起きてください、草壁さん

睡魔にプレゼン。勝てる気がしない戦い。

起きてください、草壁さん 秋★枝
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

土曜日の朝寝を満喫する草壁さんを起こそうと、学臣は毎週、様々な趣向を凝らす。しかし草壁さんの睡魔には通用せず、逆に同じ布団に誘われて一緒に寝るはめになる。 学臣は毎週、ものすごく手の込んだ仕掛けを用意して、草壁さんの気を引き、覚醒させ、デートに連れ出そうとする。そのネタのバリエーションは幅広く、面白い。 時に知的興味に、また時に羞恥心に働きかけ、ロジカルかと思えば時に情緒に訴える彼のプレゼンは、草壁さんも、読者も飽きさせない。 なのに。 それでも草壁さんは、起きてはくれない。 草壁さんの最終兵器は、学臣を容易に屈服させる。 その最終兵器「一緒に寝る」は、学臣にとって敗北であるはずなのに、学臣に幸福感を与えてしまうという点において、誰も不幸にしない、究極兵器である。卑怯だ。だがそれがいい。 果たして彼は、一度でも草壁さんに勝てるのか、よしんば勝てずとも、2巻を通して、学臣のネタは枯渇しないのか……。女の子の寝室で尖ったネタと豆知識を繰り広げる、良質なバラエティ漫画を、お試しあれ。 【教えてください】 2巻真ん中あたりで終わった後、ちょこっとキャラが変わった、ダイジェスト版みたいなのが始まるんですが、これ何ですかね? だんだん違うネタになっていって、これはこれでいいのですが、説明がないんです……。

花と頬

丁寧に描かれた関係性に浸れる漫画

花と頬 イトイ圭
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

柴田ヨクサル先生が帯に書いた「切れば血の出る漫画。」の通り、全編通して丁寧な人物描写で、読後はぼんやりと彼らがこの世界に存在しているような気がしてくるくらいキャラに血が通った漫画。 知っている人は知っているくらいのミュージシャン「花と頬」を父親にもつ父子家庭の女子高生が学校で父の仕事のことを知る同級生の男子と知り合い、仲を深めていく夏。 他クラスだが同じ図書委員で私語禁止の図書室で密かにノートで会話を進めていく様子がとてもいい。 多くを語らない登場人物が多いのに、息遣いや体温まで伝わってきそうなくらい親しみを持ててしまう彼らのいる世界に読後はしばらく浸っていたい。 良質の邦画を見たときと似たような読後感なのは、場にある空気や時間の流れ、会話の運びのテンポの良さをうまくコマ運びで表現できているからなのかも。 登場人物たちのなにげない日常がなにげなく過ぎ、彼らの中で決定的に何かが変わったかといえばそうでもないし、でも確実に何かは変わっている。それでも彼らの日常は続くし心持ち前向きにハッピーな感じ。 そんな爽やかさと、少し時の流れの残酷さと、人の温かみと鼻がツンとするような切なさもちょっぴりある、ガールミーツボーイなひと夏の出来事。 読んでいて気持ちが良いのは、キャラクターが説明的すぎないところだ。 ハッキリ明言されてはないけどこれってそういうことか、という場面がいくつかある。 そういった、みなまで言わずに言外で想像させる程度の物言いがとても現実的でよく馴染む。 主人公が等身大の女子高生らしくとてもナイーブで不安定で、自分の立ち位置を見失いがちなところもとてもいいし、父親がそっけないようで優しいのが感じ良い。 不穏なことが過去にあったような雰囲気を匂わせつつしっかりとは登場させない。登場人物に刻まれている表情で何かあったことを語りだす。 全体的に本当にいい雰囲気だった。 分かりやすい売るための要素(大仰な喜怒哀楽や、波のある起承転結など)がないから載せられない、といくつかの出版社で言われてしまったようだけど、こういう作品を出してくれる会社が世の中にあるのは救いだ。 届きました。ありがとうございます。

楽しい生活

やっぱり大好き。

楽しい生活 加納あずま
名無し

昔から加納あずまさんの作品が大好きで、何度も何度も読み返していました。 ほのぼのしていて読んでいて心地よく、程よく笑いもあり、疲れたり落ち込んだりしたときに読むととても心が癒されます。 ギャグ漫画ではないので「ゲラゲラ」と言う感じではないけど、さりげなく散りばめられている「プッ」と吹き出させる笑いのセンスが絶妙です。 今回の『楽しい生活』も素晴らしい!! ごく自然に共感できる現実的な部分がありつつも、やっぱりどこかファンタジーと言うかメルヘンな雰囲気で、小さい子に読み聞かせても問題ないくらい、ほんわかとした絵本のようなストーリー。 一話完結タイプなのも読みやすく、一日の終わりに一話ずつ大事に読みました。 本当は一気に読みたかったけど、勿体なくて。。笑 お話とお話の間にある、お料理メモや旅行メモなども非常に勉強になるし興味深かったです! 何時であろうと、読むといつも凄く料理がしたくなります。 加納さんがイラスト入りのお料理本などを出してくれたら良いのにと、いつも思っています。 『毎日がピクニック』などのように、こちらの作品も電子書籍だけではなく書籍化してくれないかな。。 電子書籍は場所もとらずいつでもどこでも読めて便利ですが、古い考え方の自分としてはやはりお気に入りの作品は特に、手に持ってページをめくり読みたいなと思ってしまいます。 毒のない、とてもとても優しい作品です。 老若男女問わずオススメします。

