じゅうにしょくものがたり
あらすじ
12種類の“色”をモチーフに、それぞれの人間模様を描き上げた珠玉の短編シリーズ。ナイーブな感覚、切々たる心情にあふれた詩情豊かな物語世界!!町で嫌われている一人の老人と一匹の老犬。誰もその名を知らず、町の家々を回り歩いて、ちょっとした雑用で生計を立てていた。そんな老人に強い興味を抱いた少年・ピヨートルは、そのあとをつけて町から2キロ離れたイバーラの森へと入るが……。
いしのはな
あらすじ
第二次世界大戦下のユーゴスラビア。ドイツ軍とパルチザンの激しい戦闘は、否応なしに人々を戦火に巻き込んでいた。国とは、民族とは、人間とは!?理想と現実、愛と憎しみを鮮やかに浮かび上がらせた戦争巨編!!きな臭い話が聞こえながらも、学校に通いながら平穏な日々を過ごしていたクリロとフィー。しかし、ある日ドイツ軍が村へと侵攻し、それまでの生活が一変する。村を焼き払われたクリロとフィーは、それぞれゲリラ組織と強制収容所へ。はたして二人の運命は……。
ばーじょん
あらすじ
近未来を舞台に、超高性能バイオチップ「我素」(がそ)をめぐって巻き起こる人類の攻防を描くSFアクション。「学習」「記憶」を繰り返し「自己増殖」、そして「自我」を持ち「変態」までをも始めた新型バイオチップ「我素」。しかし増殖過程で人間に有害な物質を放射することが分かり、政府から永久凍結を命じられる。ところがプロジェクトメンバーの日暮月光博士が「我素」を持ち出し行方をくらましてしまった。その後、世界各地ではデータバンクがハッキングされ、「VERSION」というメッセージが残される事件が相次ぐ。日暮博士を尊敬する元研究員の大沢木四郎は私立探偵・八方塞(はっぽうみつる)に博士の捜索を依頼するのだが……!?
でんしばんさかぐちひさしさくひんしゅう
あらすじ
宇宙船、開拓探査第七代ノーブル号のたった一人の乗組員の青年は、地球から約4750億キロ離れた宇宙空間で、母親にビデオレターを送る。第六代ノーブル号の乗組員だった父は事故に遭い、未だ行方不明。孤独に耐え、暗黒の中を突っ走る青年は、いったい何のためにという疑問を感じるのだが…。表題作「戦士の休息」の他、傑作SF7編を収録。
さんがつのかぜはさんのっと
あらすじ
少年は走る。今日も明日も。おとなたちが退屈している日常の中に、まぎれもない冒険の数々を発見して――。手押し車での綱渡り、3月のそよ風、一個の腕時計、一匹のよごれた野良犬……それらが冒険世界への入口。船乗りに憧れる少年・しげる。首尾よく外国航路の船に潜り込むが、船倉に隠れていたところを船員に見つかってしまう。「おれ、父ちゃんの船に乗りたかったんだ……」と、熊田一等機関士の方を指さすが……。表題作「3月の風は3ノット」のほか、16ページのカラー原稿を含む「独立祭の夜」「高田くんの時計」「よわむしコロ」「銀河飛行」の5編を収録。鬼才・坂口尚が流麗なタッチで描く、少年の魂の讃歌!!
にじいろのとろつきー
あらすじ
幼い頃に記憶と家族を失った日蒙二世の青年・ウムボルトは、赤化運動の折、憲兵に捕まり拷問を受ける。しかし、関東軍参謀・辻政信によって釈放され、日本軍統治下の満州に建てられた建国大学に入学する事になった。そこで、ロシア赤軍を創ったトロツキーが父の知り合いであること、自分はトロツキーを招き入れる為に軍上層部の思惑によって学校に入れられた事を知らされる。旧満州を舞台に日本軍の政治的陰謀に巻き込まれながらも、強く生き抜く青年の物語が今はじまる。
きげんぎるしあ
あらすじ
常に黄昏が漂い、気圧は高く空気が澱み、空中、陸上、水中を浮遊微生物のようなものが群れる都市、ギルシア。そのギルシアの最高貴人、時帝は、輝球は日が巡る度に輝きを弱めているようだと感じ、舵取りの役目を次に譲る時期がきたと考える。一方、時帝の息子・パトンは、輝球馬輪船の栄誉ある舵取りの後継者を目指すも、時帝の座を狙う者たちの追っ手が…。
えどかーるしーぷほーんむら
あらすじ
両親からお姫さまと呼ばれて可愛がられていた少女・マリーアンは、ある日、見知らぬ部屋で目を覚ます。そこは両親と住んでいた街ではなく、住人たちは動物の顔をしていて…!? 人間を求めて村の中を走り回るマリーアンは、ようやく人間の顔をした少年・エディと出会うが…。
ねくろまんさー
あらすじ
軍人のソニィと、マイアミで婚前旅行のバカンスを楽しむアイリーン。そのソニィが車に撥ねられ、病院に運ばれるが、病院にはソニィという名の患者はいないと告げられる…。1週間後、行方不明のソニィを街で見かけたアイリーンは彼のアパートへ。そして、アイリーンのもとに、ソニィが遺体となって発見されたとの知らせが届き…。
さかぐちひさしげんそうたんぺんしゅう
あらすじ
文明が崩壊した街には、一人の子供もいなかった。老いた顔がいく重にも覗く瓦礫と化した建物の下。時は流れ、人々は限りある生命を終えていく。世界は終わりを迎えるのか…とその時、突然ひとつの生命が誕生した。何十年ぶりの新しき生命、新しき後継者。だが、老いた人々の死後、ただひとつ残された生命の運命は…!?(魚の少年)/ 他、全11編を収録した珠玉の短編集!!
