歴史マンガの感想・レビュー1574件<<1112131415>>漫画家に何かが憑りついて描かれた漫画と言えばこれ手天童子 永井豪starstarstarstarstar完兀作者に何かが憑りついて生まれる作品、あるいは見えない力に突き動かされて生まれる作品は名作率が高いと思われる。 どの創作物がこのことに当てはまりそうかは各人が知っているものに思いを馳せてくれればいいが、永井豪作品なら、いや漫画ならこの手天童子がその代表だ。 永井先生は本作制作にあたって「鬼が赤ん坊をくわえている映像が見えて、導かれるように描いた」と巻末解説やインタビューで語っている。また鬼の首取材をきっかけに執筆中は「鬼に祟られていた」とも語り、数々の怪現象と悪夢に苦しめられた結果、おはらいを受けることで最後まで描き切れたと振り返っている。 こんな背景を基にして描かれた作品、締まらない終わり方じゃ一生祟られるんじゃないかと不安になるが、そこはご安心。まさに導かれたかのような綺麗なハッピーエンドを迎える。涙涙で描いたというあの最終回をもってお祓いは完了したといえるだろう。 本作は夫婦の前に突如として現れた、恐ろしい鬼同士の取っ組み合いの争いから始まり、鬼の口の中の赤子の存在に気付いた妻・京子の、鬼にも臆さない愛ゆえの行動から物語が動きだす。 ストーリーは第一話で鬼から語られた「15年後に迎えに来る」という約束が果たされるまでの前半、果たされてからの後半に分けて考えられる。 そう、前半の終わりこそが、物語の始まりから続いてきた、子を思う母の愛が鬼によって引き裂かれる悲劇の場面なのだ。この辺を描いてるとき、永井先生は無茶苦茶苦しめられたに違いない。もしここで読むのをやめれば、読者だって悪夢にうなされかねない。 前半はサスペンス・バイオレンスホラー漫画に分類できそうだが、後半では一気にSFスペクタクルにスケールが広がる。主人公は自身の出自の謎を追いながら宇宙と時空を駆け巡るのだが、子と妻を思って孤軍奮闘する父・竜一郎パートが都度挿入され、やがて家族愛で結ばれるべく物語はクライマックスへ収束していく。 あの父がこれまたかっこいいのだ。彼の「鬼とは…」と語って狂気じみた行動に出るシーンに私は痺れた。 本作は鬼の伝承について取り上げ、またその伝説を巧みにストーリーに組み込んでいるのも魅力の一つだが、展開的に取り上げられても不思議ではなかった、ある有名な鬼がいる。しかしその鬼は作中で触れられることはない。 その鬼について触れれば、「鬼とは…」で語られる本筋からやや外れたところに焦点が合うことになりかねないから、あえて避けられたのだろう。それがまた、本作を引き締まったものにしてくれている。女性の話を語ろうか女の子がいる場所は やまじえびね名無しあまり説教じみた漫画は好きになれないのですが…この漫画は、なるほどと思いましたね。 国によって「女性とはこうあるべきだ」という思想は違うし、時に抗議と言論すべきテーマです。 日本は時代の流れによって専業主婦なんてほぼいなくなってるし女性は結婚して子供を産んでどうこうみたいなことは言われなくなってきてるけども。 海外はどうだって考えたことなかったかもしれません。 海外だと第二夫人がいる国もあるし、親が結婚決める国も当然まだあるんですね… 同じ女性だから考えさせられます。 そんで、女の子である自分は「こう生きたい!」って意思を持っている主人公が描かれてて全然悲観的にならず読めました。 色んな事を知れる、一人一人思いの強さに感動する。チ。―地球の運動について― 魚豊starstarstarstarstarこめつぶ難しそうなテーマなのかと思い途中で離脱するかな?なんて思いましたが1巻から面白い! すぐにちょっと痛いシーンがあってインパクト。 地球の地動説、宗教文化、ヨーロッパが舞台など、初めて踏み込む域なので新鮮さと驚きと色々知りたい!と思いながら読みました。 登場人物一人一人の思いが熱くて泣ける。 おすすめです! ヨナへの応援が止まらない!暁のヨナ 草凪みずほstarstarstarstar_borderstar_borderこめつぶ姫として大切に育てられるも一つの裏切りから崖っぷちに。 普通なら絶望する中、ヨナは真っ直ぐで強くて後ろは見ずにずっと前だけを見て戦い続ける。