鉄人マコちゃん

素晴らしいバランスの美少女サイボーグアクションコメディ

鉄人マコちゃん タカミ
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

世界観はSFだけど基本的にゆるい会話でボケるテンションで進むサイボーグアクションバトルコメディ! https://www.futabasha.co.jp/tachiyomi/vtreader.html?pc=1&fd=ac_makoLR 若くして全身サイボーグに改造されたマコちゃんのハードめな設定かと思いきや、ゆるいボケ連発してくるのとか、前のページでふって次のページの上の方のコマでボケるのとか仕事が丁寧で素晴らしい! ボケってサプライズの味もあるから前のページから見切れずに新鮮な気持ちで読みたいから、その読ませ方にはグッときた!本当に新人なのか? 絵もやたら上手いし、アクションも見やすい。 マコちゃん以外も油断してたらボケてくるからいいんですよね。 1話中盤以降完全なツッコミになってる生体サイボーグ派遣会社のロウでさえも序盤でボケてツッコまれている。 ツッコミ役はツッコミ役のままぶれない絶対的ツッコミではなく、関係性によってはボケにも回り得る相対的ツッコミなのがいまどきの流れっぽくていいなと思った。 『ヒナまつり』好きな人は好きなテイストなんじゃないかな? 作者さんはどうやら初連載?のようで、漫画アクション2017年10月17日号に「緑ワニ」というペンネームで読切?版の『鉄人マコちゃん』を載せているっぽい。そこから連載用にどう変わったのかも気になる。 会話もゆるめだけど、設定もふわっとしてていいなー。 若い時にサイボーグ化した方が強いとか、マコちゃんが全然本当のこと言わないからどこまで信じたらいいのかとか。 シリアスな空気とアホな空気の緩急が素晴らしい。 「サイボーグ」のことをタイトルで「鉄人」と表現しているのも無骨でとてもいい。 作品としてのバランスも素晴らしいし、このままダレずに連載が続いたら絶対アニメ化すると思う! 文句なしに面白い1話目から今後どうなるのか早速気になって仕方ない。

パンティトラップ

笑いと切なさと/Paper-Thin Bond of Boys

パンティトラップ 吹屋フロ
Orad
Orad

大笑いした!飯島が高山に全然関心がなくて面白い。二人の奇妙な関係性が終わる場面、卒業式の話がとても切なかだ。 —- A blonde high school boy is staring at me with a nasty look --- while wearing panties on his head and a bra around his neck. It's impossible to forget the day I found this intense cover on a website called "Tonarino Young Jump", which is owned by a publisher of Weekly Shonen & Young Jump (Shueisha). It looks like a Boys' Love manga, but was serialized under the famous seinen label. Even though the story is ridiculous, it's strangely appealing so I sometimes get the urge to read this manga. I've already read it again and again. Why does this manga absorb me so much? I guess the reason is that their relationship is awfully temporary and fragile. The relationship between Takayama and Iijima is less than friends or even classmates - it only involves Iijima taking photos of blonde-haired Takayama in fancy ladies' underwear. What's curious is the fact that Iijima never cares for Takayama despite this weird habit. No matter how many times Iijima takes creepy and perverted pictures of him, Takayama is neither a source of benefit nor a waste of time for him. The two boys become very close over the year, but their relationship may easily disappear on graduation day. I was shaken up, yet found it impossible not to fall in love with the protagonists' strange yet irresistible paper-thin connection.

