ヴィンランド・サガ

贖罪の物語

ヴィンランド・サガ 幸村誠
toyoneko
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ヴィンランド・サガは、ずーっと昔に最初のあたりを読んだきりだったんですが、機会があったので最新刊(26巻)まで一気読みしました いい作品でした…。本当に真摯な作品です 描かれているのは、主人公トルフィンの成長と、そして贖罪の姿 父の仇への仇討ちのためとはいえ、罪なき人々を殺し続けたトルフィンが、平和な国の建国を目指す物語です 本来であれば、多数を殺した人間は、死をもって償うしかありません しかし、逆にいえば、死をもって償えば、それで終わりです 本作は、トルフィンに対し、そんな安易な贖罪は許さず、もっとも困難な償いの道を選択させます これは、トルフィンにとっても困難な道ですが、作者自身にとっても本当に困難な道のはずです それなのに、作者の幸村誠先生は、その困難な道を、説得力をもって描き続けている それがひとつ結実するのが、26巻の最後に収録されている話で(191話「その日」)、いやぁもうたまらないですねコレ 敵を殺すという選択肢を排し、可能な限り敵対以外の選択肢を選び取って困難を乗り越えていくトルフィンは、本当に立派で、応援したくなります もちろん、物語は終わっておらず、贖罪も終わってはいませんし、トルフィンの贖罪は、どこかで終わりが来るという性質のものでもありません また、なんだかんだ描きましたが、結局、最終的にはトルフィンの死をもって全てを清算することになるのかもしれません しかし、だからといって、トルフィンのしてきたことが無駄というわけではありません 贖罪の本質というのは、結果ではなく、そこを目指す道筋そのものです トルフィンの生き方は、周囲の人々の生き方にも大きな影響を与えていますし、メタ的には、読者の生き方にすら、影響を与えているのかもしれません 本当に、素晴らしい作品です

昭和史 【水木しげる漫画大全集】

意外と全然知らない昭和史

昭和史 【水木しげる漫画大全集】 水木しげる
酒チャビン
酒チャビン

昭和っ子なのですが、全然昭和のことを知らなかったと痛感させられます。まぁ私が物心ついた時点で既に8割終了してたので、それもやむなしなのですが。 昭和史というタイトルからは「昭和の歴史をマンガで紹介」みたいな感じに思えるのですが、本作はそういった部分ももちろん多分にありますが、それと同時に水木先生の半生を描いた作品にもなっています。マンガ家としての成功とかは結構あっさりスルーされますが、戦争に従軍された経験が、すごく事細かく書かれているので、戦争がどういうものだったのかが真に迫って伝わってきます。 だめです。戦争。 第二次世界大戦とか言いますが、日本にとっては太平洋戦争の方がしっくりくるのですね。そして、当初日本はアジアを欧米の支配から解放するという名目(建前半分かもしれませんが)あったのは知らなかったです。 というか太平洋戦争のことはほぼ知らなかったですね。第二次世界大戦というと、ヒットラーの話だと思っていたので・・・そういう部分を知れるきっかけになったので良かったです。つうか成都に米軍基地あったんや・・ 水木先生の人柄もかなり強く出ていて、こんなにも破天荒で面白い方だとは知りませんでした。水木先生の他のマンガもぜひ読んでみたいと思います。 印象に残ったシーンは、切った腕から赤ん坊の匂いがしてくるというシーンと、最後の水木先生のメッセージ的な〆の部分です。 太平洋戦争について興味がある方は絶対に読んだ方がいいと思います。 あと私も太平洋戦争について興味が出てきたので、他にもいいマンガないか探してみたいと思います。

孔子暗黒伝

なんだかわからないけど凄そう・・・(←読後の感想です)