そして、実際に強い。剣を抜いて戦うシーン、本当にかっこ良い。 国を背負っての話で、大河ドラマやキングダムのようです。 強い背景には悲しみ辛さが沢山あってそれを抱えて立ち向かう姿は誰もが応援したくなると思います。 おすすめ謎解き漫画!薬屋のひとりごと 日向夏 ねこクラゲ 七緒一綺 しのとうこstarstarstarstar_borderstar_borderこめつぶ「掟上今日子の備忘録」が好きで、綺麗な女の子が謎解きをする設定が良く、読みました! 謎解き漫画あるあるで、私も一生懸命考えながら読んでたまに当たるとお得感あってすきなのです。 結構ハラハラドキドキする!話のテンポも良くて早く知りたい欲をかきたててくれる。じっくり読める時は謎解きを考える、ストーリーを楽しみたい時はサクサク読んでスッキリする、など気分に合わせて読み分けしております。北海道の歴史、文化がテーマ!ゴールデンカムイ 野田サトルstarstarstarstarstar_borderこめつぶ色んな人の口コミでアニメから漫画に入る方が、刺激が和らぐというのを参考にアニメから入り漫画へ行きました!納得。 アイヌの文化について無知だったから勉強にもなるし初めて興味を持てた。 グロいシーンなどあるのでアニメで耐性付けてからじっくり読み込むのをおすすめです。 北海道、アイヌ、グルメ、歴史、色んな事が混ぜ込められている。 アニメも漫画もおすすめです!マンガで読む「竜馬がゆく」として読んで欲しいコミック竜馬がゆく 鈴ノ木ユウ 司馬遼太郎 司馬遼太郎六文銭「竜馬がゆく」は孫正義が愛読したくらい名著であり、 多くのアラフォーが司馬遼太郎好きだと思うのですが、自分もその1人。 特に「竜馬がゆく」は3回買い直したくらい好きで、それを「コウノドリ」の作者が描くとなれば、もう期待しかない。 実際、おもろい。 基本、原作になぞらえているので、あのシーンはどう描くのか?とか。 文字だけではわかりにくかった部分を表現してくれるので、自分としては新たな発見と感動が得られている。 しかし、気になるのが、これ続けられるのか?という不安。 昨今の漫画と比較しても、ストーリー展開が大分ゆっくりなので、 竜馬、初見の人、ついてきてる? という謎の不安に苛まれている。(というか、大きなお世話) 新撰組にならぶ人気な歴史上の人物だけに、多くの人、特に若人に読んで欲しい。 活字はちょっと・・・という人も、漫画で読む「竜馬がゆく」として読んで欲しい。 孫正義など数々の経営陣や著名人に影響を与えた名著なので、そのクラスターの人にも届いて欲しい。 そんなことを思いながら読んでます。 幕末の激動時代に、綺羅星の如く登場した竜馬。 その行動力と決断力、何より生き様を刮目してお読みください。 ホントにこの人、交通手段が船しかない時代なのに、どんだけ日本中を縦断しているのかってくらい動くので。 再読したら良さUPしてました!!一輝まんだら 手塚治虫starstarstarstarstar_border酒チャビン1974〜1975年に漫画サンデーに連載された作品です。1900年、清朝末期の中国での物語から、主人公の亡命によって舞台は日本へ。史実の事件や人物等も交えながら展開します。 正直、最初に読んだときはピンと来なかったんですよね。当時は火の鳥から手塚にはまって読み漁っていた時期だったので、火の鳥っぽい要素を求めすぎていたのかもしれません。 それから幾星霜、わたしも大人になりまして、そういうのヌキで読めるようになったのですが、ムムム意外と面白い!!ちょうど盛り上がってきたところで打ち切りにより終了してしまうのですが、本当にもったいないですね!!昭和初期まで各構想があったようで、続きがすごく気になります!! あとがきで、「第二部では、日本の軍閥の跋扈と退廃、北青年の失意と上海での執筆活動、そして二・二六事件の青年将校の蜂起、という核心に移していきたいと思っています。どこかで連載をやらせてくれないでしょうか。」と手塚先生自ら営業されてます。実現しなかったのが残念でなりません。 あと短編が6編併録されています。サスペンス感あふれる作品中心にまとまっていて、ものすごく読ませるもので溢れてます。 ■時計仕掛けのりんご ■バイパスの夜 ■嚢 ■イエロー・ダスト ■悪魔の開幕 ■山楝蛇 特に「嚢」は奇形嚢腫を扱った1968年作品で、ピンときた方もいらっしゃるかと思いますが、ピノコ誕生の話のプロトタイプ的なものです。 「時計仕掛けのりんご」も全集のタイトルとなったこともあるほどの作品で、当然面白いですし、「バイパスの夜」は世にも奇妙な冒険でドラマ化もされたようです。国内1を争う画力イノサン Rougeルージュ 坂本眞一ガーリー坂本先生といえば画力の高さが有名です。フランス革命題材に人の惨さ、また容赦ない処刑の描写など、他漫画では味わえないドキドキが待っている。難解だが深い、知ってるとマウントとれそう火の鳥 手塚治虫ガーリー同僚に激しく勧められ、辛い環境に身をおく同志として火の鳥は読んだ方がいいと言われ手に取りました。スタートから重々しく、気軽に手に取る漫画ではないですが、ハードメンタルを求められる環境に身をおく仲間はこちらの作品に支えられたそうなのでオススメです。 最近もなにかと話題の作品ですが、ちょっと待ってください!!!!どろろ 手塚治虫starstarstarstar_borderstar_border酒チャビン1967〜1968年に週刊少年サンデーに、その後1969年に冒険王にて連載された作品。サンデー時代は「暗い」という理由で打ち切りになったようです。 なぜか手塚治虫先生の代表作の一つっぽく扱われることが多いのですが、自分自身(ヅカラーです)はそこまで好みではありません。 2000年代に入ってからも、2度の小説化(2001、2006)、ゲーム化@PS2(2004)、アニメ化(2019)、映画化(2007)、舞台化(2004、2009、2019)と、ひくて数多のメディアミックス王となっています。 そして2022年12月になんとタテヨミマンガとしてリメイクされ、日韓同時配信開始とのことでしたので、再読しました。 https://tezukaosamu.net/jp/mushi/entry/26314.html ストーリーは、戦国時代に、父の天下統一の願いと引き換えに魔神の生贄とされた主人公(百鬼丸)が、失われた自己の48個の体のパーツを取り戻すため、48匹の妖怪を倒す旅に出るというものです。 つくりは、基本的には1匹とのバトルを1週〜数週で描くのの繰り返しで、いわゆるバトルものの王道ともいえるものになりましょうか。ちなみに百鬼丸は拾って育ててくれた医者に、ピノコ的な魔改造を施され、失ったパーツの各部分に武器(剣や爆弾など)を仕込まれており、それらを駆使して敵と戦います。 ヅカ先自らお認めになられてるとおり、水木しげる先生の各種妖怪もののヒットに触発されて生み出された作品とのことですが、正直手塚先生にこういった王道バトルものは向いてないように思われます。 各種メディアミックスの影響や、あたかも先生の代表作かのような扱いで誤解してほしくないのですが、手塚先生の作品に興味を持つことがあったら、個人的には、絶対にどろろからは読んでほしくないです!!!火の鳥やブラックジャック、ブッダ、きりひと讃歌、奇子、陽だまりの樹、アドルフに告ぐあたりがまだでしたら、そちらの方を先に読んでほしいです!!!! もし「どうしてもバトルものが読みたいんだ!!」ということでしたら手塚先生の作品ではなく、宮下あきら先生の「魁!男塾」にしてください!読んだら頭良くなった感じするよ沈黙の艦隊 かわぐちかいじ名無し潜水艦なんて乗ったことないんだけど、多分すごくリアルに描いているのだと思う。 軍事、政治、日米同盟や日本の安全保障とか、学校で習ったんだけど、全く覚えていない事をわかりやすく解説してくれています。 核兵器の恐ろしさや、核を保有している意味がわかると思います。 ニュースでよく取り上げられた、集団的自衛権について様々な角度で理解できる漫画だと思います。 このマンガがすごい第1位!!天幕のジャードゥーガル トマトスープかしこオンナ編第1位を受賞されていたので読んでみました!第一印象は「王様ランキングみたいなマンガかな〜(キャラクターっぽい絵柄だけどテーマが深い)?」でしたが、読んでみて世界情勢なんかを考えると天幕のジャードゥーガルは更に身につまされる話だなと思いました。