目を奪われる美しい色彩の終末世界で
平沢ゆうなさんと言えば『僕が私になるために』という実録性別適合手術エッセイマンガが非常に面白くためになったのですが、それからいくつかの短編を経て始まった待望の連載が『白百合は朱に染まらない』、そしてこの『鍵つきテラリウム』です。 『鍵つきテラリウム』は、(コミックスにも掲載されている)webで掲載された0話にあたるフルカラーのプロローグを初めて読んだ時、そこに描かれていた美しいポストアポカリプスのコロニーの風景に一瞬で心奪われました。元々、私は廃墟萌えの性質があり終末世界系は大好きですし、特に人の手によって造られた建造物が崩壊してそこに草花が生い茂っている感じも大好物。それはもう堪りません。 更に、人間とロボット的なテーマも入ってきて心の奥底まで優しく、時に切なく響き渡るストーリー。それらが生み出すハーモニーは非常に上質で心地良いものでした。ずっとこの世界に浸っていたいと思える稀有な作品です。平沢ゆうなさんのカラー背景がとても良く単行本の店舗購入特典各種も素晴らしいので、ずっと描いてて頂きたいと願ってしまいます。 『少女終末旅行』、たつき監督作品、ニーアオートマタなどが好きな方にもオススメしたい一冊。
ポストアポカリプス感溢れる雰囲気の中、世界の崩壊を止める鍵を探すため「アルコロジー」と呼ばれる箱庭のなかを旅するチコとピノの姉弟の物語。
表紙を見てもわかる通り絵の書き込みの密度が高く、特に荒れ果てた人工の建築物とその中に芽生えた自然物が異様なまでに調和した背景がこの作品の世界観を端的に表現している。
そんな世界観なので「少女終末旅行」のような作品が好きな方をターゲットにしてそうな作品だけど、読み進めるとその印象からちょっと違う魅力をみせてくれる。
世界が崩壊する前から所謂ロボットが人間と同価値に社会に存在する世界観で、どうやら生き残っているロボットのコアを集めることが世界の崩壊を止めるのに必要らしい。
コアを回収するにはロボットを停止ないし破壊する必要があるのだが、そこに2人の考え方の違いと"ロボットが人間と同価値"だったという独特の世界観が関わってくる。
ピノはあくまでコアの回収に執心していてロボットの破壊も辞さないというスタンス。一方のチコはロボットの"人格"を認め、ロボットがその生を全うした上でコアを回収することを望む。この2人が時に衝突しながら旅をしていく様は、何か自分の知らない新しい概念に触れたような、新鮮な感覚を受けさせられる。
なので表紙からはあまり想像できないけど「AIの遺電子」「アンドロイドタイプワン」のような作品が好きな方にも薦めたい作品。
1巻まで読了