死刑という重いテーマと真正面から向き合った作品です。父親のコネで刑務官になり死刑囚と接することになった実直な主人公の及川。凶悪殺人犯のことが怖いと感じるのは彼らのことを理解しようとしないからだ…という考えに至ってからは、積極的に彼らと関わり更生の道を一緒に模索するようになります。しかし心を入れ替えて自らの罪と向き合ってもすでに決まっている死刑からは逃れることは出来ません。いくら凶悪殺人犯とはいえ国が人を殺してしまう、命を持って罪を償うという死刑制度は本当に正しいのか、主人公は疑問に思うようになります。

登場する死刑囚たちの中でも渡瀬という男と主人公の物語を主軸に描かれていますが、個人的には食堂を経営していた家族を惨殺してしまった星山がメインの回が一番心に残りました。主人公が人形を手作りして家族というものを思い起こさせて自分の罪を認識させることに成功する訳ですが、改心してすぐに死刑が執行される展開にはなんとも言えなくなりました。そういう流れを組みながら親友と言えるまで深い仲になった渡瀬からの「死にたくない」という望みを主人公が却下したのには驚きです。最終的には疑問を持っていた死刑制度についても、死と向き合うことが自らの罪を反省するきっかけに繋がるんじゃないかという考えになっていました。

しかしモリのアサガオ2で、渡瀬の死に携わってから主人公が精神を病んだことが描かれていて、やはりこの問題は深い森の中にあるのだなと思いました。

読みたい
野球で話せ

漫画で話せ

野球で話せ
かしこ
かしこ

何を隠そう私も自分の描いた漫画を第11回青年漫画賞に応募していたのです。とはいえ私は記念受験のようなものなので箸にも棒にもかからないのですが…それでも言わせて下さい、私のライバルって中原とほるだったのかよ!!と。いや〜でもこれは完敗です。だって全編を通して「漫画を描くのが楽しい」って感じだったじゃないですか。働きながら漫画を描くのは大変です。やりたいことがあるのは幸せだけど、休みの日なんかに一人で引きこもってコツコツ描いてると「誰にも求められてないものをこんなに一生懸命やって何になる?」と虚しくなります。それよりも情けないのは描きたいから描くのではなく「漫画家になりたいから描いている」という気持ちのブレが起きてしまうことです。それでは本末転倒なのです。だからこそ作中で叔父さんが言っていた『表現を続けなさい』というセリフに胸を打たれて勇気づけられました。それは連載デビューを経験された後も医師として働きながら投稿を続けられたご自身に対しての言葉なのかもしれませんが、私もこんな風に漫画と向き合いたいと思わされる姿でした。いつか私の漫画を中原さんに読んでもらいたい。漫画で話したいです!

ドラゴンヘッド

本当に恐ろしいのは人間の心なのです…

ドラゴンヘッド
かしこ
かしこ

初めて読みました!が、昨年出版された「総特集 望月ミネタロウ」が出た後に読んでよかったかも。 全編通してみると、やっぱり序盤の修学旅行からの帰り道に新幹線がトンネルに閉じ込められて脱出しようとする場面が、何が起きたか分からないワクワクという漫画的な面白味がありますね。それが徐々に逃れられない自然災害だったと判明するのは、エンタメとしてはカタルシスが足りないかもしれません。ただ、(実際に連載中には阪神淡路大震災も起きたそうですが)前出のインタビューによると構想段階から「天変地異は起こるけどそんなスペクタクルな話じゃない」「闇をテーマにした地味な作品」というのは決めていたそうです。 人間は暗闇の中にいると存在しない怪物を想像して恐れてしまうけど、本当に恐ろしいのはそんな自分と向き合わないことである…というのは、ものすごく普遍的なテーマだから、いつ読んでも「今に通じる話だ、これ…!!」と思うんだろうな。特に今現在のSNSを中心にした不寛容な時代の雰囲気ってこれが原因なんじゃないかなって思いました。 ドラゴンヘッドを読むとその後に東京怪童を描かれたのも自然な流れだったんだな〜と分かりますね。

モリのアサガオ(1)
モリのアサガオ(2)
モリのアサガオ(3)
モリのアサガオ(4)
モリのアサガオ(5)
モリのアサガオ(6)
モリのアサガオ(7)
モリのアサガオ 番外編
本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
幸福な人生

幸福な人生

あの”虎の子”が帰ってきた!?「虎ちゃんがゆく!」、大学生の息子が恋人を妊娠させてしまい……お互いの家族の思いが重なる「花の咲く庭」などを収録。人間の感性を揺さぶる郷田マモラ短編集、初の電子書籍化!!

考えるサル

考えるサル

サリーと呼ばれる美術学校の学生が殺害される事件が発生。大阪府警の猿田彦が捜査に当たる事になるが、被害者の顔には薬物と思われる粉末が着手していることが判明し……郷田マモラの初期作品、電子書籍となって初登場!!

人間やねん

人間やねん

”虎の子”が再び!? 「虎ちゃんがゆく! <虎ちゃん、誘拐犯になるの巻>」、実写映画化もされた遊郭で生きる女の人生を描く「蝉の女」などを収録。人情の町・大阪を舞台に、郷田マモラの描く短編集が電子書籍となって登場!!

