SFといってもジャンルに多少の幅があり、王道なSFの他に、ファンタジーっぽいもの、超常現象や超能力など色々ある。岡崎二郎作品は宇宙家族ノベヤマを読んだことがあるけれど、あの作品のようにとても気持ちがほっこりとするような話が多い。このアフター0もバッドエンド的なお話はほとんどないと思う。

これでもかというくらい示唆に富んだストーリー、感情表現、舞台設定など多種多様な要素がみっちみちに詰め込まれている。「そうきたか!」と唸らざるをえないひねりや、なるほどと思わせる登場人物の考え方(たぶん作者の考え方なんだろう)など、読むと自分の世界が広がるような漫画だ。こういう感覚を抱いたのはグレッグ・イーガンの「ディアスポラ」を初めて読んだとき以来かもしれない。比較的ゆるい感じの絵なので、いわゆるハードなSF好きな方々はそこで敬遠してしまうかもしれないが、騙されたと思って一度読んでみてほしい。

「これも学習マンガだ!」にも選出されているようで、なるほど確かにお子さんが読んでもほぼ安心だし、かつ、多くの驚き・発見が得られる良書だと思う。しかもわかりやすい話が多い。自分も、もっと子供の頃に読んでみたかった。

プラネタリウムで出会った那由他さんは、不思議な男性でした。意気投合して居酒屋で話を聞くところによると、彼らは1万2千年前から、地球上の文明を、未来の為に育てている「担当者」であるとのこと。まったく愉快な彼の話ではあるけども、育成に失敗した星を消すという彼らの仕事のもうひとつの面を知り、主人公の...

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足摺り水族館

言葉で説明しづらい、不思議な読後感に浸れる

足摺り水族館
鳥人間
鳥人間

panpanya先生の作品は、不定期だけど繰り返しパラパラと読み直したくなる、アナログで手元に置いておきたいマンガのひとつ。 その商業第1作『足摺り水族館』。 個人作品を再構成しつつ、未収録作品を追加されたもの。この雑多な感じが魅力だなーと思う。panpanya先生といえば現実と非現実をフワフワと漂いながら行ったり来たりするような、不思議な世界観が魅力。 表題作「足摺り水族館」は作中で3編に分かれて描かれている。古めかしい栞に誘われて不可思議な空間へ向かう。中編は写真と文章で日記みたいな感じ。後編はなんだかもう集大成といった雰囲気。 他にも様々なテイストの作品があって面白い。 お母さんからのメモに全く読めない謎の言語で書かれた品物が一つあり、それをなんとかして買いに行こうとする「完全商店街」。木炭絵?っぽい画風の「イノセントタワー」(2つ目の京都タワーに向かうお話)。不可思議な空間を少年が歩いていく描写で台詞が一切ない「無題」。喋るし動く自動販売機のお話「マシン時代の動物たち」などなど多種多様。 これ以降の作品も、もちろん素晴らしいけれど、本作はとくに各作品個性が際立っている気がする。まさに混沌。中には合わない作品もあるかもしれないが、「読んでよかったなー」と思うエピソードがきっとみつかる、はず。 そして「無題」がさっぱりわからないので誰か教えてほしい……(笑)

半世紀の箱庭

近未来老後SF!

