自身の性について考えさせられる一冊
「女になりたい」「男になりたい」 生きてきて一度は思ったことがあるそんな気持ちを、小学生のころから燻らせるふたりの男女が主人公。 またふたりの周囲の人たちもひとくせふたくせもある個性的なキャラクターが多いのに、登場人物の生活感や現実味が、隣町にいるのではないかと考えてしまうほどリアル。 題材としてはすこし特殊だけれども、こんな子いるよね、と思えるような作品でした。
女の子になりたい男の子と、男の子になりたい女の子。フクザツで繊細な、思春期物語。女の子のかわいい服を着たいという気持ちが抑えきれない内気な男の子・二鳥修一は、転校先の小学校で、背が高くカッコイイ女の子・高槻よしのと出会う。彼女もまた、「男の子になりたい」思いを胸に秘めた女の子だった。フクザツで壊れやすい心を抱えて思い悩む現代の少年少女たちを、優しく透明に描き出す、思春期学園ラブストーリー!
ビーム連載当時に友達からすすめられて読み始めて、志村貴子先生のファンになったきっかけの作品です。
トランスジェンダーを扱った長編作のなかでも名作に入ると思う。
この可愛らしい表紙からはあまり想像できないほど、パートによっては読むのが辛くなるような部分もありました。それでも登場人物たちは年齢を重ねながら、色んな人と出会い、各々で視野を広げていくうちに「こっちが心配しなくてももう大丈夫だな」といった感じで手元から離れてくような感覚にもなりました。
ここからは細かい個人的な好みの話ですけど、主人公にとりんの姉・まほちゃんの彼氏の瀬谷くんがほんとイイです。まほちゃんが弟にはちょっときつく当たりがちで気が強いのに対し、瀬谷くんのイケメンなのに控えめで押しが弱い感じがたまらないんです。とにかく性格がいい。
もうひとりは千葉さん。千葉さんはたぶん放浪息子読者のなかでもかなり人気が高いキャラクターのはず。可愛くて強くてでも不器用で、そして可愛い。
もしこれから読むという方は瀬谷くんと千葉さんに注目してみてほしい。