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サバンナRX-3のロータリーエンジン12Aの音が背中にはりつきそうになったとき、無意識のうちに右手はスロットルを全開位置にしていた…後輪の滑る音と同時にカワサキZ400FXの心臓も嫌な音を立てて2気筒死んだ…。ガードレールを突き破ったRX-3は、だれがみたってキロいくらの鉄クズになり果てていた。FXのDOHCもだらしがねえやと思いつつ、205キロの糞重い車体を押しつつ登る坂道は、FXの入院費をどうやって払おうかと考える――沢渡鷹、17歳の秋。彼は愛車を直すために訪れたバイクショップで、奥多摩を恐るべき速さで走るもうひとりの「鷹」の存在を知る……バイクまんがの大傑作が電子書籍化!
公道での二輪バトルに夢中になっていた沢渡鷹は、
友人のバイク事故死をきっかけに東条鷹と知り合う。
東条はレーシングチームに所属するサーキット・レーサー。
東条の影響もあり沢渡もサーキットを走ること、
レーサーになることを決意する。
バイクを通じて邂逅した二人の鷹だが、
実は同日同病院で生まれて火災事故に巻き込まれたという
運命が複雑に絡み合った仲だった。
ときに闘い、ときにそれぞれの道を行った二人の鷹は
やがて一つの同じ目標に向けてバイクを走らせることに。
感性で走る沢渡鷹と考え計算して走る東条鷹という
相反するキャラの二人の鷹を中心に
バイク(主に耐久レース)を中心としたバイク・ロマンと
沢渡鷹と母親・緋沙子を中心とした母子愛的な人間ドラマが
描かれている。
連載中盤、作中で登場キャラがギャグ的に
「この漫画は当初は大型バイクロマンとして始まったが
今では大型バイクメロドラマ」
と嘆いていた。
確かに、そうともいえる内容でもあった。
あれは作者の新谷かおる先生の自虐ネタだったと思う。
母親・緋沙子のキップの良い女傑ブリが人気になったようで、
徐々に主人公顔負けの活躍をするようになったし、
沢渡鷹自身も当初のバイク命の硬派的な印象から、
ときに急に女好きなキャラになったりとか、
各キャラの設定や話の進行方向にブレがあるような
感じを受けることはあった。
この漫画はどこへ向かおうとしているのだろう?
と思うようなことも。
だがバイクとバイクに関わる人間を
中心とした物語であることは一貫していた。
最初にバイク仲間の事故死で始まった意味とか、
ふたりの鷹が実は病院で事故に巻き込まれていたこととか、
それらから派生した色々なストーリーが
バイク漫画という枠組の中でちゃんと大団円に向かっていく。
色々な意味で連載第一回の雰囲気からは
最終回の内容は予想が出来なかったし、
おそらく当初の構想とは違う、途中変更的な
キャラや話のブレはあったのだろうと思う。
だが、それでもこの漫画はちゃんとしたバイク漫画、
ヒューマン・バイク漫画の名作だと思う。