てんで性悪キューピッド

富樫義博の名作ラブコメ「てんで性悪キューピッド」

てんで性悪キューピッド 冨樫義博
名無し

「てんで性悪キューピッド」は「幽遊白書」や「HUNTER×HUNTER」というヒット作を生み出した漫画家「冨樫義博」先生の処女作です。 週刊少年ジャンプで1989年から1990年に連載されました。 この作品の一番の特徴は、ヒロインである「聖まりあ」のヌードシーンが多く、現代の少年漫画では描写できないお色気要素が満載な点です。また富樫先生の描く美しい女性キャラの裸が多く描写されているのはこの作品だけであり当時は多くの少年たちが魅了されました。 主人公である「鯉昇竜次」は普段真面目な中学生の少年ですが、暴走してしまうと誰も手に負えないほどの スケベな男に変身します。ヒロインの聖まりあは絶世の美少女ですが、正体は悪魔であり、竜次を立派な「男」にするため様々な手法で彼に色仕掛けをします。 コミックスとしては数巻で終わってしまいましたが、コメディ要素とシリアスな展開が上手く配合された秀作です。 また富樫先生にとって「てんで性悪キューピッド」は、黒歴史の一つとされています。ですが漫画の内容としては後の名作にも引き継がれているように、感動するシナリオが用意されています。 当時ジャンプを読んでいた層は誰もが知っている王道ラブコメ作品の名作です。

エロイカより愛をこめて

BL黎明期の転換点的異色作

エロイカより愛をこめて 青池保子
兎来栄寿
兎来栄寿

BLにまったく興味がない男性でも十二分に楽しめる作品であることは最初に断っておきたい。 少女マンガは萩尾望都、大島弓子、木原敏江、竹宮惠子、青池保子、山岸凉子ら24年組と呼ばれる作家陣によって、1970年代に多大な発展を遂げた。 その内の一つの成果は1973年の『トーマの心臓』や1976年の『風と木の詩』に代表される、今でいうBLという括りの物語の萌芽だ。美しい少年たちが織りなす美しい物語に人々は心酔し耽溺した。 1978年10月には、後にそのタイトル自体が代名詞のようにつかわれるようになる雑誌『JUNE』の前身である『COMIC JUN』が刊行される。 その狭間、1977年に始まったのが青池保子の『エロイカより愛をこめて』だ。この前年に描いた『イブの息子たち』共々、それまでは基本的にシリアス一辺倒だった男性同士の恋愛を描いた物語にコメディ要素を取り入れた先駆的な作品である。 この遺伝子は1978年開始の『パタリロ』にも受け継がれ、これらの作品に登場する美形黒髪長髪男子は今もなお多くの人に愛好されている。 『エロイカより愛をこめて』は、少女マンガの題材としては非常に硬派な東西冷戦時代の政治の世界も絡んだ怪盗とスパイの物語だ。当初はコメディ色が強かったが、硬派さが人気を博すと物語もシリアスな方向にも舵を切っていく。 美術品と男性が大好きなエロイカことドリアン侯爵と、彼に気に入られてしまう鉄のクラウスことエーベルバッハ少佐の奇妙で熱い関係は実に魅力的だ。 この作品のお陰でドイツのエーベルバッハ市への観光客が急増し、1990年にはエーベルバッハ市から表彰されたという逸話も存在する。 エーベルバッハ少佐の好物の一つがネスカフェゴールドブレンドなので、私が運営していたお店でも扱っていたのはゴールドブレンドであったことはここだけの秘密である(私は本来はエクセラの方が好きだ)。 冷戦時代の空気、背景を学ぶ歴史の参考書としても一読に値する名著なので長さに気圧されず少しでも触れてみて欲しい。