マーブルビターチョコレート

2021年の百合でトップクラス #1巻応援

マーブルビターチョコレート 幌山あき
兎来栄寿
兎来栄寿

イブニング新人賞やちばてつや賞を受賞、そしてジャンプ+ に載った読み切り「二番目の運命」も最高だった注目の新鋭・幌山あきさん。待望の単行本が遂に発売されました。 端的に言って素晴らしかったです。 苦労して生きるのが嫌で、パパ活で収入を得ていたりこの下に新しく現れたパパは何と女性。 「女性のパパはダメですか?」 というアラサー女子の東には、秘めた目的が……という導入から始まる百合です。今年読んだ百合系作品の中でも屈指の良さでした。 まずテーマとされている「消費」の描き方が、非常にリアルで心に迫るものがありました。形は違えど誰しも消費したり消費されたりした経験があるであろうこの現代社会。そこに宿された覚悟や祈り、りこや東の背景にあるものも含め恐らく多くの人に色々な形で感情移入できるポイントがあるでしょう。 そして明示的に悪役として描かれたキャラが登場するのですが、彼の言っていることは露悪的ではありながら現実的には合目的的であり、誰かを傷付けてしまう雑な消費の仕方を望む大衆がいるというのも事実。彼はその象徴のようです。そうしたものに触れると生きるのが辛くなってしまうこともあります。 しかし、本当は世界にはもっと美しいものも溢れているはず。それこそこの本を読んだ後にもらえる気持ちのように。そうした美しいものをこそ大事に生きていきたいと思える物語でした。 幌山あきさんは、ありふれた素材を使っていても独自の味付けと盛り付けで美味しさを提示できる稀有な描き手です。名前を見たら今後も全部読みたいです。

生き残った6人によると

新感覚ゾンビサバイバル#1巻応援

生き残った6人によると 山本和音
六文銭
六文銭

言いにくいのですが、すごく好みな作品でした。 設定としては、突然の感染によってゾンビがはびこるようになった街で、大型ショッピングモールに立てこもった若い男女6人の話・・・という、まぁゾンビ系ならよくある感じなのですが、新感覚なのは登場人物の緊張感がないところ。 というのも、話題の中心が 「生き残ること」 ではなく 「誰が誰を好きか?」 という点。 この時点で結構、自分好み。 なんというか、このほうが妙にリアリティを感じるんですよね。 昨今のコロナの感染拡大をみると 現代人の「まぁ、なんとかなるっしょ」感覚が、骨の髄まで染み込んでいるっぽいので、おそらくゾンビが蔓延っても、消えないんだろうなぁと思っており・・・。 結局、周りにゾンビがウロついていても、危機に直面しなければ 「まぁ、いずれ救助くるっしょ?」 ↓ 「今を楽しまないと!」 ↓ 「恋愛しよう!」 ってなったのだなと思いました。 必死に生き残る気が皆無な感じが、たぶん現代っ子の特性なんだと思います。 「転生あるから、ワンちゃん大丈夫っしょ!」 と言い出しかねない軽いノリ、嫌いじゃないです。 脱出しようと試みたり、救助にきたヘリが墜落したりと、サバイバル系な動きもあるのですが全体的に漂う弛緩した空気と混ざると、不思議とクセになります。 1巻の終わりもヒキをつくってくれたので、2巻が楽しみなのと、 また新しいゾンビ漫画を発見できて嬉しい限りです。