彼女と彼氏の明るい未来

恋愛において普遍的なテーマでもある恋人の過去の相手

彼女と彼氏の明るい未来 谷口菜津子
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

恋人の過去の相手が全く気にならないという人は極少数なはず。 そんな誰しもよぎったことのある思い、疑惑、心配性、ネガティブさを最大限に高めて爆発させて包み込んだのがこちらの作品。 最高に揺さぶられる。 全く付き合ったことがないわけでもないが、ロクな女性と付き合ってこなかった一郎。 流されるままに、性格もブスな女性や、自己評価低すぎてネガティブすぎる女性、占いやマルチにハマっている女性と付き合ったりして散々な思いをしてきて若干こじらせてしまった一郎。 現在、そんな一郎(28)が奇跡的に2年付き合ってるのは、性格も良くてめちゃくちゃにかわいいゆきかちゃん(28)だから余計に過去が気になってしまう。 そんなある日、居酒屋で言われるがままにゆきかちゃんの写真を見せていると隣で飲んでいた男に見られ「この女ヤったことある!超ヤリマンなのよ!しかも乱交しちゃった♡」と無茶苦茶に最低&失礼な外野がいたもんで、元来の心配性とネガティブさがムクムクと膨れ上がりいても立ってもいられなくなってしまう。 そんなときにちょうどよく?現れてしまった誰の過去でも見れる(情報を収集してシミュレーションして再現する?)VR。 一郎はどうなってしまうのか。 真実とは!? 「恋人の過去の相手が気になる」というのは「最近の若者は・・」という言葉が古代エジプトの石碑から見つかったのと同じくらい世界中で普遍的なテーマな気がする。 結婚相手以外に処女を奪われたら、奪われた女性側が死刑になってしまう国さえあるし、いろんな宗教があるが処女であることをどこでも重要視しているように感じる。 声優も処女であることを求められるというのを聞いたことがあって大変な世界だなと思う。 それほどに世の男性は処女だとか、初めての相手という部分に縛られ頭を抱えている人、女性から言わせると「キモい」人が多い。 だが、そんなのは野暮以外のなにものでもない。 今が違えば過去のことは関係ないし、相手も自分も現在が幸せであればいいじゃないかと思う。 そう、思うのだけど・・。という永遠ループの悩みがこの漫画だ。 乱交、それが事実かどうかは置いておいて、その結果にとらわれて本質を見失ってはいけない。 たとえ事実としても、大事なのはヤったかどうかじゃなく、なぜやったのか、彼女にはそこに至るまでの背景や理由があり、それを現在黒歴史として隠しているとしたらなぜ隠しているのかまで考えなければ相手の気持ちを思いやってるとは言えないんじゃないか。 相手の優しさかもしれないのに。隠したいのであればそっとしてあげればいい。 そして、本来乱交の事実を確かめるすべなど、本人に聞くしかないはずなのに登場してしまったのが、謎のVRだ。 これが事態をややこしくしてしまった。 こんな本当かどうか怪しい機械の情報をストンと信じてしまう。 本当かどうかも分からないのに。インプットした脳内の情報・願望・妄想を勝手に読み取って映像化するマシンなのかもしれないのに・・。 そして一郎は事実かどうかも曖昧な判断材料でさらなる妄執に囚われどん底に堕ちてしまう。 純文学的とも言えるテーマを新しいギミック(VR)の導入で新しく描き、素晴らしいデフォルメ具合の絵で表現されているのがめちゃくちゃにいい! 作者の谷口菜津子先生は漫画家の真造圭伍先生とご結婚されているので、もしかして一郎は真造圭伍先生がモデルだったり?と勘繰ってみたり。 1巻のあとの最新9話に出てくる女性たちの証言もよくあるというか、なんだか三者三様でリアルだけど、女性は男がいるところではあまり言わなそうな話だよなーと。でもそこは作者が女性っていうの思い出して、少し腑に落ちる。 すごく男性主観の話なのに女性が描いているのは本当に凄い。 久保ミツロウ『モテキ』や新田章『あそびあい』もそうだ。 奇しくも二人共男性っぽい名前を使っているのも面白い。 悩んでいるときに一人で思い悩んでクソみたいな考えが醸成されて突っ走る前に周囲に話を聞いているというのは、一郎がコミュ障でもないごくごく一般的な男性という描かれ方をしているからこそなんだか救いはありそうな気がしてくる。 もしくはだからこそ共感できて絶望が広がるのか。 誰しも囚われかねない妄執に区切りをつけて過去の相手ごと恋人を愛する決意をすることで有名なのが「めぞん一刻」だ。 変えられない過去を受け止め前に進む、あまりに有名すぎるあのシーンは感動的だ。 そこに到達できてようやく本当の恋人と言えるのかもしれない。 頑張れ一郎!幸せなはずの現在を、現実を見るんだ!

ミンゴ イタリア人がみんなモテると思うなよ

日本の文化と文法に精通しすぎたイタリア人のマンガ

ミンゴ イタリア人がみんなモテると思うなよ ペッペ
兎来栄寿
兎来栄寿

初めてトニー・ヴァレントさんの『ラディアン』を読んだ時、「絵のみならず日本の少年マンガの文法をここまで取り入れた作品をヨーロッパの作家が描く時代かー!」と驚愕しました。 最近は海外のマンガも沢山読めるようになってきましたが、当然ながらその国のテイストが強く出ている作品が基本的に多いです。その上で、完全に日本マンガナイズされていた『ラディアン』は衝撃的でした。 そして、この『ミンゴ』に関しては同様のことが今度は日本の青年マンガの文脈をしっかりと汲み取った上で為されていることに感嘆しました。 主人公のちょっと残念で、でも一念発起して頑張ろうとする姿に苦笑しつつ憎めず応援したくなる感じや、友人の無茶苦茶な振る舞い、ヒロインの絶妙なかわいくなさは正に『アフロ田中』などを読んでいる時の感覚そのもの。 絵はもっと上手くなると思いますが、今くらいの画力が平成前半位の青年マンガ感を生み出すのに一役買っていて丁度良い気もします。 テラスハウス出演のイケメンイタリア人が描くマンガの内容がこれ、というのもまた物語として面白いです。本人が主人公で実写化するなどしたらまた話題になって面白そうですけどね。