煩悩寺

オトナの秘密基地、煩悩寺。

煩悩寺 秋★枝
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

小山田君の部屋は、ヘンテコグッズでいっぱい!恋に仕事に疲れた小沢さんは、今日も彼の部屋でダンボール箱を開ける。中身に驚き、笑って飲んで元気になれるこの部屋、通称「煩悩寺」で、今日は何して遊ぼうか? 小山田、小沢と小山田の友人・島本の3人は、部屋にあるグッズで遊んだり、それをネタに笑い転げたりと、あまり社会人っぽくない遊びに興じる(酒は飲む)。その日の遊びは、開封する段ボール箱任せ!という博打感を楽しむ、彼らの力の抜け具合がいい。 煩悩寺にあるグッズはとにかく悪趣味、煩悩丸出しで、くだらないものが多い。しかしそれらは裏を返せば、欲望に忠実で、隠し事がないということ。小山田の基本ウェルカムな性格もあって、小沢にとって煩悩寺は、素の自分のままでいられる、寛げる場所のようだ。こんな秘密基地、私も欲しい。 失恋の痛手や仕事のストレスを癒してくれる煩悩寺は、小沢にとって、次第に大切な存在になってゆく。そしてそんな場を創り出す「変人な善人」小山田との関係も……。 煩悩寺のグッズ達をゲラゲラ笑いながら遊び、受け入れる小沢は、島本に言わせれば「素質あり」。部屋の主との相性はいいんじゃないの?ということで、いつも楽しそうな息のあった二人の関係を、島本と一緒にいじりながら眺めていたい、そんなお話。

年下の先輩ちゃんには負けたくない

「敬語」を巡る甘酸っぱい攻防戦!

年下の先輩ちゃんには負けたくない なめたけ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

先輩には敬語を使いたい大学生・坂上良太郎に、「年下なのでタメ口で」と迫る高校生の先輩・山下かをり。バイト先での「敬語」を巡る攻防が、今日も静かに繰り広げられる……。 先輩であるかをりは、高校生なのにやたらと仕事のできる、頼りになる存在。助けられてばかりの坂上は、気後れしてつい、色々遠慮してしまう。一方かをりは、そんな彼をからかうように、「敬語禁止!」などと言っては坂上に、打ち解けることを要求する。 クールに坂上を手玉に取るかをりと、年下の彼女にどうしても敵わない坂上。この構図、ちょっと『からかい上手の高木さん』っぽいと思いません? さらに二人と共に仕事をしつつ、二人の仲を(主に坂上の方を)いじってくる、女子高生の若菜と真中のおかげで、二人の仲がじわじわ進展していく……ようでいかない感じが、もどかしくも楽しい。 ホームセンターが舞台なので、コンビニやスーパーではなかなかお目にかかれない商品と、それにまつわる顧客対応の模様なども目新しい。結構特殊な商品知識が問われる場所なんですね……。 遅々として進まない二人の先を見たいと願うよりは、いつまでも二人でああでもない、こうでもないと駆け引きして、拗らせる様子を眺めていたい。その先に少しでも進展があるといいな……という感じで楽しみたい漫画。 クールなかをりの静かな笑顔、マジ天使!

純真ミラクル100%

クサい台詞が芸能界を動かす!

純真ミラクル100% 秋★枝
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

弱小芸能事務所の所長・高杉は、新人ミュージシャン・木村の恥ずかしい顔、困った顔にゾクゾクする。変な芸名、衣装、仕事を木村に与えて楽しもうとするが、それが次第に妙な方向へ盛り上がりを見せ……。 この作品で常にネタなるのは「クサい」「恥ずかしい」という言葉。 例えば大人の高杉がわざと「恥ずかしさ」を木村に与えようとしているのに、それをポジティブに捉える未成年の木村=モクソンは、却って大人が吐くには「恥ずかしい」言葉を高杉に与え、狼狽させる。 登場する大人達は皆それぞれに、仕事でも恋愛でも何かを隠しながら、捻くれた行動しか取れないのだが、モクソンの才能と嘘のない真っ直ぐさには、照れながらも自然と心を寄せ、協力を惜しまなくなる。 時に彼女のパチモンとも心を通じ、ウザいっす、と言われながらも大切に思い合う関係を築き、友情のドラマを紡ぐモクソン。彼女は敵を作らずに、みんなを繋ぐ中心となる、タレントとしては最高の「人たらし」の才能を持ち、音楽の才能も相まって大きなムーブメントを形成していく。 モクソンの描く理想は「ずっと事務所のみんなと仕事したい」というもの。大人たちのグチャグチャの人間模様は、それを安易に許さない。しかしそれでも「モクソンのため」という大人達の思惑の一致がどのようなラストを見せてくれるか、最終5巻の最後の最後まで、目が離せない。