へんきょうけいび
あらすじ
数多くの女性問題で都から辺境の国境に左遷された不良中年、サウル・カダフ。国境から北は人っこ一人住んでおらず、仕事といえば牛追いだけ…。そんなサウルを歓迎してくれたのは、かわいい兵隊さんたちと、神官のジェニアス・ローサイという美青年。あたたかい人々との辺境で始まった新しい暮らしだが、時に思わぬ出来事が!?
さかぐちひさしえすえふたんぺんしゅう
あらすじ
一攫千金の夢を追い、人間を溶かす水底の黒い泥土の中に眠っている宝石、リルメルンを求める男たち。リルメルンを手に入れた者は至福の境に導かれるというが…。(宝石狩)/ 宇宙の秘密を解明する男たちは、偶然降り立った小惑星で、ゼリー状の湖水に吸い込まれそうになる。逃げるように母船に帰って来た彼らだったが…。(秘密)/ 他、全8編を収録したSF短編集!!
てんしのじくうせん
あらすじ
SFコミック界の巨星・松本零士が天才レオナルド・ダ・ヴィンチの謎多き生涯に挑戦する!!幾世紀もの未来。人類の生存する大銀河系は宇宙の「崩壊断面」へ遭遇していた。そこからすべり落ちれば「無の暗黒」へ飲み込まれすべてが終わる……。破滅までに残された時間はあと30年!リサーチの結果、これを救える人物はアインシュタインでもキューリーでもフォンブラウンでもなく、天才レオナルド・ダ・ヴィンチのみ!1452年夏、寒村ヴィンチを飛んでいた“蚊”の吸った血液から「彼」を再生させるプロジェクトが、ミナミ教授指揮のもと行われようとしていた。ミナミ教授の考えに反対するマミア・ルナ・螢子(けいこ※螢の文字虫→火)は、計画実行の直前、復元機(レプリカートパンドラ)を破壊し時空船(タイムクルーザー)でレオナルド・ダ・ヴィンチの生きていた時代へ向かう。彼女はレオナルドのそばでそのすべてを学び、もう一度未来に戻ると言うのだが……。
くろのりひょうやわ
あらすじ
紀元前17世紀、神獣・奇獣たちが跋扈していた中国。不老不死の少年、李氷が占い師として見たのは凄絶な未来が待つ兄妹。そして古代国家へとやって来た李氷は100年前にここで死んだという妹嬉に沼の中に引きずり込まれ、死を覚悟する。しかし、反魂の術で彼女を蘇らせることを条件に脱出し、蘇った妹嬉は帝桀の王妃として迎えられるが、それは悪夢の始まりだった…。
けんじとすいしょうきかんしゃ
あらすじ
賢治を誘い、夏休みに岩手山に登ることにした銀茂。しかし、おかしなことばかり言う賢治にイライラがつのる銀茂は、賢治が止めるのを聞かず、山に登ろうとする。そこに突然風が吹き、吹き飛ばされた銀茂は沢に転落して両足を骨折してしまう。銀茂を救うため賢治は助けを求めに行くが、一人沢に残った銀茂が見たのは、堤灯を持ち、立って歩く犬たちだった…!?
まきょうのとびらひちょうのつるぎ
あらすじ
仙人大学の最終試験のため赤龍帝君へ挑み、飛天紅玉を手に入れんとする少女・華林。しかし、そこに現れたのは赤龍帝君ではなく、奇山の守り神・白理であった。来るべき場所を間違えてしまった華林は、白理と共に赤龍帝君の住む地、蜀山へ向かうことに。だが、麓の村に着いた華林たちは、甲子の年に女人が村を訪れ、赤龍帝君を倒すと言う伝説を耳にする! 華林はその英雄なのか!?
