目を背けてはいけない暴力性
漫画はキャラだと言う言説が存在するが、この漫画はテロリストが主人公という、漫画史において前代未聞の物語は、よくこの漫画を連載させてくれたことに我々読者は漫画の懐の深さに感謝しなければならない。この漫画を暴力的だからということで嫌うのは簡単すぎる結論の出し方である。しかしこの漫画にはその暴力性や物語の筋を一瞬忘れさせられる様な瞬間のコマが存在する。線画が突出して、上手いという訳ではないが物語の世界観とマッチしてハッとさせられる瞬間が本当にいくつもあるのだ。それは決して過激な暴力シーンではなく、別の瞬間にある。この漫画が突きつけてくる命やそれと切り離せない魂や神という信仰の問題、徹底して馬鹿として描かれる大衆。重い腰をあげながらもその期待にはしっかりと答えてくれる単なる面白いでは終わらせない傑作すぎる漫画である
福祉国家が移民を受け入れ続けると、フリーライダーの問題がでて、必ず極右政党が支持を伸ばす。あれほど法律が厳しいドイツにもかなりの数のネオナチがいる。
それと、フランス的なポスト・モダン、価値相対主義が「一神教」的絶対性が生活習慣にまで残っているイスラムと共存することの難しさを感じざるをえない。
新井英樹さんの『ザ・ワールド・イズ・マイン』はそういうポスト・モダンと絶対神的価値観の対立を描いたバイオレンス・ファンタジーマンガ。いまこそ読むべき一冊。