有難くもなければ良心もない、詐欺師で偽坊主の罰当たりストーリーにコメントする
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姪っ子の歌

完璧な読切がここにありました。

姪っ子の歌 ますだ悠
兎来栄寿
兎来栄寿

現在、マンガワンで『暑がりヒナタさんと寒がりヨザキくん』を連載中のますだ悠さんによる読切です。こちらの作品で「第1回YGマンガ大賞]入選&審査員特別賞」を獲ったそうですが、さもありなん。あまりにも完璧な読切で身震いしました。もう大好きです。 “今思うとずっと姪のことを憐れんでいたと思う” という手書きのモノローグから始まるこの物語は、物書きになりたいという夢を果たせずOLとして無感情に働くさゆりと、彼女の姪であり夢を追いギターの弾き語りをするゆづはの二人に焦点が当てられ進行していきます。 さゆりが如何にして夢を抱き、それを叶える為に周囲の反対も跳ね除けて努力し続けて、そして結果的に挫折するに至ったか。それは悲しい物語ですが、夢を持ちながら叶えられなかった多くの人が共感する在り方でしょう。 姪には自分と同じような想いを味わって欲しくないと思いながらも、渦中のゆづはは目を輝かせながら夢を叶える為に邁進していく。その時の複雑な胸中が見て取れます。それはやがて今の自分のようになってしまう可能性が高いという単純な心配や憐憫だけではなく、もしかしたら嫉妬のような感情も入り混じるものだったかもしれません。 最後まで連綿と続く手書きのモノローグと、「姪っ子の歌」というタイトルが重なった時、破れた夢の果てに生まれた物を目の当たりにした時、最大の感動が押し寄せました。かつて自分から生じた情熱が今は冷めてしまっていても、往時には新たな土で萌芽を誘っており、そこで咲いた小さな花が再び冷めた自分にも熱を灯す。そんな在り方に尊さを覚えました。 二人の絆に胸が暖かく、熱くなる素晴らしい物語でした。会社が違うので難しいかもしれませんが、『暑がりヒナタさんと寒がりヨザキくん』が単行本化される際などに収録して欲しいなぁと思います。話題にならずに埋もれてしまうにはあまりにも惜しい作品です。

この世界の片隅に

漫画と映画を久しぶりに見返した!

この世界の片隅に
かしこ
かしこ

2025年のお正月にNHK広島放送で映画「この世界の片隅に」が放送されたのは、今年で原爆投下から80年が経つからだそうです。この機会に私も久しぶりに漫画と映画をどちらも見返してみました。 やはり漫画と映画の一番の違いはリンさんの描き方ですよね。漫画では夫である周作さんとリンさんの関係について触れられていますが、映画ではありません。とくに時限爆弾によって晴美さんと右手を失ったすずさんが初めて周作さんと再会した時に、漫画ではリンさんの安否を気にしますが、映画ではそれがないので、いきなり「広島に帰りたい」という言葉を言い出したような印象になっていました。映画は子供のまま縁もゆかりもない土地にお嫁に来たすずさんが大人になる話に重点を置いているような気がします。それに比べると戦時下無月経症なので子供が出来ないとはっきり描いてある漫画はもっとリアルな女性の話ですよね。だから漫画の方が幼なじみの海兵さんと2人きりにさせた周作さんに対して、あんなに腹を立てたすずさんの気持ちがすんなり理解することが出来ました。個人的には男性達に対してだけではなく、当時の価値観で大事とされていた後継ぎを残せない自分に対しての悔しさもあるのかもしれないと思いました。けれどもあえて女性のリアルな部分を描きすぎない選択をしたのは、原作である漫画を十分に理解してるからこそなのは映画を見れば明らかです。 久しぶりに漫画と映画を見返してどちらも戦争が普通の人の生活も脅かすことを伝えているのはもちろん、すべてを一瞬で無いものにしてしまう核兵器の恐ろしさは動きのある映画だから強く感じた喪失がありました。そして漫画には「間違っていたら教えて下さい 今のうちに」と巻末に記載されていることに初めて気づきました。戦争を知らない私達が80年前の出来事を想像するのは難しいですが、だからこそ「この世界の片隅に」という物語があります。どんなに素晴らしい漫画でもより多くの人に長く読み続けてもらうのは大変なので映像化ほどの後押しはないです。これからも漫画と映画どちらも折に触れて見返したいと思います。

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