半世紀の箱庭
鳥人間
鳥人間

軌道エレベータが建設された結果、沸き起こる宇宙バブル。数多くの建造物が宇宙に作られ、そこに移住する人々が増えた時代。冒頭で、若い夫婦が宇宙へと旅立つ。その先にある夢が語られると思ったら……そういうのはすっ飛ばして、まさかの老後が描かれている。 老夫婦の暮らす場所は、宇宙バブルの頃には最先端だったホテルが老人ホーム化され、老朽化に耐えながら運用されているようなところ(低重力環境は老人ホームにちょうどいい)。医療の進歩で高齢者の肉体的な若返りはある程度、実現している。しかし脳についてはまだ未知数な領域で、認知症は解決されていない。そんな状況で暮らす、認知症を患った妻と、その夫のお話。 なるほど自分たちが年老いた場合、こういう環境に身をおくことになるのか……そんな想像をしてしまうほど近未来の世界観がすごく興味深かった。そして、ほとんどのSFが寿命を超越したり、心身共に若さを保ったものな気がするが、この作品は「わりと普通に老いる」という視点で描かれていてとても新鮮に感じた。 作中、リハビリを受ける高齢者たちが描かれている。認知症になっても手先を使うことは覚えているということで、キーボードやゲームコントローラーをガシガシ使っている姿にちょっと笑った。 自分が老人になっても……ゲームはしてそうだなぁ(笑)

Bloodborne: The Death of Sleep

原作リスペクト感がたっぷりあるコミック版

Bloodborne: The Death of Sleep
鳥人間
鳥人間

Bloodborneは元々はフロム・ソフトウェア開発のゲーム。その海外でのコミカライズ版があると知って早速買って読んでみた。購入したのは日本語化されたもの。中身は海外著者のアメコミ風(?)だが、日本語版のカバーイラストは、漫画家の林田球先生による描き下ろしだそうだ。 たぶん原作ゲームを知らない人が読むと、さっぱりわからないと思う。死んで、狩人の夢の中で目覚めて、また現実をやり直すというループめいた現象は、ゲームをやってる人しかピンとこないだろう。逆に原作を知っている人であれば、この雰囲気や謎めいたストーリーで「あぁこんな感じこんな感じ!」と思うはず。 ストーリーは著者のオリジナルだそうだ。とはいえ原作のストーリーはフロムお得意のユーザーに想像をさせるところが多く、多様な解釈ができる不明瞭なもの。ストーリーについては数あるアイテムテキストや状況から推測しなければならない部分が多いゲームだ。おそらく著者もその辺りをよく理解しており、原作の世界観に著者の考えを上手く盛り込んでいると思う。 そして原作リスペクトがとてもよくわかる描写やキャラクターたち。例えばボスモンスター「血に渇いた獣」が原作通り絶望感たっぷりに描かれている。ゲームで最初こいつに出会ったときの「どうやって倒すんだよ……」と途方に暮れた感覚を思い出した。他にもボスでいえばアメンドーズ。NPCでは狩人デュラ、ゲールマン、人形など。ノコギリ鉈や回転ノコギリといった仕掛け武器。旧市街や禁域の森、漁村などのエリアが描かれていてファンならニヤリとするだろう。 全編オールカラー、カッコいいコマも多く、見応えがある。ストーリーは希薄だが隙間を想像しながら楽しめる。とりあえず1回だけ読んでみたが、繰り返し読めば色々発見がありそう。言い換えれば不明瞭な話なので、モヤモヤとした感じを覚える人もいるかもしれない。原作ファンでも好みは分かれそうだ。

アルキメデスのお風呂 単行本版

ありそうでなさそう?(いやないかなw)素粒子研究所内ラブコメ

アルキメデスのお風呂 単行本版
鳥人間
鳥人間

アルキメデスのお風呂ってあれか、黄金の王冠の逸話かな。 東海村のJ-PARCが監修しているということで、興味を湧いて読んでみた。 弁当屋店員でぽっちゃり女子の原陽子は仕事でもプライベートでもボロボロになり、駅のホームで自殺を図るという、いきなりなんとも重い話からスタートする。 しかし、そのとき助けた人物が(ちょっとおかしな)王子様のような理系男子。二人には意外な接点があり……といった感じでラブコメ展開へとつながっていく。 作中の舞台となるA-PARCは実質、実在のJ-PARCなのだろう。たぶん。筑波のKEKへは一般公開日に何度か行ったことがあるので、そういうときに見聞きしていたので存在は知っていたけど、さすがにこちらは行ったことがない。その内情が見て取れるというのは面白い。 ラブコメ要素には正直あんまり興味がない(笑)が、素粒子の基礎研究という何に役に立つんだかわからない研究と、暗中模索な恋愛模様を交錯させて描く様はなかなか面白い。それに各キャラクターがなかなか個性的で面白いし、1巻時点では各キャラクターの背景に何やら色々抱えていることがありそうで、この先が気になることは確か。おそらく今後登場するであろうエミィも曲者であってほしいなー。