そのひせんきょうにりゅうはおちて
あらすじ
紀元前の中国。広大な大陸には戦火の嵐が吹き荒れ、国々は混沌として定まらず、興亡を繰り返していた。ある日、釣りを楽しんでいた胡龍の側に、傷つき瀕死の状態の兵士、志遠が倒れ込む。干渉するつもりはなかった胡龍だが、そこに仙人が現れ、胡龍に志遠の看病を命じた。やがて元気になった志遠は、ある日、人の手に渡った時戦いが始まるという伝説の宝剣・昇龍剣を見つけ…。
といそるじゃー
あらすじ
弱小国トゥルリスは隣国の大帝国パンゲアに勝利するため、水と嵐、そして雷をも操る白い魔女を、薬漬けにしてでも従わせようとしていた。一方、少年エンシスは父の形見である精霊の輪を握りしめ、皇帝陛下のフォルティス騎士団に入ることを願って、弟のフェリックスと共にパンゲアの都を目指していたが…。
まーめいどはねむれない
あらすじ
大学で教鞭を執る傍ら、小さな骨董店を経営しているシェーレ。そのシェーレに恋するメイベルは、彼から海の底に沈んでいたという美しい短刀をもらう。喜ぶメイベルだが、シェーレに婚約者がいたことを知り、悲しみのあまり、思わず短刀を鞘から抜いてしまった。そして、短刀から聞こえる謎の声の言うがままシューレを斬りつけるが、メイベルの体にウロコが広がり始め…。
ぼくはかみさま
あらすじ
中学生の降星ありすは一人っ子で、いつも淋しい思いをしていた。ある日の学校帰り、サッカーボールが頭にぶつかり気を失ってしまうありす。気を失っている間に、流れ星が自分にぶつかる夢を見るのだが… 気が付くとそこは自分の部屋だった。だがありすの手には、まるで子犬のような、神様と名乗る不思議な生き物が…!? ありすと子犬のような神様との友情を描いた、ファンタスティックな世界!!
いらいあ
あらすじ
三つの月が昇る惑星セルに大型母船が墜ちてから千数百年後。当時の人々が星を渡るテクノロジーを有していたという神話の真偽を確かめるため、遺跡発掘を行う真星大学の最高総長たち。総長は手段を選ばず、オーパーツを求めて土着の民たちの襲撃を命じていた。そしてその最中、惑星セルの先住民であり、土蜘蛛とも呼ばれるオルジン族の少女、イライアが目覚めてしまう!!
しじょうきんご
あらすじ
北条氏による執権政治が全盛期を迎えた頃の鎌倉は、幕府内部の権力闘争による政治面の不安定や全国の天変地夭(てんぺんちよう)、飢饉疫病(ききんえきびょう)の発生などにより、民衆の心の深層部には暗く沈んだ霧が漂っていた。そうした民衆の心と呼応するかのように、京の公家仏教(旧仏教)に対して新仏教が芽吹き、社会のあらゆる面に根深く浸透していた。なかでも“南無妙法蓮華経(なんみょうほうれんげきょう)”を布教していた日蓮(にちれん)は、天下の大仏法を敵にまわし幕府から警戒される存在となる。病に倒れた北条親時(ほうじょう・ちかとき)に医術を施した四条金吾(しじょう・きんご)は、木漏れ日の中、謎の僧と出会い……。日蓮に帰依し、鎌倉における信徒の中心となっていった四条金吾の半生を漫画化。
いやしのは
あらすじ
ドミナトール王国の青年・ユーリグは長官の命令により、聖地フローンズ島から俗界へ渡って来る聖者サナトールを中立地帯クロスにて出迎え、そのまま護衛につく。その護衛にはユーリグの他、友好国エクシア、商業都市フルゴール連合、宿敵アビゴール連邦からも一人ずつ選ばれる。サナトールが所持する不思議な力のある癒しの葉とは一体!?
きっと誰が読んでも心に響く話が必ず一つは見つかる短編集ですね。絵もストーリーも詩的ですがコミカルな話もあるのでぜひ気負わずに読んでみてもらいたいです。悲しい話もありますが誰一人として不幸になっていないのが坂口尚らしい。この人の作品を読むと「純粋」という単語が思い浮かびます。子供の頃は誰だってそうだったと思いますが、大人になっても純粋な心を持ち続けていようとするその気持ちが自分にあるかどうかを問われているような気がするのです。下巻に収録されている「夜の結晶」で、鉱石や隕石みたいな美しい結晶のように生きるにはどうしたらいいか主人公が問いかけていたのが印象に残りました。