になれます。
9番ピッチャー 禅くんが図書室で読んでいる本
『赤毛のアン』
『百年の孤独』
『孤島の鬼』
『沈黙』
『アルジャーノンに花束を』
『ゲーテ全集』
『車輪の下』
本棚を見ればその人のひととなりが解ると言われますが、このラインナップを見れば禅くんのパーソナリティも伝わってこようというもの。理解者がおらず孤独な彼を、ルルとの再会前は物語が救っていたのかと思うとグッと来ます。
願わくば、禅はルルとの幸せな日々を送って欲しいです。