あふたーぜろ
アフター0 1巻
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岡崎二郎作品集

岡崎二郎作品集

過去と現在、現実と幻想の境界に立つトワイライト・ミュージアムにようこそ ▼第1話/契約▼第2話/機械仕掛けのジャングル▼第3話/星の訪問者▼第4話/手の上の友人▼第5話/滝の神▼第6話/ミッシング・ライフ▼第7話/幸せの十円玉▼第8話/勝利の神▼第9話/幸福(しあわせ)アレルギー▼第10話/ハイテクの背徳▼第11話/黥面上のアリア▼第12話/二つの山の物語▼第13話/遥かなる孤島▼第14話/城壁 ●登場人物/実男(大学卒業後1年目から連載し始めた小説で賞をとる/第1話)、奈穂子(大学4年生/実男の彼女/第1話)、マイケル田中(医学系研究者/第2話)、ボブ・ハウエル(会計士/マイケルの親友/第2話)、松園先生(宇宙の構造を研究する博士/第3話) ●あらすじ/実男の書く小説がいきなり面白くなり、賞まで受賞してしまう。しかし実男は日に日に暗くなっていき、奈穂子は彼の愛情に疑問を感じる。そんなある日、実男は真剣な表情をして奈穂子に、思いもよらない秘密を打ち明けるのだった。ビデオの画面に棲む悪魔の猫と、小説のアイデアをもらう代わりに実男がビデオの中に入る契約を交わしたというのだ(第1話)。▼ブラジルのシンジケート命を狙われてアマゾンに身を隠していたボブとマイケル。しかし殺し屋は、ジャングルのなかにまで潜んでいた。太股を撃たれたボブは、マイケルとともにインディオの村にかくまってもらい、不思議な力をもった少女によってその傷を治療してもらう。ある日その少女は、大きな川魚を素手で何匹も捕えていた……(第2話)。▼日夜、正確な宇宙地図を作るための研究を重ねている松園博士は、いつの日かETとのコンタクトが実現するという見解をもっている。ある日、地球上に巨大UFOが出現! 世界中が騒然としているなか、松園はETとのコンタクトを心から待ち侘びていたのだが……(第3話)。●その他の登場人物/芹沢(幼児体形のまま成長させた動物ネオテニマルの研究者/第4話)、宇津木(海洋科学研究所の職員/第6話)、晴美(考古学研究所の助手/第11話)、アリサ(無人島に漂着した少女/第13話)、ザッガード(クシャリア王朝の盗賊/第14話)

岡崎二郎SF短編集 ビフォー60

岡崎二郎SF短編集 ビフォー60

デビュー30周年! すべて単行本初収録作品13本! 『アフター0』をはじめ、SF短編漫画の名手として、幅広い読者に支持されている岡崎二郎。デビュー30周年を記念して、今まで様々な事情で単行本未収録だった短編13本を収録した短編集がついに刊行! 10数ページに及ぶ加筆修正や、前説、後説漫画、リストを含め全280ページ、圧巻のボリュームです! かわいい絵柄、いやされる情感、時に心臓を抉るような風刺…。SF短編の名手が、デビュー30周年にふさわしいこだわりを発揮した一冊、お楽しみください。 ▼内容紹介 収録作品は「アフター0 neo」2本、「NEKO2」2本、「SUNちゃん」5本、「国立博物館物語」、「時の添乗員」、ほか読切2本。作品ごとの前説、後説では、執筆当時の経緯や単行本未収録だった理由などを赤裸々に明かした、読み応えたっぷりの内容となっています。

