トクサツガガガ

自分のことが書いてあったマンガ 何かを愛する者たちの物語

トクサツガガガ 丹羽庭
たか
たか

2014年、本屋で立ち読みしたスピリッツに載っていたのが、トクサツガガガ9話(1巻最終話)。 当時大学生だったわたしは、仲村さんの母親への複雑な感情と、対立を避けて合鍵を渡してしまうシーンを読んで「うっそ…わたしのこと書いてあんじゃん🤭」と震え、共感120%で一瞬でファンに。母親に合鍵渡しちゃう系女子ってわたしだけじゃなかったのかよ…! まるで吉田さんとイクトゥスした仲村さんのような感動でした。 仲村さんが、周りにいる何かを愛する友人たち(特撮・女児アニメ・フィギュア・男性アイドル)とあるあるの悩みを共有して、「それってこういうことじゃない?」と、愉快に語り合うところが何より面白い!! そしてときには(っていうか大体)根本的に問題を解決せず先送りにするけれど、毎回ちゃんと悩みに向き合い「もやもやした気持ちに蹴りをつける」ところが素晴らしい!何よりその問題を整理するときの、仲村さんやみんなの思考回路と会話が最高にコメディしてて笑ってしまう。 永遠に仲村さんとみんなが楽しく趣味に没頭しているところを見ていたい。 最終回が来ないでほしいマンガNo.1。 読むたびに新たな視点や考え方を得ることができる。 悩める全ての愛する者(オタク)たちへのアンサーがある作品。 それが、トクサツガガガ。 (画像は1巻4話 仲村さんと吉田さんを結びつけたイクトゥス)

らんま1/2 〔新装版〕

人魚の変奏

らんま1/2 〔新装版〕 高橋留美子
影絵が趣味
影絵が趣味

今でこそ、もう珍しくはないのかもしれないが、高橋留美子といえば女性の漫画家としてイチ早く少年漫画の分野を開拓したひとでしょう。そんな性別の垣根を越えて活躍した漫画家が『らんま1/2』という水と湯をかぶるだけで男性女性の垣根をいとも簡単に越えてしまうマンガを描いている事実はたいへん興味深いことだと思います。 1/2という言葉のとおり、主人公の早乙女乱馬は男性とも女性ともつかない実に中途半端な存在として私たち読者の前に姿をあらわします。そして、まさしく、この中途半端な有様こそが高橋留美子という漫画家の特異な作家性だと思うのです。 あるいは地球を侵略しにやって来たはずなのに、そのまま居着いてしまった宇宙人は中途半端な存在ではなかったか(うる星やつら)。あるいはうら若い未亡人のアパート管理人と、大学浪人から就職浪人までしてしまうアパートの住人は、どちらとも中途半端な存在ではなかったか(めぞん一刻)。あるいは妖怪と人間とのあいだに生まれた半妖の少年は中途半端な存在ではなかったか(犬夜叉)。あるいはあの世でもこの世でもない境界に連れて行かれた過去をもつ少女と、人間と死神との混血の少年はどちらとも中途半端な存在ではなかったか(境界のRINNE)。 高橋留美子のマンガには、このようにして、どちらともつかない中途半端な存在がまず必ずといっていいほど見られるのです。それはあたかも女性漫画家の身でありながら少年漫画の分野に進出した作者自身のように。そして手塚治虫の『火の鳥』のように高橋留美子のライフワークであるように思われる『人魚シリーズ』、人魚とはまさしく中途半端な存在の代表格でしょう。古来よりどちらともつかない中途半端な存在としてよく知られる人魚は、高橋留美子の特異性にもっとも相応しいアイコンだったのではないでしょうか。

王様達のヴァイキング

三千年紀の新たな神話

王様達のヴァイキング さだやす 深見真
mampuku
mampuku

アメリカ合衆国が定義した、陸・海・空・宇宙空間に次ぐ「第五の戦場」ともよばれる"インターネット空間"を舞台とし繰り広げられるサイバーバトルの漫画。エンジェル投資家・坂井に才能を見出された天才ハッカー少年・是枝は、全く新しい形のサイバーセキュリティを立ち上げ様々な犯罪者たちと対峙していく。 我々の祖先が「集合的想像」による虚構の世界(宗教・国家・貨幣経済など)を獲得したことで核家族や小さな村落の枠を超え数千人、数万人を超える協力のネットワークを生み出すことに成功したことで、彼らはネアンデルタールをはじめとするほかの霊長を滅ぼし地球上の覇者となった。そして2千年紀の終わり、人は新たな世界「情報通信網」を作り上げた。何万年もの昔に生まれた「集合的想像」の虚構は、「情報通信網」によって急速に拡散し共有され、文化という文化を均した。インターネットの出現は、宗教や貨幣が世界を変えたことと等価かもしれない。 急速な変化に苦しむ旧い社会・体制はやがて淘汰され、「第五の戦場」を征服した者が新たな世界の王となる。ロマン主義の思想は人々に自由と幸福の追求を促し、そのために人々は富を蓄え、それを消費した。新しい虚構世界の誕生はそうした旧来の幻想を壊し誰も想像してこなかった価値観をも生み出しうる。 そうした新しい空間の冒険者である是枝そしてライバルの笑い猫やValkyriaと、彼らの手綱を引き、貨幣と法の支配する現実社会に繋ぎとめる役割をする坂井、サイバー空間を征服することで世界の王になろうとしている魔王のようなラスボス──。日本にはハッカーが足りないとは耳にするけど、案外いま一番必要なのは坂井さんみたいな人なんじゃないかなぁ あと一番重要なポイントですが、ヴァルちゃん可愛すぎません?めっちゃ好み。。