滅亡した国の文字を守る、壮大な歴史ロマン
現代日本の男子高校生が、13世紀初頭のチンギス・ハーンが生きた時代のモンゴルの世界へと繋がり、西夏文字をめぐる壮大な戦いに身を投じるお話。 祖国の西夏を滅ぼされた女、シュトヘル(悪霊という意味)と意識が同居する形で、当時のモンゴルへと接続する高校生スドー。 西夏の文字のすべてを記した玉音同を奪いたいチンギス・ハーンと、西夏の文字とシュトヘルに魅せられ、それを守ろうとするハーンの息子ユルールを中心に、登場人物の様々な思惑が複雑に絡み合う。 歴史モノとしての骨太さはもとより、戦闘シーンの迫力はさすが伊藤悠先生という他ない。 特にハラバルの戦いぶりは必見。ややファンタジックな弓使いであったが、個人的には一番カッコいいキャラだと思っている。 読みすすめるうちに、自然と文字が持つ「歴史の重み」のような物に思いを馳せるようになった。 ある意味「文字」そのものが主役とも言える異色の作品。 ぜひモンゴル人に読ませて感想を聞いてみたい。