平々凡々と生きてると知らない方が幸せなこともあるよな〜なんて思っちゃうこともあるんですが、やっぱりピンチな時に自分を助けてくれるのは知識ですね。勉強せねば!2巻からは王位継承問題で波乱の展開が起きそうなので続きがめちゃくちゃ気になります。 18世紀の女性数学者ソフィー・ジェルマンの物語天球のハルモニア 光城ノマメ しまな央名無し数字が大好きな12歳のソフィーは「どうして雪は六角形なのか」を考えるのに夢中になり、雪の積もる地べたに数式を書き始めてしまうような女の子。 18世紀という時代ゆえ、こんなにも才能に溢れているのに女の子であるというだけでソフィーに学問の道は開かれていないのが辛いですね…。 調べてみたところ数学の世界には「ソフィー・ジェルマン素数」というものがあるそうで、厳しい時代に生まれながらソフィーが研究を諦めなかったことがわかります。 今後、物語の中でどんなふうに彼女が数学を究めていくのか楽しみです!うんこくさい映画クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望 臼井儀人 高田ミレイ名無しもちろんわかっていると思うけど、雲黒斎というのは、「うんこくさい」からきています。 志村ケンのアイーンや、こまねちよりも有名なギャグ。 それが「うんこ」ですw 吹雪丸がか弱い女の子なのに、男のふりをして戦っているシーンは感動です。意外に知らない鎌倉幕府の滅亡〜室町幕府成立まで太平記 横山まさみちstarstarstarstar_borderstar_border酒チャビン詳しく語れる方に出会ったことがないです。多分日本の歴史の中でも最高級に軽視されている時代ではないでしょうか?? それで歴史好きとしてはもやもやしていたので、室町幕府スペースマンガで検索して上位に出ていたこちらを読むことにしました。 つくりは、後醍醐天皇を中心とする倒幕運動が盛んになってきた時期から室町幕府成立くらいまでの時代を、①楠木正成、②足利尊氏、③新田義貞の3名を主人公に3回書いた形になっています。①→②→③と別の主人公の視点から歴史を3度繰り返すことになるので、脳への定着も促進されます。 なので、試験勉強にはもってこいですね。ただ試験にこの辺りがあまりでそうにないですが・・ マンガとしてはオーソドックスで、余計な味付けなどなく、素材(太平記)の良さをシンプルに引き出すような感じです。ですが、かえってテンポ良くこの時代の出来事を学ことができたので、今回はわたし的にもこのチョイスはベストでした。 足利尊氏が室町幕府を開いたので、主人公的な立ち位置と思いきや、意外とそうではなく、足利尊氏と戦った(そして負けた)楠木正成や新田義貞がもてはやされるのかについて朧げながらわかってきました。 特に楠木正成さんについては、なぜ皇居内に立派な像があって、戦前に大忠臣として崇められていたのかよく分かってなかったですが、その一生が外観できて良かったです。 余談ですが、「足利尊氏」でGoogle検索しようとすると「足利尊氏 メンヘラ」とサジェストが出るのが今は気になってます。 ジェットコースター気分が味わえる傑作霧島嵐児 かざま鋭二starstarstarstarstar完兀この漫画、まず読んでいて非常に振り回される。先が読めない物語進行でありながら、短期的ゴールや障害が次々と現れる。そして倫理観の欠如を蛮勇と脊髄反射的情動で補填した主人公の嵐児はそれらを痛快に乗り越えていく。 その展開の体感速度も尋常ではない。読者が劇中で起こっている事態を飲み込みきる前に嵐児と物語は先へ進んでいく。あまりの超展開に思考が停止しそうになってもおかまいなしである。 しかも「ようやく飲み込めてきた。一息つけそうだな」と思ったあたりで読者を強烈に振り回してくる。つまりこの漫画で読者に心休まる時はない。恐らく作者はこの点に関してだけ注意を払っている。 そのうえで漫画から拒絶されるような置いてけぼりは喰らわないのがこの漫画の妙味である。 むしろこの漫画は、その無駄に迫力ある絵と直球165km/hどストレート頭部死球的人物描写の魅力で読者をガッチリとホールドし、落伍者を生み出さない心地よくも恐るべき魅力で満ち溢れている。(脱落する人は、この漫画に愛想を尽かして自発的に逃げ出すか、読んでて体力が持たないかのどちらかだろう) こんな漫画と出会った時、人はどうなるのか。