私が山田芳裕作品を知ったのは、わりと早くて「大正野郎」の単行本が出たころでした。弟の部屋に本が転がっていて、最初は「なんてレトロな絵なんだろう」と思って、あまりそそられなかったんですが、ページをめくっていくうちに、ついつい読み込んでしまっていました。なぜなら、どうしてこんな地味なところを突けるんだろう、という着眼点の凄さと、それを作品にまで仕上げるパワーに心ひかれたから。「大正野郎」はタイトル通り大正時代にこだわっています。そしてその後もスタイルには大きな変化がなく、今作ではこだわる部分が“哲学”に。侍が刺客に対して仏陀を引き合いに出してダメ出しし、林羅山を説いても、作品中では何の違和感も無い。葛飾北斎に意見したり、松尾芭蕉を船頭と語ったり、さらにはソクラテス、ナポレオンなどなんでもござれ。タイトルもパスカルのもじりですし。これがうまく武士道や粋、そして生き方といった、目に見えない観念とマッチしているんですね。まさに一味違う切り口の時代劇、です。

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考える侍

かんがえるさむらい
著者:山田芳裕
ジャンル:歴史
最新刊:
2006/11/17
かんがえるさむらい
考える侍
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望郷太郎

望郷太郎

大寒波襲来、壊滅的打撃、世界初期化。人工冬眠から500年ぶりに目覚めた舞鶴太郎(まいづるたろう)は、愛する家族も財産も全て失った。絶望の淵から這い上がり、理想の暮らしと生きがいを求めて、祖国「日本」を目指す。ヒトのと文明の歴史をさかのぼるグレートジャーニー。人類よ、これが未来だ。

仕掛暮らし

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「へうげ」の世=桃山時代から約二百年。「江戸」は居よいか住みよいか。複雑怪奇な人間模様、闇で「仕掛」ける裏稼業。元締・音羽屋半右衛門、嫌な渡世だ。「仕掛人・梅安」シリーズの原点『殺しの掟』(講談社文庫)より三篇を厳選。山田芳裕が池波正太郎に捧ぐ極乙のオマージュにて候

デカスロン

デカスロン

連続2日間にわたって10種目の競技を行い、総得点で争う陸上競技――デカスロン。すべてで一線級の成績を残さなければならないため、勝者はキング・オブ・アスリートと称えられる。無名の元高校球児の風見万吉、卓越した運動能力と底抜けの楽天パワーを武器に、国立競技場での挑戦がはじまる!!

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へうげもの TEA FOR UNIVERSE,TEA FOR LIFE. Hyouge Mono

へうげもの TEA FOR UNIVERSE,TEA FOR LIFE. Hyouge Mono

群雄割拠、下克上の戦国時代。立身出世を目指しながら、茶の湯と物欲に魂を奪われた男がいた。織田信長(おだのぶなが)の家臣・古田左介(ふるたさすけ)。天才・信長から壮大な世界性を、茶聖・千宗易(せんのそうえき=利休)から深遠な精神性を学び、「へうげもの」への道をひた走る。生か死か。武か数奇か。それが問題だ!!

ジャイアント

ジャイアント

男のデカさは、メジャーではかれ!ドラフト指名、就職内定、おまけに恋愛…ぜ~んぶNG。身長2m超、誰よりもデカく、誰よりも運の悪い男・巨峰貢が一念発起!目指すはアメリカ、メジャーリーガー。一度決めたら、どんっとNEVERGIVEUP!!お前は一体何者か、見せてみやがれジャイアント!!

大正野郎

大正野郎

芥川龍之介をこよなく愛し、竹久夢二の絵を部屋に飾り、番茶よりもほうじ茶を好む、大正時代かぶれの青年・平徹(たいらてつ)。彼と、笑顔が素敵な由貴ちゃんら下宿先の住人たちの、ごく普通で、どこか普通じゃない日常を描く、山田芳裕デビュー作!

ザ・プライザー

ザ・プライザー

父の死をきっかけに収入が無くなってしまった大学生・渥美中郎。働く気もない彼は、雑誌の懸賞や美術展の1等、競馬、カラオケ大会、仮装大会などの賞金を狙って金を得る賞金稼ぎ「ザ・プライザー」として生きていくことを決意する。日本で暮らす英国人女性・ビッキー(光子)と同棲し、彼女をも「賞金」で養おうとする渥美は、金欠の危機をくぐり抜けながら、緻密な作戦、傾向と対策を練って賞金を獲得していく!!

泣く男

泣く男

ギターを愛する男・木田は超絶テクニックを持ちながら、一度演奏に入ると自分とギターと音だけの世界に没入してしまい、そのため、バンドメンバーや周りの人々からは敬遠されていた。しかし、自ら奏でるギターの音を「音があんまりかわいいもんで」と言う彼は、それでも弾くことをやめない。表題作『泣く男』『木田』ほか全9編を収録した山田芳裕傑作短編集!!

しわあせ

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西暦2030年代。「怒り」をはじめとする負の感情を封印し、他人との争いを避けることを美徳とする共同体が形成されている世界。感情統制がなされ、人々は皆偽りの笑みを顔に浮かべている。そんな中、’80年代の生き残りで、古きよき時代を知るひとりの老人が、平穏な毎日にドロップアウトした――!

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