フェアウェイの声をきかせて【電子単行本】

正統派スポ根美少女ゴルフ! #1巻応援

フェアウェイの声をきかせて 椎葉裕巳
兎来栄寿
兎来栄寿

昨日『ライジングインパクト』のアニメ化が発表されたり、福本伸行さんも『二階堂地獄ゴルフ』を連載していたりでゴルフ関係の作品が熱くなっている今日このごろ。 『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』は2期を終えてこれ以上続きはなさそうだなぁ……と少し寂しくなっていたところでしたが、その心の隙間を埋めるように現れてくれた熱い美少女ゴルフマンガがこちらです。 「すごい人たちがいっぱいの舞台でわくわくするゴルフがしたい」という雛守日和(ひなもりひより)。 日和が出逢うのが、2年連続全中準優勝の小鳥遊衣鈴(たかなしいすず)。オーバーワークによる怪我で一度夢破れてしまった衣鈴ですが、日和に初心を思い出させてもらい改めて高校ゴルフ界の頂点を目指していきます。 そんなふたりに絡んでくるプライドの高いお嬢様の頬白冬子(ほおじろとうこ)も交えて、3人はゴルフの名門校鳥座(とぐら)女子へと入学し覇を競っていきます。 まず、椎葉裕巳さんの絵がとても良く、キャラはかわいく魅力的でありつつ肝心なゴルフのアクションも派手で迫力があり見応えがあります。 筆者がゴルフにハマりすぎた結果、担当編集に「もうゴルフマンガ描きましょう!」と言われて生まれた作品ということで、ゴルフ周りの描写も実体験に基づき愛を持って生き生きと描かれているのが伝わってきます。 ストーリーも競技スポーツマンガの王道を行く形で、真っ直ぐな面白さが展開されていきます。 監督の霧生秋沙(きりゅうあいさ)、部長で生徒会長の星ノ宮つばめ(ほしのみやつばめ)、2年生の鳳(おおとり)たまきなど、魅力的なキャラクターたちがどんどん登場していきお話を盛り上げていってくれます。主要キャラは概ね鳥に関係した名前を付けられているのが特徴的です。元々、ゴルフのバーディやイーグル、アルバトロスなどの用語も鳥由来ですからね。それに因んでいるのもあってか主人公はまだ空を知らぬ雛、衣鈴は一度地に落ちた小鳥という対比がなされているのも良いですね。 日和たちが試練を乗り越えて成長していく姿を、ライバルたちとの熱い闘いを、その中で育まれる絆を何十巻でも見ていたくなる作品です。

格闘太陽伝ガチ

国内の格闘技の常識が書き換わったあの時代

格闘太陽伝ガチ 青山広美
さいろく
さいろく

連載開始が2001年らしいので、グレイシー柔術という格闘技が日本中を虜にしていた頃。 当時、プロレスが最強だと信じていた日本の格闘技ファン達を地獄に突き落とした高田延彦vsヒクソン・グレイシー戦。 日本のプロレスが何も出来ずにヒクソンに惨敗した事をキッカケに、日本人の格闘技というものの捉え方が大きく変化しました。 今も当時も、メディアというのは残酷で、当然のようにプロレスは偽物であり強くないという極端な空気を生み出してしまっていたのですが、その壁をぶっ壊し威厳を取り戻すために本気のプロレスラー達が総格に名乗りを上げていったものの、そのほとんどは無惨な結果を残して当時のプロレスファン達の心は離れていく一方でした。 そんな中、桜庭和志がプロレスラーとしてグレイシー一族に連勝し続け、プロレスの威厳を取り戻してくれたのですが… 恐らく本作はその前に構想を練られており、プロレスラーの父の背中を追う少年が、父の仇を討つためにプロレスをベースに総格でのし上がっていくというストーリー。 とはいえ、これが先見の明があったと言えるほど現実ではプロレスが総格を圧倒したわけではなく、桜庭を筆頭にほんの一握りのプロレスラーが軽く爪痕を残しただけでした。 ただ、本作はプロレスファンの心の支えにもなっていたはず。 私は最近読んだばかりですが、当時まさにプロレスファンから総格ファンに心変わりをしていた自分の過去と重ね合わせて楽しむことが出来ました。 漫画的なとんでも展開はもちろんあるんですが、根っことしては「本当に強いのはプロレスなんだ」という中邑の言葉を描くような物語。 当時を知らなくても第三次プロレスブームの現在(既に下火な気もしてますが)、改めて読むと面白いです。