押見修造先生の表現はどこまで進化するのか
押見修造先生の最新作。新たな代表作である「血の轍」も出身地の群馬県が舞台になっていて実体験がベースにあるような気がしましたが、今作「ひろみ」はよりそれを感じました。ペンタッチがいい意味で力が抜けているのも、頭の中の朧げな記憶をそのまま描き表したい意図があるように思えました。すでに「血の轍」の時点で、研ぎ澄まされた心理描写は誰も真似できない地点にありましたが、押見先生の表現がこれから更に進化することを予感させられますね。物語の展開としてもちろん後編が気になりますが、その前に子供である主人公に罪悪感を植え付けた女教師はマジ許すまじ…!
子供の頃のしなやかな身体や声を失い、20歳の自分にはもう美しさは残っていないと思い悩む世阿弥は、50を過ぎてもいまだに12、3歳の少女を演じて舞台に立っている父・観阿弥が目の前にいる事実を受け入れられずにいる。父親の美しさが圧倒的であればあるほど妬ましく、自分の醜さが情けない。そんな世阿弥の姿に、父は思うところがあり…という話でした。
その渦巻く感情が顔に溢れ出てしまっている様が、父をも唸らせるほど美しかったという事実に、本人は全く気づかないというオチには鳥肌が立ちました。しかしこの親子を描くのにこの1話だけでは短すぎる。再登場を期待するお便り、編集部に送らせていただきますよ!