笑うしかない。 細かいことはどうでもいいから、ただ読んで感じた面白さをストレートに笑いに変換するしかなくなる。 絶叫マシンに乗り込んでその速度とGから強制的に脳内麻薬を分泌され、展開に身を任せつつも冷静になるのを惜しむように自ずから楽しむような感覚が近い。読後感もジェットコースターと同じだ。 こんな感覚、他の漫画では到底味わえない。少しでも興味をお持ちなら是非読んで欲しい漫画だ。思ったよりシリアスな話だったふたがしら オノ・ナツメstarstarstarstarstar_borderかしこ江戸時代のヤクザものって言ったらいいのかな。慕っていた組長が死んだのをきっかけに自分達で新しい組を作ろうとする2人の話。最初はキャラの見分けが付かなくて読むのに疲れたけど、修行で大阪に行ったあたりからノリ始めた。でも1つの組で2人がトップをやるのは難しいという話なので、後半はすごくシリアスになっていく。なので読後感も疲れたかな…。大人向けの重厚なストーリーだしコマ割りもカッコよかったので読んでよかったです。「さらい屋五葉」も読むべきだろうか。無っ茶苦茶面白い超名作。故に要注意。沈黙の艦隊 かわぐちかいじstarstarstarstarstar_border完兀漫画家・かわぐちかいじの名声を高めた代表作であり、今読んでも無茶苦茶面白くて熱い名作である。 まだ読んでない人は、すぐ読んだ方がいい。このレビューを読み終わる前に読破する方がいい。海面下の武骨な”てつのくじら”とそれを取り巻く人々が織りなす、全地球スケールに広がる風呂敷のファンタスティックな面白さに痺れること間違いなしだ。 そして、だからこそ、この漫画は要注意なのだ。 この漫画はファンタスティックを通り越すぶっ飛んだファンタジー作品であり、「いやいやそれはおかしい」と逐一ツッコむぐらいの冷静さが最終的には必要な、あぶない漫画である。 これは戦闘描写に限った話ではなく、軍人描写・政治描写でも同様の話だ。 というか、素人目にもわかりやすい戦闘描写の範囲だけでこの漫画のファンタジー成分を看破した気になりかねない点が余計にあぶない。このことに関しては、交渉を優位に進めるための心理的トリックに通じるものを感じる。あるいは(いい譬えではないが)巧妙なプロパガンダと似ている。 要するに、面白さに痺れたまま、作品に感化されたまま、染まり切ったままは危険だということだ。 本作はその面白さと現実世界に即した設定故に、なぜ現実はこの作品のようになれないのかと憤って、現実から離れたところに行ってしまって戻ってこれなくなってしまう恐れがある。これは最高の読書体験でもあるが、現実に生きる私たちはいつまでもそのままではいられないだろう。デビルマンを読んで「地獄へ落ちろ人間ども!」に共感しっぱなしでいてはいられないのと大差ない。 なお、私は本作を読んでしばらくはかなり感化されていた。最高の読書体験の一つであった。こんな気持ちいい体験、味わえるなら味わった方がいいに決まっている。 故に、本作が提供してくれるかもしれない最高の読書体験に水を差すようなものは、あらかじめ見ないよう注意(※読者の冷静さを取り戻す激うまギャグ)するのがよいだろう。 こんな長文駄文レビューを読む前に、最も面白く読めるうちに面白い漫画は面白く読むべきなのだ。 明治維新の立役者猛き黄金の国 由利公正 本宮ひろ志名無しまた二宮金次郎が登場するとわ、思わなかった。兄弟の深い深い絆。さよならソルシエ 穂積Pom ゴッホには、お兄さんがいたのですね。 ゴッホ展には美術館に見に行ったことがあったけど、彼の生い立ちまでは知らず、、読んでみて驚きの連続でした。 兄•テオドロスはゴッホの影の立役者だったのか。 テオもゴッホもお互いに対する愛が深い。 特にテオドロスの心の葛藤などなど盛り沢山で時に涙しそうな所も。 今や、ゴッホと名を出せば、誰しも知ってるであろう有名な画家だけれど、この漫画を読んで、再びゴッホ展行ったら見方が変わるんだろうな。 オノさんの和風作品さらい屋五葉 オノ・ナツメstarstarstar_borderstar_borderstar_borderママ子肩ひじ張ったところがなく、つやっぽいところがいい。 