地球に近くて遠い、惑星9
惑星9という宇宙の辺境にある小さな星にいる人々の話。 連作短編集のような形式で、惑星9の住人の生活が描かれている。どれもがちょっと不思議だけれど、描かれる人の思考や感情は共感できるので、気持ちよく世界観に引き込まれていける。 中でも「衛星の夜」という月の話が好きだった。昔、月を調査していた老人が回想する形で、そこで出会った不思議な粘菌のワルツについて語る話。ワルツの可愛らしさもさることながら、物語の自然なファンタジー感がたまらない。他の作品もハズレなし。おすすめの一冊。
惑星9というどこかにある星の人々の話。地軸の関係で年中日が当たらず凍りついてしまった街で氷漬けにされた美女に恋する男とか、芸術家の旦那を亡くした未亡人に恋する重力の研究者の話とか、惑星9から見える月で出会った未確認生物の話とか、思えば恋にまつわるものが多い。
どれも彼らのささやかな日常を描きながらもドラマチックに仕立てていて、最後にはちょっとしたどんでん返し的なオチが待っている。
芸術家の旦那を亡くした未亡人の話と月の話が特に好き。未亡人の話はなんだか話の作りのうまさが凝縮しているように感じるほど、前半までの話が最後の見せ場で集約されていて、読後感もすっといい気持ちになる。一方で月の話は切なさが胸に残り続けます。
どれも面白い。これがデビュー作らしいです。これからも楽しみにしたい漫画家さんです。