国立博物館物語

国立博物館物語

東京は上野の一画にある「新東京博物館」では現在、アミューズメント・パークの建設が進行中。このアミューズメント・パークは“楽しく遊ぶ”をモットーにする革新的な考えを持つ理事長の構想によるもの。そして、その目玉となるものが入館者が太古の世界をバーチャル体験できる“スーパーE”だった。この“スーパーE”とは、超弩級ニューロ・チップAI(人工知能)で、インプットされた白亜紀の情報と6千万年にわたる自然淘汰の歴史から、自ら生物進化の歴史を再現していくコンピュータ。計画では、このコンピュータの中で再現されている「恐竜が闊歩している時代(白亜紀後期)」を来館者がバーチャル世界で体験できるのだ。しかし、まだ開発中の段階の今は、この“スーパーE”によってバーチャル世界で体験できるのは館員では新人の森高弥生ただ一人だった……。

緑の黙示録

緑の黙示録

山之辺美由(やまのべみゆ)は幼いころに“ひのきじいさん”と話をする方法を父親から教わり、植物と会話することができるようになった。しかし、自分勝手な人間たちに対する植物の声は、決して温かなものだけではなかった!!――「人間ヲ憎メ!」植物の声が聞こえる。「植物」が「人間」に反抗する!!SF短編の名手・岡崎二郎が描く“警告の書”。

時の添乗員

時の添乗員

がむしゃらに働き、今や大企業の会長にまで昇りつめた杉浦。だが彼には、置き忘れた過去があった。少年時代の恋人が、彼の旅立ちの際に言った言葉が思い出せないのだ。ある日、訪れた旅行案内のブースで、杉浦は「戻りたい過去の一点に行けるツアー」に誘われる…。SFコミックの名手・岡崎二郎が贈る、時空を越えたファンタジー・ドラマ!!

Neko2

Neko2

多摩丘市に住む亜紀ちゃん(8歳)は、一見どこにでもいるようなフツーの小学生。しかし、実はなんとネコ語が話せてしまうのだ!理由は定かではないが、彼女が子供の頃、母親に隠れて飼い猫ミミのおっぱいを飲んで育ったため…と思われる。そんな亜紀ちゃんが、今モーレツに怒っている。多摩丘市が、増えすぎた野良ネコを一掃しようと様々な作戦を打ち出してきたからだ…。

宇宙家族ノベヤマ

宇宙家族ノベヤマ

野辺山雄一は仕事ひとすじの会社人間。だが、出世が決まった矢先、息子の翔太が地球外文明への親善大使「メッセンジャー」であることが判明、宇宙へ行かなければならなくなった!危険な旅に幼い翔太ひとりで行かせるわけにはいかないが、自分も行けば出世の道は閉ざされる…。悩んだ末に、一度は残ると決めた雄一だったが…!?

大平面の小さな罪

大平面の小さな罪

JR新宿駅に貼られたポスターが、ある日、全て白紙にすり替わった!この不可思議な事件の犯人は一体だれ?二次元を操る美女・セーナと、広告マン・宇田川のコンビが活躍する岡崎二郎のSFミステリーが新装版で登場。ビッグコミック増刊号で発表された全7話に加え、全話解説の漫画も描き下ろしで収録!誰にも真似のできないアイデアと、何度でも読み返せる味わい――知的好奇心をたっぷりと満たすSFコミックの名匠・岡崎二郎の傑作!

ファミリーペットSUNちゃん!

ファミリーペットSUNちゃん!

高校生の長女・里子の心を和ませるため、ペットを飼うことにした霜月家。そこで双子の妹たちが拾ってきたのは、なんとオオサンショウウオだった!!さすらいの特別天然記念物にして自称100歳のこの生き物、酒もあおればタバコも吸う、勝手気ままなオヤジ系!!こんなペットが欲しかった…っけ!?

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