人の心を揺さぶる物言いで気弱な浪人の政之助を口説き落とす。 弥一の死んだ魚のような目でドロリと見られたら背筋がヒヤッとしますね。 オノさんのヨーロッパ的な作品が多いですが、和風なものもいいですね。線の感じがとってもあっています。 悪行を生業にすることで苦しむ政之助、弥一は信用に値する人物か・・ 沙村さんありがとーーー無限の住人 沙村広明starstarstarstarstarママ子モーたまらないですよね。 作画、キャラ、設定、ストーリーどれをとってもいいんですよ。 百人切りじゃ足りないだろう、一騎当千な卍さんが敵をバッタバッタとっていくところも捨てがたいですが、シリアスなシーンもしっかり泣かせてくれる。 武器が見たこともないのがいっぱいあって、これは使っている自分か怪我しそうな奴が結構ある。 血仙蟲が寄生してるため、死なないけどしっかり痛がっている卍さんがリアルで読んでるこっちも肩がキュッと上がってしまう。 ぜひ読んでいただきたいです!!中世 女性は活躍できた数少ない職種傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン 磯見仁月starstarstarstar_borderstar_borderママ子ファッション業界の祖のような方だとは知りませんでした。 ベルサイユ宮殿で活躍し始めるようになると何を軸にしているかわからない感じがなくなり、比べ物にならないほど、凛として美しく男前に見えてくる。 成功を収めたように見えるが、自分の足がば堅牢でないことがわかっているからさらに上へ前へと進みつづける。 教科書で語られる表舞台でなく、彼らを彩るファッション、生活、駆け引きが面白い。<<1112131415>>
作者に何かが憑りついて生まれる作品、あるいは見えない力に突き動かされて生まれる作品は名作率が高いと思われる。 どの創作物がこのことに当てはまりそうかは各人が知っているものに思いを馳せてくれればいいが、永井豪作品なら、いや漫画ならこの手天童子がその代表だ。 永井先生は本作制作にあたって「鬼が赤ん坊をくわえている映像が見えて、導かれるように描いた」と巻末解説やインタビューで語っている。また鬼の首取材をきっかけに執筆中は「鬼に祟られていた」とも語り、数々の怪現象と悪夢に苦しめられた結果、おはらいを受けることで最後まで描き切れたと振り返っている。 こんな背景を基にして描かれた作品、締まらない終わり方じゃ一生祟られるんじゃないかと不安になるが、そこはご安心。まさに導かれたかのような綺麗なハッピーエンドを迎える。涙涙で描いたというあの最終回をもってお祓いは完了したといえるだろう。 本作は夫婦の前に突如として現れた、恐ろしい鬼同士の取っ組み合いの争いから始まり、鬼の口の中の赤子の存在に気付いた妻・京子の、鬼にも臆さない愛ゆえの行動から物語が動きだす。 ストーリーは第一話で鬼から語られた「15年後に迎えに来る」という約束が果たされるまでの前半、果たされてからの後半に分けて考えられる。 そう、前半の終わりこそが、物語の始まりから続いてきた、子を思う母の愛が鬼によって引き裂かれる悲劇の場面なのだ。この辺を描いてるとき、永井先生は無茶苦茶苦しめられたに違いない。もしここで読むのをやめれば、読者だって悪夢にうなされかねない。 前半はサスペンス・バイオレンスホラー漫画に分類できそうだが、後半では一気にSFスペクタクルにスケールが広がる。主人公は自身の出自の謎を追いながら宇宙と時空を駆け巡るのだが、子と妻を思って孤軍奮闘する父・竜一郎パートが都度挿入され、やがて家族愛で結ばれるべく物語はクライマックスへ収束していく。 あの父がこれまたかっこいいのだ。彼の「鬼とは…」と語って狂気じみた行動に出るシーンに私は痺れた。 本作は鬼の伝承について取り上げ、またその伝説を巧みにストーリーに組み込んでいるのも魅力の一つだが、展開的に取り上げられても不思議ではなかった、ある有名な鬼がいる。しかしその鬼は作中で触れられることはない。 その鬼について触れれば、「鬼とは…」で語られる本筋からやや外れたところに焦点が合うことになりかねないから、あえて避けられたのだろう。それがまた、本作を引き締まったものにしてくれている。