雑貨店併設の小さなカフェ
タイトルは「雑貨店とある」だけど、舞台は併設された小さなカフェが多い。 素敵な雑貨店でお茶できると、たしかに幸せですね。 カフェメニューに選ばれたご好意の果物や旬のものを使ったお菓子や軽食、お茶。 このメニューの説明にしっかり文字数を取られていて、素材の効能を食べる前に説明されると効果倍増しそうなかんじがして、読んでいる方も食べたくなってきて、なんだかとても良い。 登場人物のアルバイトの男子高校生は店長を不思議な人と見ているけど、男子高校生も不思議な人に思える。 少しだけ周りとテンポが違う世界にいる感じがする。 物語は料理を食べに来たお客さんだったり、店員の男子高校生だったり、いろいろな人の事情が、料理の話を挟みながら綴られる。 大きな問題は起きているけど、何も起きなかったと思えるほど、最後はほっとできる大団円。 なんだか癒やされた。 手作り柚子胡椒の話を読んでいたら、柚子胡椒の唐揚げが美味しかったことを思い出した。 また作ろう。柚子胡椒を買おう。
ああ、心がささくれ立っている。気が滅入る。心を手っ取り早く立て直したい、口角を上げて笑いたい……私はそんな時に、甘味が食べたくなる。
まずは一口、ほんの少しでいい、甘味を口に入れた瞬間の、脳がすうっとして、幸せな気持ちになるあの瞬間。
形は可愛く。目でも楽しんでから、少しずつ形を崩して、口の中に運んでいく。
そして食べる場所も、素敵な方がいい。あのいい感じの店に行く、という高揚感が、甘味の浪漫を倍増させる。
そんな素敵な甘味処を夢見る私の理想郷が、この作品にはあった。
★★★★★
場所は東京、「雑貨店とある」と看板が出ているお店。中には和雑貨が並び、落ち着いた雰囲気。店内には飲食スペースが設けられ、店主の手による飲料や甘味が提供される。
その店には何かに躓いたり、落ち込んだりする人が引き寄せられる。彼らは店の雰囲気と、何よりも提供される甘味に驚き、癒されていく。
季節のメニューが響いたり、懐かしの味に感涙したり、食材の意味に感動したり……という「メニューの小粋さ」も素晴らしい。しかしそれ以上に、どのメニューも甘さが脳天に響きそう!
店主の甘味は、自分のこだわりよりも食材や食べるお客の事を考えて作られていて、甘味好きのツボを徹底して突いてくる。お客と甘味の話をする、どこか呑気な店主は楽しそうだ。
そんな「雑貨店とある」は素晴らしい癒しスポットなのだが……店主もバイト君も暇そうなのが、ちょっと心配。
お客を立てて損をする店主と、店を心配するバイト君、そして大量の柚子の行方は……次巻も、大切な癒しスポットがつぶれてしまわない様に祈りながら、出てくる甘味の味を空想して愉しみたい。