モリのアサガオ2

モリのアサガオ2

「親友のお前の手にかかって死んでいけたら……オレは本望や」死刑囚 渡瀬満の死刑執行から10年。執行ボタンを押した及川直樹の苦悩は続いていた。たま拘置所に配属された及川は再び死刑制度の渦に飲み込まれていく。文化庁メディア芸術祭大賞受賞作の続編がついに登場!! 郷田マモラ衝撃の問題作!!

MAKOTO 完全版

MAKOTO 完全版

幽霊の見える監察医、白川真言。真言が幽霊たちのこの世に残した未練を解明すると、彼らは成仏する。想い合う二人の霊が伝えたかった事。幸せな死を迎えたはずの老人の心残り。気弱でどこまでも駄目な人間と思われた男の勇気。尊敬出来ない父親の隠された過去。年老いた元警官が晴らした村人の無念。しかし、真言にはどうしても成仏させられない幽霊がいた。妻の絵夢だ。切なく愛情に満ちた10のエピソード。

[poor] (プア) ゼラニウムの誘惑

[poor] (プア) ゼラニウムの誘惑

「英雄…かわいそうな子……」2018年10月2日、原宿のヘアサロンで殺人事件が起こった。被害者はファッションデザイナー 仙川亜衣。加害者はその店の店長 増子英雄。増子にはある秘密があった。追う者、追われる者、匿う者。事件の謎が明らかになるに連れ、それぞれの闇が浮かび上がる。奇才・郷田マモラが描き出す究極の人間ドラマ。

SPY×FAMILY

SPY×FAMILY

名門校潜入のために「家族」を作れと命じられた凄腕スパイの〈黄昏〉。だが、彼が出会った“娘”は心を読む超能力者! “妻”は暗殺者で!? 互いに正体を隠した仮初め家族が、受験と世界の危機に立ち向かう痛快ホームコメディ!!

【推しの子】

【推しの子】

「この芸能界(せかい)において嘘は武器だ」 地方都市で、産婦人科医として働くゴロー。芸能界とは無縁の日々。一方、彼の“推し”のアイドル・星野アイは、スターダムを上り始めていた。そんな二人が“最悪”の出会いを果たし、運命が動き出す…!? “赤坂アカ×横槍メンゴ”の豪華タッグが全く新しい切り口で“芸能界”を描く衝撃作開幕!!

宇宙兄弟

宇宙兄弟

2025年。兄は、もう一度だけ自分を信じた。筑波経由火星行きの物語がはじまる!本格兄弟宇宙漫画発進!幼少時代、星空を眺めながら約束を交わした兄・六太と弟・日々人。2025年、弟は約束どおり宇宙飛行士となり、月面の第1次長期滞在クルーの一員となっていた。一方、会社をクビになり、無職の兄・六太。弟からの1通のメールで、兄は再び宇宙を目指しはじめる!

BLUE GIANT

BLUE GIANT

ジャズに心打たれた高校3年生の宮本大は、川原でサックスを独り吹き続けている。雨の日も猛暑の日も毎日毎晩、何年も。「世界一のジャズプレーヤーになる…!!」努力、才能、信念、環境、運…何が必要なのか。無謀とも言える目標に、真摯に正面から向かい合う物語は仙台、広瀬川から始まる。

ゴルゴ13

ゴルゴ13

すべてが謎に包まれている男・ゴルゴ13。フィクションの背後に光る恐るべき事実……ゴルゴ13が放つ銃弾の軌跡が、世界の濁流の行方を左右する!!英国諜報部は、大戦末期に莫大な偽札を隠匿した元ナチの親衛隊長を消すためにゴルゴ13を雇った。要塞化した城で待っていたものは!?

ガンニバル

ガンニバル

山間の村「供花村」に赴任してきた駐在・阿川大悟。村の人々は大悟一家を暖かく受け入れるが、一人の老婆が遺体で見つかり、大悟は村の異常性に徐々に気付き、ある疑念に囚われる…。 「この村の人間は人を喰ってる」──。 次々と起きる事件、村に充満する排除の空気、一息も尽かせぬ緊迫感で放つ、驚愕・戦慄の“村八分”サスペンス堂々開幕!!

BLUE GIANT SUPREME

BLUE GIANT SUPREME

止まるわけにはいかない宮本大は、単身ヨーロッパに渡る。降り立ったのはドイツ・ミュンヘン。伝手も知人もなく、ドイツ語も知らず、テナーサックスと強い志があるだけだ。「世界一のジャズプレーヤーになる…!!」練習できる場を探すところから始まる挑戦。大の音は、欧州でも響くのか―――

娘の友達

娘の友達

家庭では「父親」として、会社では「係長」として、「理想的な自分」を演じるように生きてきた主人公・晃介。だが、娘の友達である美少女・古都との出会いにより、彼の人生は180度変化する。社会的には「決して抱いてはいけない感情」に支配されながらも、古都の前では自己を開放でき、社会の中で疲弊した心は癒やされていく……。「社会」のために「自己」を殺す現代社会へ鋭く切り込む、背徳のサスペンスが幕を開ける。

死刑を執行する刑務官にコメントする
モリのアサガオ
モリのアサガオ