死刑を執行する刑務官
死刑という重いテーマと真正面から向き合った作品です。父親のコネで刑務官になり死刑囚と接することになった実直な性格の主人公・及川。凶悪殺人犯のことが怖いと感じるのは彼らのことを理解しようとしないからだ…という考えに至ってからは、積極的に彼らと関わり更生の道を一緒に模索するようになります。しかし心を入れ替えて自らの罪と向き合ってもすでに決まっている死刑からは逃れることは出来ません。いくら凶悪殺人犯とはいえ国が人を殺してしまう、命を持って罪を償うという死刑制度は本当に正しいのか、主人公は疑問に思うようになります。 登場する死刑囚たちの中でも渡瀬という男と主人公の物語を主軸に描かれていますが、個人的には食堂を経営していた家族を惨殺してしまった星山がメインの回が一番心に残りました。主人公が人形を手作りして家族というものを思い起こさせて自分の罪を認識させることに成功する訳ですが、改心してすぐに死刑が執行される展開にはなんとも言えなくなりました。そういう流れを組みながら親友と言えるまで深い仲になった渡瀬からの「死にたくない」という望みを主人公が却下したのには驚きです。最終的には疑問を持っていた死刑制度についても、死と向き合うことが自らの罪を反省するきっかけに繋がるんじゃないかという考えになっていました。 しかしモリのアサガオ2で、渡瀬の死に携わってから主人公が精神を病んだことが描かれていて、やはりこの問題は深い森の中にあるのだなと思いました。
刑務官と死刑囚の交流を通し、死刑制度の意味に向かい合った本作。重いテーマを丁寧かつ大胆に扱っており、連続ドラマの原作になるほど内容がつまった、読み応えある作品です。最初はタイトルに引っかかったんですよね。”モリ”というのは何となくわかるけど”アサガオ”って何?と。これは作品の最初でわかります。しかしそれがわかった時点で、話の本筋に引き込まれている自分がいました。冒頭、ある死刑囚の刑が執行されます。立ち会った刑務官とは信頼関係が結ばれていた様子。この二人の間にはいったい何が?と思わせておいて、舞台は過去へ。この死刑囚・渡瀬が登場するのは物語の中盤で、それまでは収監されている死刑囚の罪と、死を待つだけの極限状態での真実が主人公・及川の眼を通して明らかにされます。この過程の中でテーマが浮かび上がってくるのですね。それは”死刑”に作品として答えをだすこと。そして及川は渡瀬の死をもって、それから逃げることなくきちんと答えている。これは本当にすごいことです。