孔子暗黒伝 諸星大二郎
酒チャビン
酒チャビン

感想を書くのが難しいです・・たまに特に感想がない(感じたことがない)ってこともあるのですが、それとも違うタイプで感想がこれといって出てこないです。 明確な主人公もなく、はっきりとしたストーリーラインがあるわけでもないです。混沌の坩堝を見せられてる感じでしょうか??誰かの夢を正気のときに見せられてるというか・・・「どういう話だった?」って言われても答えるのがかなり難しいです。 1巻(400ページ弱)で完結なのですが、その中に、陰陽・五行・呪術・中国の歴史故事・インド神話・東南アジアの民話伝承・シャーマニズム・首狩・神獣・ブッダ・孔子・日本の伝承・古地磁気学・物理・コンピューター・SF・恐竜・宇宙の収縮などの要素が詰め込まれていて、かなり盛りだくさんで壮大な話です。 わたしにはガツンとハマる感じではなかったですが、多分こういうタイプのハマる人はズブズブにハマるのではないでしょうか??絵柄も結構特徴的だと思うのですが、そんなの微々たる話です。 これで週刊少年ジャンプ連載っていうのはビビります。同時期の掲載作品は、リングにかけろやプレイボール、すすめ!!パイレーツなどだったようで、読者受け大丈夫だったのでしょうか?? なんとなく後ろ向きな文章になってしまいましたが、ただ「面白くない」というのとはまた違った感覚なので、もう少しライトめな諸星先生の作品を探して読んでみたいと思ってます。

伊賀の影丸

子供の頃に読みたかった!!

伊賀の影丸 横山光輝
酒チャビン
酒チャビン

忍者!おん密!!特殊技能!江戸時代!!城!将軍家!!半蔵!!旧国名!!忍び文字(暗号)!わたしの子供の頃の好きな要素がいっぱいすぎて、多分小学生の頃に読んでいたら、わくわく夢中でどハマりしていたと思います。 しかもさすが横山先生だけあって無駄のないシンプルな作風で読みやすさも抜群。全15巻の超大作ですが、不思議と読み疲れなどはありません。 三重マンガランキング2位もうなずけます。 当時はかなり画期的な作品だったようなのですが、この作品が凄すぎてフォロワーが多く生まれ、多くの作品からベンチマークの扱いを受けたことによって、今見ると少し普通というか、王道すぎてもう一捻り欲しい気がしてしまいます。なので、名作であることは重々承知しつつも、今の子供たちにあえてこれを薦めるかというと、少し微妙な気もします。 あと、私の大好きな男塾に通じる要素も結構出てきて、それも見応えがありました。宮下先生に影響を与えてるのかもしれません。男塾は関係ないですが、途中、影丸の一人称が「影丸」になったのも面白かったです。 ちなみに個人的な一番のお気に入りシーンは、敵を攻撃する用に手懐けているふくろうが、敵が繰り出したネズミを捕まえるのに夢中になってしまって敵を攻撃しなくなる場面です。ふくろうの顔も可愛く描かれており、忍者という暗い宿命を負った者が主人公の作品世界で、ほんわりとした気分にさせてくれます。 あとはおまけコンテンツとして「ムササビ」という作品が収録されてます(影丸の話ではないです)。これは、天正伊賀の乱で信長に滅亡に追い込まれた忍者の生き残りが、本能寺の変の裏側で糸を引いていたという魅惑の歴史ifストーリーで、こちらも戦国時代ファンには見逃せない出来でした。

陽だまりの樹

手塚先生による幕末もの

陽だまりの樹 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

1981年〜1986年にビッグコミックで連載ということで、時代的にはキャプテン翼と同じ連載開始年ですね。感慨深いです。 内容は、鉄板のビッグコミックものですので、ハズレがありません。 よく「手塚先生の先祖(曽祖父)の手塚良庵を主人公とした物語」「手塚治虫のルーツを描いた作品」みたいに紹介されたりするのですが、あまりそこがメインのテーマではないので、ミスリードな感じがします(メインキャラとして手塚良庵はガッツリ出てきますが)。 手塚良庵も結構好感が持てる性格(女好きでだらしないが、やるときの集中力がやばい)で愛せるのですが、もう一人の主人公の伊武谷万二郎もそれとは反対(不器用で融通が効かない正義漢)ですが、かなり愛せます。 二人はいつも殴り合ってるのですが、本当は仲良くて尊敬しあってるところが良いですね。退廃の時代に咲いた一輪の友情の花ですね。現代にこれが連載されていたらBLの同人誌が多数作られていてもおかしくないです。 色々な人に目をかけられるほどの資質を持った万二郎でしたが、その性格のためにあまり出世せずに、最後は悲しい最期を遂げてしまいます。わたしも出世とかは良いので、自分に正直に生きようと思いました。